Strange Days

2002年08月04日(日曜日)

麦草峠ツアー二日目

22時00分 自転車 ( 自転車旅行記 ) ,

 朝、他の人が起き出す物音で目覚めた。また目を閉じて、浅い眠りに落ちていると、今度は自分の携帯電話のアラーム音で目覚めた。ぐっすり7時間ほどは寝ただろうか。
 起きて、外を見ると、なにやら雨の形跡がある。幸いにして、我輩のMR-4Fは、屋根の下に移動しておいたので、濡れることは無かったようだ。昨夜は雷鳴も激しかったとか。
 7:00から朝食である。うまいパンにサラダ、スクランブルエッグというところ。パンもバターもうまいので、瞬く間に売り切れてしまう。特にミキ氏は、これだけ食うからあれだけ走るんだなと、納得の健啖ぶり。
 部屋に戻り、一夜を過ごしたベッドを引き払い、出立準備をする。空は雲が多いものの晴れ、早朝の雨が畑の作物に宿り、きらきらと輝いている。気持ちのいい朝だなあ。
 まずは野辺山の電波望遠鏡を見ようということで、こっつぁんに別れを告げて走り出した。いきなり坂を登るものの、既に足にキテます(滅)。こりゃあ、峠越えなんて無理無理である。
 しばし走り、電波天文台に到着。その名の通り、電波望遠鏡が集結した、日本の電波天文学の一大拠点だ。守衛所から見学者コースを進んで行くと、まず移動式の5m鏡が出迎えてくれる。これは多数の5m鏡をレールに載せ、移動できるようにしたもので、開口合成により、見かけ上数百メートルという大きな口径を実現するものだ。電波天文学は、可視光を対象とした天文学に対しては新しい分野だが、固有の歴史と輝かしい業績を持つ分野だ。宇宙が膨張しているという直接的な、確かな証拠を提示したのも、そもそもは電波天文学だ。エドゥイン・ハッブルの観測はそれ自身偉大な業績ではあるが、観測した天体が少なすぎ、どうしても疑念を拭いきれなかったのだ。AT&Tの技術者が偶然に宇宙の背景輻射を発見したことで、ようやくハッブルの観測結果に間違いが無かったことが確証されたのだ。
 5m鏡群の側を抜けて行くと、遠くにより小さなパラボラ鏡が並んでいるのが見えた。干渉計の一部らしい。そしてさらに歩いて行くと、目の前に45m鏡が偉容を現した(いや、ずっと前から見えてたんだけど)。でかい。付帯設備にそのまま住めそうだ。戦艦の主砲塔というものも、こういう威圧感満載な代物だったのか(あれは駆逐艦載せてるようなもんだからな)。
 見学者用の視聴覚室をざっと見て、再び正門に取って返す。次はJR鉄路最高地点だ。おっと、その前にトイレ。
 再びちょっとした丘を越えると、もうそこはJR鉄道最高地点。以前は鉄道最高地点だったらしい(つまりより高々度に私鉄の鉄道が通ったわけだ)。その記念碑かなんかのところで、なんの集まりか小学生くらいの少年少女集団が記念撮影をしていた。そしてその脇を通りすぎて行く、我々奇特な小径車集団に歓声を挙げるのだ。まき氏など「手もちぎれんばかりに振った」そうである(本当かよ)。
 ここでアイス。ソフトクリームを試す。うむ、ソフトクリームである。
 それぞれアイスだのなんだのをやりながら、今後の経路を話し合った。おの氏らの提案の一つは、約めて申せば峠を二つ越えようというものだった。他にあんまり高いところを行かないで、お気楽に行こうというコース、少し上りがあるかなというコースだった。峠*峠コースの志願者は、結局おの氏、ミキ氏、吉田氏だけだった。残りはお気楽コースに雪崩れ込んだ。やっぱり、体力は有限だからね。
 おの氏らとはここで別れ、一行は清里へと進路を取った。清里から美し森までは、公園の中の曲がりくねった道を登って行くのだ。入ってすぐ、こぐ氏に「先にどうぞ」と道を譲られてしまった。というわけで、俺様が引く破目に。斜度はそれほどでもないが、果てしがない。走っても走っても次のカーブが見えてくる。ペースが合わないからか、いっとく氏はさっさと前に行ってしまう。延々と走りきって、ようやく出口に着いたときにはヘロヘロになっていた。最後の数周など「まだ先があるのか!」と絶叫しながら走っていた。しかしまあ、むやみに面白いコースだ。
 後続が来るのを待ちながら、疲れを癒す。平野氏がなかなか来ない。元気な者を偵察に出そうと話が決まりかかった頃、ようやく平野氏が登ってきた。話を聞くと、手製のマッドガードの間隔が狭すぎて、泥が詰まってしまったのだとか。マッドガードならぬマッドキーパーになってしまったわけだ。
 平野氏のトラブルが解決したら、また少し上り、展望台に上った。一番上までは徒歩で登るのだが、これがなかなかつらい。
 展望台からの眺めは、周囲のなだらかな斜面に広がる森が見え、その名の通り美しい。天気がよければ、八ヶ岳はおろか、富士や北アルプスも見えるとか。
 ここでもアイス。ただし、かき氷にソフトクリームをトッピングできるという情報を得たので、それを試してみる。うみゃ~! しかし量が多すぎ。すぐ持て余す俺様である。なんとか食いきるが、この影響かその後腹の調子が悪くなる。
 美し森から八ヶ岳高原ライン、八ヶ岳公園道路とつないで走る。アップダウンがあり、アップの度に苦しむが、長さはそうでもないのでなんとか乗り切れる。沿道には人家が全くなく、木立がずっと続いている。交通量もそれほどではない。いろんな意味で楽しい道だった。
 しばらく、後続を待ったりしながら、公園道路の終端まで走る。そこから少し行くと、きょう最後の目的地、スパティオ小淵沢があった。まずは温泉で一休み。体を流し、熱い湯船に漬かったりしているうちに、いつの間にかみんな露天風呂に集結し、今回の麦草越えの反省や、トレーニングについてなど話し合った。空からは時々雷鳴が聞こえてくる。時々雨もぱらついている。しかし露天風呂に漬かったり涼んだりしながら、なんとなく長旅が終わったような気分に浸っていた。二日間、峠を越えてアイスを求めて走っていただけなのに。
 風呂から上がり、上階の中華料理レストランで遅めの昼食を取る。なぜだか飯物を食いたかったので、中華飯と、そしてこれでしょう、ビール。うますぎる!(ビールがな)
 それから小淵沢駅に移動し、臨時急行を待つ。これがまた、いつの間にか乗客が増え、果たして全員乗り込めるのだろうかと心配になってきた。しかし、車両は二階建てで、しかもここ始発なので、ほとんどがら空きという感じだった。自転車を置いた場所とは別の場所に座席を確保したとかで、いっとく氏に荷物の監視をお願いして、そっちで一眠りすることにした。しかし、窓の外の風景を見ているうちに、眠気は飛んでしまう。
 僕は新宿まで乗って行くことにしたのだが、ほとんどのメンバーは途中の駅で降り、だんだん残り少なくなって行く。結局、新宿まで行ったのは僕といっとく氏だけだった。僕はさらに湘南ライナーを捕まえ、戸塚経由で帰宅した。
 帰宅して、MR-4Fを清掃しなけりゃとも思ったのだけど、あまりに疲れすぎていてその気にもなれず、さっさと爆睡した。