Strange Days

2001年09月11日(火曜日)

暗黒の日

23時42分 思考 天気:台風直撃のち台風一過 BGM:Epitaph/King Crimson

 恐ろしいことになった。
 最初の惨事はあまりの強風に会社に行けず、半日年休を取る電話を入れた直後に起きた。ふと、部屋の中を風が巻いているような気がしたので、物置と化しているフローリング部屋をのぞいてみた。すると、なんと、上の窓から雨が吹き込んでいる。ほんの30cmばかり空けていたのだが、強風で遮光カーテンが煽られ、もろに雨が吹き込んでいたらしい。網戸がかかってなかったらどうなっただろう。望遠鏡と本が水浸し。とほほほ。
 その後始末のために、結局午後にも出社できなかった。風は14:00くらいには収まっていたのだが。
 次の惨事は想像を絶するものだった。
 夜、何の気なしにyahooのテレビ欄を見ようと思い、yahooに飛んだところ、ニュース欄に「高層ビルに航空機突入」の見出しが目に入った。まさか。いやしかし、asahi.comでも同様のニュースを扱っている。ニューヨークの世界貿易センタービルに旅客機が相次いで突入したのだという。しかもペンタゴンやホワイトハウスにも未確認ながら火の手が上がっていると。ニュースをリロードしながら見てゆくうちに、さらに惨事は続く。11機の旅客機がハイジャックされ、いずれも行方不明だというのだ。さらに何機分かのテロが続く可能性があるという。
 いったい、誰がやったのか。これほどの規模のテロを実行できる勢力は、反米的なイスラム教過激派くらいしかいそうにないといわれている。特にアフガニスタンに潜伏中のサウジアラビア出身の大富豪、ラディンの一派が怪しい。ラディンはイスラム系の経験豊富な兵士を多数抱えている。資金も豊富だ。大規模な対米テロでは、常に容疑者筆頭に挙げられている。
 しかし、この規模のテロだと、死者は3桁では済むまい。4桁、いやビルの勤務者が5万名という情報からすると、万単位の可能性がある。と、ニュースが差し替えられて、ビルが崩落したと伝えられた。これで5桁かもしれない。なんてこった......。
 これほどのテロをやられては、アメリカ市民の比較的慎重な層も、全面報復に賛成するだろう。しかし、誰に報復するのか。この規模のテロでは証拠が残らないはずはないので、すぐに"敵"が明らかになるだろう。わからなくても、アメリカは適当な敵をでっち上げてしまうはずだ。でっち上げるとはいえ、その対象はほぼラディン一派だから、その範囲をどこまで絞るかという程度の違いではあるまいか。ラディンとその武装集団を直接攻撃するのか、彼らをかくまっているタリバーンを叩く可能性も高い。なんにせよ、まずはアフガニスタンから火の手が上がるんじゃないだろうか。
 問題は、それに対してイスラム教圏がどう動くかだ。公然と支持するのは不可能だが、裏では連帯するか、あるいは切り捨てにかかるか。連帯してしまえば、アメリカはあまり躊躇なく連帯者をまとめて叩くだろう。それがアメリカを中心とする西側先進諸国 v.s. イスラム圏という大戦争にならないという保証はない。そうなれば、死者はあっという間に万単位に膨れ上がる。アメリカは、なんだかんだいいながら、戦争に関しては独自のセンスを持つ強国だ。そのアメリカを本気で怒らせて、テロ集団に勝ち目はあるのか。無制限戦争に突入すれば、アメリカはゲリラ戦に勝利する唯一の手段を講じるだろう。つまり、テロ集団を支持する宗教/民族集団の殲滅だ。そこまで話がエスカレートしてしまえば、場合によっては核の使用により死者が億単位に達する可能性さえある。
 もちろん、そのずっと手前で事態が均衡する可能性のほうが高い。アメリカがテロの首謀者を捕獲できれば、それをアメリカの司法機構の中で処理することで、ガス抜きを行える可能性もある。またテロ実行グループを、イスラム社会が見捨てることで、事実上最低限の抗争にとどまる可能性もある。つまり事態の鍵を握るのはアメリカではなく、むしろイスラム社会の反応だと見てよさそうだ。それはパレスチナ住民の狂喜乱舞振りに対し、自治政府のアラファト氏が苦慮しているらしいことからもうかがえる。どこまで政治的に、穏便に処理できるだろう。せめて、もう流されてしまった血と同程度で済めばよいのだが。