Strange Days

2003年05月10日(土曜日)

第2回東京・南会津サイクルトレイン1日目

00時00分 自転車 天気:これは晴れだな

混沌の中の出発


 朝5:00過ぎに起床。どうもよく眠れず、いまいち寝足りない気分だ。しかし、もう起きなければならない。
 廊下の給湯器で湯をもらい、カップ麺の朝食を作った。店じまいをしながら、窓を開けて空を見る。いい天気になりそうだ。もっとも、遠い南会津でどうなるかは不明だが。
 洗面所を使ったりしているうちに、そろそろ6:00が近づいてきた。安宿の宿泊客も、そろそろと起き出している。
 6:00過ぎに宿を出た。MR-4F改を墨田公園へと走らせる。休日の早朝だ。東京近辺といえど、道路に車は少ない。
 墨田公園に入り、少し走ってゆくと、なにやら怪しい集団が目に入った。これが受付だろう。その周囲には、早く着いた人々が、受付の開始を待ってたたずんでいた。
 はて、もう輪行準備をしていいものだろうかと考えているうちに、後ろから声をかけられた。まき氏登場。まき氏は山アドコースに参加するはずだ。でもリカンベントでいいの? なんでも、山アドコースも、実際には100%オンロードを走ることになったそうで。なら、僕もこっちに参加しても良かったな。
 受付が始まっているようだったので、名を告げて資料をもらう。出発時間の関係からか、今回はタグ類を車中で配布することになっているそうだ。
 受付時間に入って、参加者が続々と集合してくる。にち氏、たか氏、相方のみち女史らが到来する。乗車はほとんどBD-1だ。ふと、今回はBD-1大挙参加の回になるな、と思った。しかし、今回は輪行前提という色が濃くなったし、いずれにせよ遠隔地からは折り畳みでの参加の方が有利だし、こうなるのは目に見えていたのだが。
 そんな中、その松女史を伴って現れたおのひろき氏の乗車こそ、本来のサイクルトレインの目的にかなったものだった。GREENSPEED GTXというトライクでの参加だったのだ。去年もSHIG氏が兄弟車で参加したが、おの氏のものは内装3段は無く、2*9段構成だった。地を這うようなフォルムがそそる。
 その他、Dコースにねず吉氏、Bコースにサリーナ女史とサイダー氏が参加されていた。BD-ML周辺で情報が流れたせいか、BD-ML関係の参加者が非常に多い。また山アド関係の人も多い。まあクロスオーバーしているので、きれいに切り分けられないが。
 一応、この場で輪行準備をしてから、乗車のために浅草駅へと移動した。乗車順に列を作って進むのだが、列車準備の都合で、改札を抜けたところで、しばし足止めを食らった。自転車を抱えた状態での足止めは、正直きついのだが。時間的な余裕が無くなった今回、ちょっとハラハラさせられる。でも、その分はこちらが積極的に動けばいいのだ。
 ようやくホームに上がり、列車の到着を待った。団体専用列車"あいづ"が、この酔狂な一団を江戸処払いにしてくれるのだ。去年は"たびじ"だったかなあ。
 やがて、定刻に浅草駅を出発した列車は、10分後に上井草に到着。ここで慌しく、上井草からの合流組が乗り込んできた。一人でぽつんとしていた我がボックスにも、こぐ夫妻、hai氏が合流し、賑やかになってきた。
 列車は徐々に都会の風景を離れ、次第に山が近づいてきた。山が近いこの光景は、なにかこころが和む。湿度が高いこの季節、どの山も霞をまとって、遠くにあるほどかすんで見える。そんな山が、いくつも重なって、連なって見える。
 かすんで かさなって 山がふるさと
という山頭火の句を思い出した。山頭火は海が嫌いで(その割に海の句も残してはいるが)、それは小波の動揺に耐えられないからだ、と語ったとか。その意を汲めば、揺ぎ無い山の眺めは、確かに心安らぐものだと思う。
 やがて、山の真っ只中を抜け、ちょっとした盆地に出たと思ったら、そこが会津田島だった。

観音沼へ


 列車を下り、しずしずと駅前の広場に進んで行く。これから観音沼への登りに挑むわけだ。MR-4Fを展開し、FREEPACK SPORTに詰まっている荷物を、すぐ必要なもの、それ以外のものとに分けた。すぐに必要なもの(といっても工具類と雨具だけだが)は残し、他のものは折り畳める3WAYバッグに詰めて、サポートカーに預けた。この3WAYバッグは、去年のTOKYOシティサイクリングでもらったもの。意外に便利で、活躍中だ。
 出発前に集合写真を撮った。今年の参加者数は、去年よりも心持少ないようだ。
 全員の出発準備が整ったところで、出発。30台の自転車が列を作り、田島駅前の道を飛び出していった。
 観音沼への道は、去年も通ったものだ。途中、養鱒公園に立ち寄るのまで同じだ。と、思いきや、実は細かい道順は異なっていたようだ。養鱒公園駅にも寄る経路だった。
 前回は、最後の方までは楽に登れた記憶があった。ところが、今回は、結構最初の辺りから辛い。ああ、こんなに辛いなんて。我に降臨せし自転車神は去ったか。いやこれは、多分寝不足だな。
 途中、会津鉄道養鱒公園駅でトイレ休憩。可愛らしい駅舎を持つ無人駅だ。
 養鱒公園を出ると、いよいよ本格的な登りになってくる。とはいえ、まだ足をクルクル回せば登って行ける程度だ。しかしながら、MR-4Fのディレイラーの調子がいまいちで、変速が決まらないのには参った。
 途中、小学校の分校に立ち寄った。木造の趣ある校舎が、むやみに郷愁を誘う。そういえば、僕が小学校2年生の時、こんな木造校舎が教室だったんだっけ。間もなく取り壊されてしまったけど、あれはせめて一度だけでも木造校舎で過ごさせてやりたいという、先生方の親心だったのかもしれない。立て付けが悪くて、うっかりすると廊下を踏み抜きそうなくらい痛んだ校舎だった。しかし、コンクリート打ちのそれには無い、木の温かみが生きた校舎だった。
 ここでアイスの配給があった。市販のアイスだったが、みんな大喜びだ。気温が高めで、しかも登りが続く道行に、誰もが汗びっしょりだったからだ。アイス最中を食す。いい感じにGOODナリヨ。
 分校を出ると、またもや登りが続く。なんとなく、見覚えがある道だなと思ったら、去年と同じコースに入っていた。途中で見た雪避けの柵に再会すると、去年立ち寄った学校(ここも趣があって良い)に出た。しかし、今年は通過する。
 どうやら、去年より長い距離を、一気に上ってゆくようだ。前ににち氏、こぐ氏等が見えていたので、ゆっくり、ゆっくり追い抜いた。なんか、アイスのおかげか、自転車神が再降臨したようだ。しかし心臓バクバクで、心拍数上がりすぎの気配だ。
 道沿いに、白い花をつけた果樹が立ち並んでいる。どうやら林檎の花らしい。可憐で飾り気の無い花だ。菜の花は見られなかったが、林檎の花は見られたわけか。
 ふう、ふう、息をつきながら登って行く。最初のうちはダラダラとしたのぼりだったが、最後に近づくにつれ、急激に斜度が増してゆく。道はほとんど直線なので、結構きつい。
 やがて、前方にスタッフの車と、先着していた参加者の姿が見えた。どうやら、3~4番目くらいに登りきれたらしい。成長したなあ、俺。
 観音沼の入り口に自転車を停め、汗を拭っていると、去年のツアーで知り合った平野女史が登ってきた。今回はえらくオシャレーなロードバイクでの参加だ。ロードバイクにジーンズでさくっと乗る、ってのもいいもんだな。
 次にこぐ氏、にち氏、あゆこ女史らが登ってきた。あゆこ女史はブロンプトンで観音沼を制覇だ。しかも、かなり速かった。川崎山岳地帯は、一人のクライマーを生んだようだ。
 殿はおの氏とhai氏、それと年配の女性だった。おの氏のトライクを激写する。
 全員揃い、30分ほど観音沼の散策をする。人気は無く、このツアーが占領しているようなものだ。春の、全てが萌え出す季節の観音沼は、秋のそれとは違った艶があって良かった。山桜も、葉桜になりきる寸前だったが、その艶やかな花を拝むことが出来た。

塔のへつり


 さて、次の目的地は塔のへつりだ。去年は時間の都合で省略されてしまったが、今年はきっちり立ち寄る余裕があった。途中、橋の上から阿賀野川(大川)の渓谷美を愛で、それから塔のへつりに向かった。
 塔のへつりに降りる道沿いには、駐車場と店屋が建ち並んでいる。その一つで団子を発見した吾輩は、それをたか氏が買うのを見た途端に耐えられなくなり、思わず買ってしまった。食う。まあ、団子だな。
 それを食しながら、もう一段低い場所にある土産物屋に立ち寄った。そこには人だかりが。聞いてみると、100円でやたらうまそうな蕎麦をいただけるのだとか。早速、その100円蕎麦を店の人に注文する。既に茹でてあったのか、半把程度の蕎麦を味噌汁の椀に入れ、それに出汁の効いた味噌汁をかける。これになにか青物を揚げた天ぷらを好きなだけ入れ、七味をいれて食すのだ。うまい! これだけで5杯はいけそう。晩飯いらんぞ。
 塔のへつりへと降りてみた。それはみやげ物屋群の対岸にあり、橋で渡ることが出来る。本当に塔のような侵食地形が、どっかんと立ち並んでいる。その下、水面から3mほどの場所に道が穿たれ、テラス状の場所をつないでいる。しかし、クリートが滑りそうで、そこまで行くのは正直怖い。橋の近くをうろうろする、真性へなちょこな俺様だった。

今夜の宿"会津野"


 今夜の宿に向かう。宿は湯野上温泉の旅館だった。会津野、というその旅館、古い民家の古材を再利用したらしく、歴史を感じさせる太い梁が、頭上の広い空間を支えている。
 部屋に荷物を放り込んで、風呂に入った。露天風呂は1時間交代で男女交代するようになっており、生憎この時刻には女湯になっていた。
 風呂から上がり、うだうだしていると、大広間で食事の用意が進められているのが見えた。囲炉裏では岩魚がじっくりと塩焼きにされている。うまそう。
 やがて食事の用意が整い、大広間での食事が始まった。うますぎな野菜類(これだけでどんぶり3杯イケそう)に舌鼓を打つ。岩魚も頭からバリバリ遣ってしまう。汁物は具沢山で、今日一日の労働量を補って、さらにおつりが福沢さんで到来しそうな勢いだ。
 ここで自己紹介。「自転車9台持ってます」。受けた、けど去年もこのネタだったな。
 飯の後は宴会だ。それが、なんと吾輩の部屋で実行されることにあいなった。寝れんやんけ。しかし大量の酒、おつまみに、ついご機嫌で参加してしまう吾輩であった。意地汚いこの身が嘆かわしい。
 ちょっと外に出て、星を見た。ワイドビノを空に向け、その星座を確認する。おや、大熊座でした。北に向かって開けているようだ。この位置からは、南の星座たちは見え無さそうだ。月なんかを眺めていたら、浴衣姿のおじさんたちに声をかけられた。他の旅館に宿泊している模様。「その旅館、テレビで放映されたよなあ」と教えてくれた。
 部屋に戻り、また宴会に参加していたが、さすがに22:00にはお開きとなった。布団を敷いて、目を閉じると、ほどなく眠気が襲ってきた。