Strange Days

2002年04月30日(火曜日)

今治~松山を走る

22時00分 自転車

 朝までぐっすり寝て、7:00に起床。カーテンを開けると、外には来島海峡大橋のごつい姿が待っている。いい眺め。
 レストランに行き、バイキング形式の朝食をとる。去年の夏は冷たいうどんがあって美味しかったのだが、それはない。まだ冬メニューらしく、おでんなどもある。適当に済ませ、朝のコーヒーで一服。
 9:00出立のつもりで、のんびり身支度を整えながら、今日の道行きを考えた。山越えも考えたが、やはり海岸線沿いに走ろう。正確な地図を持ってないので、海沿いに走るほうが無難だ。
 荷物を背負い、9:00過ぎにサンライズ糸山を後にした。松山に向かう前に、来島海峡大橋を逆のほうから(つまり西側から)見てみたいと思った。適当なところで南に進路を取り、これまた適当に幹線を走っていると、波方港に到着。来島海峡大橋の西というより、南西方向というべきらしく、橋のこちら側の終端と、四国側の誘導路が見えた程度だ。
 さて、いよいよ松山へ。
 さっきの幹線を走っているとき、『松山→』という標識が見えたので、その地点まで戻る。分岐分岐で標識をたどりながら走っているつもりだが、なぜだか今治市街へと近づいている気がしてならない。首をひねりつつも、やがて道は予讃線と並走しはじめる......。
 やがて、市街地の一角で、再び『松山→』の標識を目にした。現在位置が分からなかったが、漠然と今治市内で、道が真南に転じたような感じがあった。うう、これはもしかして、山越えコースに出てしまった?
 道を走ってゆくと、次第に登りになり、その予感はますます現実味を帯びてきた。こっちを走るつもりは無かったが......。しかし、ここまできたら、山越えもいいもんだ! かなりやけくそに、ゆるい登りに見える道を走っていった。しかし、そのやけくそな決意も、再び見えた標識に覆された。『北条、松山→』。山越えコースでは、海沿いの北条市内を通ることはない。つまり、実はちゃんと海沿いコースを進んでいたのだ。そういえば、今治の隣町に出るくらいまでは、内陸部を通ってるんだったっけ。ともあれ、実は海沿いコースを通っていたことが分かり、一安心だ。
 今治市から北条市へと抜ける道は、今治市内では道幅も広く、快適だった。歩道も十分広い。そのくせ、交通量はそれほどでもない。気持ちよく走れる。
 唯一の懸念は天候だ。しかし、今のところ崩れる気配はない。曇ってはいるが、晴れ間も見える。時折、やはり自転車で旅しているらしい人々と行き会うが、しまなみ海道で見かけたほど多くはない。
 広くて快適な道も、隣町に入ったところで2車線のみの狭い道になる。なんというか、地方自治体の財政規模の違いを見るような思いだ。
 この狭い道を走るのは、やはり少しばかり疲れる。が、幸いにして、さらに隣の菊間町に入ったところで、再び道幅が広がった。そして、坂道を一つひょいと越えたところで、目の前に瀬戸内海がパーっと広がった。ここまでの道行きが報われたような気分だ。
 しばし海、そして時々鉄路と並走してゆくと、コンビナートが現れた。北条市に入ったのだと思った。察するに、北条市は四国北部での工業都市的な位置付けなんじゃないだろうか。村上龍も、『ヒュウガウィルス』で四国を工業地帯のように書いていたが(あれは四国を占領した英国が工業化に失敗した名残、という設定ではあったが)。
(追記)実はまだ北条市ではなく、越智郡菊間町だった。
 コンビナートの北に、「地下石油備蓄基地」という看板が掛かっていた。なんとなく、マル暴やマフィアがヤミ石油でも備蓄しているかのごとき表記だ。
 右に海を見ながらひた走る。天気が今一つなのが残念だが、贅沢はいえない。日ざしが強いと、それはそれで体力を消耗してしまうのだ。
 市街地に入り、JRの鉄路と再会する。その高架の下を潜ったところで一休み。ミルクバーをかじりながら、水で喉を潤す。日差しは強くなく、風はさわやか。いい気分だ。
 北条市内をひた走り、やがて松山市に近づくと、再び坂が増えてくる。それと共に道も良くなるのが不思議だ。堀江港を通過する。
 道はやがて市街地に入り込み、やがてなんとなく見覚えのある道へと至った。ここは、たしか道後温泉本館の前からまっすぐに伸びているR437だ。正確には県道187号で、市街の西の方でR437につながっている。角を曲がり、187号に入る。この辺りで時刻は13:00前。そろそろ腹が減ってきた僕は、なんでもいいから食いたいと思い、目に付いたラーメン屋に飛び込んだ。そこで、日本全国どこでも食えそうな、いかにもチェーン店らしいラーメンとギョーザを食した。ううむ、松山に来てまで食うものか? まあ、腹は満たせたし、店員のお姉ちゃんたちも妙にかわいかったので、よしにしよう。
 ラーメン屋を出て、道後温泉への最後の行程を突っ走った。やがて、温泉街に到着。
 自転車を新館の方に止めて、歩いて道後温泉に入った。神の湯二階席というチケットを買うと、廊下の突き当たりの階段を上れという。登ると、大広間になっていて、接客のおばさんが浴衣を渡して、席を作ってくれる。タオルは持っていたが、石鹸は無かったので、石鹸目当てに貸しタオルも頼んだ。
 その二階席は女性客との共用だ。湯船と着替え室は一階にあり、二階席で浴衣に着替え、一階に降りて裸になり、湯を使うというシステムだ。1Fへの階段はこのグレード専用のものがあり、ロッカーも同じく専用のものがある。そこで服を脱ぎ、湯船に入った。あー、体をべとつかせていた汗を流せて、気持ちすっきりだ。しばらく湯船に漬かり、疲れを癒す。
 体を拭いて、服を着替えて二階に上がると、お茶が出てきた。茶菓子をかじりながら、涼をとる。室内は古風な造りだが、外には新しいホテルなどが林立している。時に取り残されたような建物だ。
 制限時間は1時間ほどなので、その前に温泉を出た。
 自転車の方に歩いて行く途中、果物屋で伊予柑ソフトクリームを発見。早速、試してみる。柑橘系の酸味が心地よい。
 さて、帰ろう。MR-4Fを再び走らせ、道後温泉の前の道はまっすぐ県道187号につながっていて、187号はさらに国道437号につながっている。そしてR437は地方道19号につながって、松山観光港に到る。まずは西に向けてひた走る。やがて『松山観光港』の標識を認め、それに沿って北へと走った。この辺、道を覚えていたので、気楽なものだ。
 松山観光港までは30分くらいだろうか。去年はこれだけ走るのも結構消耗した記憶があるが、今回は余裕ありありで悠々走り抜けた。荷物を減らし、自転車を替え、道も憶えているという条件はあるにせよ、それなりに脚力がついてきた気もする。
 松山観光港に着き、呉までの乗船券を買う。ほどなく、乗船が始まったので、自転車を車両デッキに置き、客室の外のベンチに陣取った。出港し、四国の地が離れてゆくと、一つの小さな旅が終わったことを実感した。思えば、走っているときにはそれなりにつらいこともあった。でも楽しかったことの方が、はるかに多く記憶に残っている。去年は挑戦というか、苦行というか、そういう意味合いが強かったしまなみ海道だが、今回はずっと楽しめる旅になった。次に走るときには、もっともっと楽しめるといいな。