Strange Days

2004年11月14日(日曜日)

NHKスペシャル『地球大進化』第6夜「ヒト 果てしなき冒険者」

23時07分 テレビ 天気:悪化中

 あれ、と思い出すに、第5夜を見逃してしまったこの番組。くそっ、年末年始にアンコール放送するだろうから、ちゃんと見るぞ。
 さて、今夜は第6夜「ヒト 果てしなき冒険者」。年末放送の最終話は総集編らしいので、本編最後の回だ。
 どうやら前回で猿が無事に登場したらしいが、我々人類はその猿の眷属。つまりやっと我々人類に直接つながるご先祖様が登場したって訳だ。山崎努もご満悦なことだろう。
 我々と極めて近い親族関係にある猿の種が、アフリカに生息するチンパンジーだ。人類とチンパンジーは、400万年以上前に、共通の祖先から分かれたとされている。その祖先の種は、当時アフリカ全土を覆っていた熱帯雨林に生息していたらしい。そして彼らから分かれたヒト科最初の種が、アウストラロピテクスだった。
 アウストラロピテクスと猿とを分かったものは、直立歩行する能力だった。どうして直立歩行を始めたのかは分かってない。だが直立歩行は、やがて新しい能力の獲得につながる。歩行の補助から解放された両手は、道具を操作することを可能にしたのだ。アウストラロピテクス後期、彼らが道具の使用を始めた事が、化石の調査で明らかになっている。しかし、彼らの生活ぶりは、恐らくはチンパンジーのそれと大差無かったろうといわれている。実際、彼らの脳の容量は、現在のチンパンジーと大差ない。またチンパンジーにも道具を使用する場合があるということが、報告されてもいる。ただ、アウストラロピテクスは、チンパンジーに比して平地の生活に適応しつつあったと考えられている。直立歩行は、その結果なのだろうか*1
 彼らが平地の生活に適応しつつあった背景には、全地球的な気象変動があった。当時、アフリカ東北部は、二つの理由から乾燥化が進みつつあった。まず大地溝帯の形成。アフリカ大陸を南西から北東に向けて、地溝帯という一種のギャップが生じつつある。これは地球内部から上昇するプルームがアフリカ大陸の乗っているプレートに衝突し、その圧力で大陸が分割されつつあることを示している*2。この地溝帯は動植物相の断絶をもたらすため、主に植物の生息域を分割する結果になった。その結果、北部の比較的乾燥した地域では、乾燥した地域に適した植物が優勢になっていった。
 もう一つ、ヒマラヤ山脈の形成も影響している。インド亜大陸がユーラシア大陸に命中した結果生まれたヒマラヤ山脈は、地球史上最大の山脈だといわれている*3。このヒマラヤ山脈を季節風が越える時、大気は水分をヒマラヤ山脈に落としてゆく*4。そうして乾燥した風は、アフガニスタンからはるかサハラ砂漠に掛けての、広大な地域に吹き付ける。これらの地域の乾燥化が現在進行形なのは、このヒマラヤから吹き降ろす乾燥した季節風が継続しているからに他ならない。
 この乾燥化の結果、樹上生活に適した猿にとって快適な熱帯雨林は消え、開けたサバンナが広がってゆく。人類の祖先が樹上から平地へと進出していった背景には、そうした事情が横たわっているのだ。
 猿は樹上生活に適応した動物なので、熱帯雨林の生活は生存に関わってくる。直接的には、餌が手に入らなくなる。熱帯雨林では豊富な果実も、サバンナでは希少になる。猿から分かれた人類は、まずは果実以外の餌を求めなければならなかったろう。だがこの生存の危機が、その後のヒト科に進化の圧力として働き、急速な進化をもたらしたのだ。
 ヒト科の祖先が人類へとつながる道筋は、過去においてはだいたい一直線に、様々な種を経て漸進的に進化してきたと思われてきた。が、今までに積み上がってきた知識を総括すると、むしろ多種多様な種が同時代に共存し、それら多くの絶滅を経て、結果的に人類が生き残ってきたのだということが明らかになってきたのだ。
 だいたい200万年前。人類揺籃の地であるアフリカにおいて、少なくとも2種類のヒト科の種が共存していたことが分かっている。一つはホモ・エルガステルと呼ばれるすらりとした長身の種、もう一つはパラントロプス・ロブトスと呼ばれるずんぐりした種。見かけ上、あまりに違いすぎる二つの種は、長い間共存してきたと考えられている。
 二つの種を分けたのは、主たる食物だった。ホモ・エルガステルは、恐らくは他の肉食獣の食べ残した肉を漁っていたと考えられている。餌場を渡り歩いて餌を探す必要から、移動に適した体型を獲得したものと思われる。パラントロプス・ロブトスは、植物の根を漁っていたと考えられている。硬い植物の根を噛み砕くために、顎の筋肉が非常に発達していたのだ。これらの食性は、今でもアフリカに暮らす狩猟民族に見られるものだ。食性の違いが二つの種を作り出し、しかも長い間共存していたのだ。しかし、必要に応じてどちらの食物も漁れたらよかったじゃないかと思うのだが、なにか大人の事情があったのだろう*5
 この2種はそれぞれ繁栄したが、次の時代に生き残ったのはホモ・エルガステルの方だった。パラントロプス・ロブトスが滅んだ理由はよく分からない。しかし、ホモ・エルガステル以降の種は、肉食という食性を受け継いだため、脳を大型化させやすかったらしい。それがヒト科の種に新たなる進化の道を指し示したのだろう。
 ヒト科の種は、過去20種も誕生して、人類を残して全て絶滅してきたことが分かっている。それだけ苛酷な環境で生きてきたって事なのだろう。そしていつの時代にも、複数の種が共存してきたらしいのだ。
 人類も、つい最近まで隣人を持っていた。ネアンデルタール人だ。過去においては人類の直接の祖先ではないかと考えられたこともあったが、今は絶滅したホモ・サピエンスの亜種だったという説が優勢っぽい。
 ネアンデルタール人は、氷河期の欧州に勢力を広げ、現存人類=クロマニヨン人と共存していた種だ。寒冷地に適した丈夫な体躯を持っていた彼らは、欧州各地に遺跡を残している。
 ネアンデルタール人は、現存人類に比して、さほど大きな差異がある種ではない。脳の容量はほぼ同じだし、道具も立派に使いこなしていた。事実、ネアンデルタール人は、現存人類と同じホモ・サピエンスの一亜種とされている*6。番組中、山崎努がネアンデルタール人に扮して(いや顔だけな)市中を練り歩いたのだが、'80年代の北野武を思わせる点を除いて、さほど異様には映らなかった。
 にもかかわらず、生き延びたのは我々現存人類だった。我々とネアンデルタール人を分けたのはなんなのだろう。
 ネアンデルタール人の頭骨を詳しく調べると、一つの大きな違いが明らかになってくる。現存人類と、ネアンデルタール人とでは、気道の構造が違い、彼らの方が喉仏の位置が高いのだ。喉仏が高いということは発声器官の長さが短く、現存人類ほど柔軟に発声できなかったことが推測できる。そのことから、ネアンデルタール人は言語を用いることは出来たが、現存人類のような高度なコミュニケーションを持ち得なかったと考えられている。コミュニケーションの発達は、我々現存人類に生物学的装置に拠らない進化をもたらした。この強力なツールは環境の激変期には威力を発揮するはずで、氷河期の終わりとともに訪れた激変期に、現存人類のみを生き残らせる結果につながったのだろう。
 例えてみれば、インターネットに接続可能なハードのみが価値を持ち、そうでないハードは価値を失って駆逐されていった、って感じなのだろう。
 かなり面白かったこのシリーズも、今回で事実上最後。山崎努ともこれでお別れだ。最初はどうなることかと思っていたが、意外にいい仕事したね。

久しぶりにスーツ作りました

17時10分 暮らし 天気:曇り空は寒い

 来週の月、火は、品川で他の会社の人との仕事がある。いつも団塊世代には眉を思い切り顰められるような、だらけきった服装*1で出社する我輩も、今度ばかりはスーツじゃなければまずかろう。というわけで久しぶりにスーツを出してみると、あれ、後ろポケットが破けてる(T-T)。なにか引っ掛けたんだろう。急遽スーツを作ることになったが、オーダーメイドでは特急便も間に合わないので、吊るしのものからサイズが合うものを買い、裾上げだけしてもらった。これなら1時間コースだ。が、発注が金曜日の21:00過ぎだったので、受け取りは翌日以降になってしまった。昨日は三浦半島サイクリングだったので、受け取りは今日になった。
 今日は時折日が差したりもしたが、寒い曇り空が続いたので、それ以外の用事では外出しなかった。