Strange Days

SFセミナー

2000年05月03日(水曜日) 21時30分 SF 天気:くもり時々雨

 前日あまり眠れなかったが、9:30には家を出た。今日は御茶ノ水でSFセミナーがある。それに参加しようということになっていた。
 出掛けにふとPHSを見ると、参加者の一人、みつまめ嬢から掛けてきた痕跡があった。掛け直すが、この時は通じない。JR戸塚駅で待っているときにようやく捕まった。なんでも、飼っているウサギが病気で集合時間に間に合わないとか。焦っていた(なにせ電車が進入中)ので、了解とのみ返答し、電車で御茶ノ水に向かった。
 御茶ノ水駅前の丸善近辺で、他の参加者と落ち合った。一人はわざわざ北海道からやってきた(SFセミナーが目的というわけではないだろうが)笑夢君、もう一人はいつでもいつもやってくるミツルんだ。三人揃ったところで適当に飯を食いに店を探し始めた。
 入ったのはパスタ屋。ここで適当なパスタを頼んだところで、ある重大な事実を思い出した。今朝、出掛けにパスタを食ってきたんだ。飽き飽きしながらも全部平らげる(笑)。
 12:00になったので受付が始まっているはずだ。セミナー会場に向かった。セミナー会場にはまだ人影まばらで、受付が始まったばかりという感じだった。ここでみつまめ嬢から再びTEL。セミナー開始時間(13:00)までに間に合いそうにないので、行けたら行くけど途中入場するので先にどうぞとのこと。ウサギ君、お大事に。
 会場は500席くらいのホールで、上の方に席を確保して即売会場の方を回った。古書としてサンリオ文庫を久しぶりに見かけた。ステンレス・スチール・ラットは全部揃っていた。ふと横を見ると、白髪頭の丸っこい爺さんが......ああ、野田大元帥閣下だ。なんとも人なつっこい感じの人だ。その場でサイン本が売り出されるが、大元帥の本は既に持っていたのでその場を辞す。
 13:00になって、ついにセミナーの始まりだ。女性二人組の進行で開始が宣言され、まずは角川春樹 v.s. 大森望のデスマッチだ(違う)。
 角川春樹氏は全身から幻魔的オーラを発しつつ、SFの時代の再来を宣言していた。対する大森望氏は過去の角川商売への批判を滲ませつつ応酬する。なかなか見ごたえのある一戦だった(プロレスじゃない)。
 角川氏いわく、「小松左京賞は俺が無理やり認めさせた」とか。小松左京もやはり生きているうちに自分の名前を架した賞など作りたくは無かったのだろう。
 10分の休憩のうちにトイレと飲み物をどうにかして、次は「ブックハンターの冒険」と題して牧眞司がSF古書を巡る冒険を語る語る。古書狙いの人々にはたまらない話題だったろう。
 続いては本日もっとも楽しみにしていた巽孝之/牧眞司の「日本SF論争史」。名前しか知らない「山野/荒巻/柴野論争」、「ニューウェーブ論争」、そして「SFクズ論争」を視界に収め、それらの主要なテキストをまとめた巽&牧の同名本を題材に、日本SF界の暗黒面(笑)を語った1時間だった。聞き手の森太郎氏のボソッという突っ込みが良かった。「論争は所詮数種類のパターンしかない」という指摘は、概ね多くの人の意識にあっただろうが、非常に胸に落ちるものがある。
 ここで30分の休憩を挟み、次は新人作家3人(藤崎真吾/三雲岳斗/森青花)による「新世紀のSFに向けて」。実は誰も意識的にSFを書いているわけではなく、結果的にそうなってしまっただけというのが実に興味深い。
 最後はあんまり期待してなかった「妖しのセンス・オブ・ワンダーへようこそ」。アニメ監督の井上博明氏が同じくアニメや特撮作品の脚本を手がけている小中千昭氏に聞くという形で進行していった。
 実はこのセッションが一番面白かった。小中氏はコアなSFへの興味より、演出家として視聴者に何を伝えるかを重視している人だ。SFという手段も恐怖やセンス・オブ・ワンダーというモノを効率的に伝えるための道具に過ぎないと考えているようだ。彼はそのためにはSF的な約束事(概ね科学知識に等しい)をもあえて無視するという。演出を手がけた作品のSF考証が足りないと非難されたこともある。小中氏はその事に触れて「なんらかの理屈をつけなければならなかった」という反省の弁を述べてはいる。しかしそれはSF的な約束事を守れなかったためではなく、理屈がつかないという状況を嫌う一部の視聴者が入り込めなかったかもしれないという点に立脚しての反省だと受け取った。本来、物語というモノはそうあるべきではないだろうか。つまり伝えるべきモノがあって、それに見合った手段が選択されるべきなのだ。その意味では市場に氾濫する"SF"とは手段に過ぎず、目的として選び取られた"SF"がどれくらい存在するのだろうか。いささか心もとない限りではある。
 この後、久遠さん周辺の人々が渋谷で集合するということになっていたのだが、あまりに精神的疲労が濃かったのでまっすぐ帰宅した。角川春樹氏の毒電波に当てられたらしい。


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