Strange Days

NHKスペシャル

2000年05月06日(土曜日) 22時47分 テレビ

 帰宅して、夕食を作ったらNHKスペシャルが始まった。今夜はツキノワグマの生態を追うという内容。
 舞台は広島県の山中、中国山地。なんでも中国山地には数多くのツキノワグマが生息しているとか。しかしその数も年々減少しつつある。
 取材班は冬眠中の親子を発見、その近くの窪地を見下ろす場所に観測小屋を設置した。その親子が冬眠から目覚めると、まっすぐここにやってくるだろうという目論見だった。しかし春がきてもその親子は姿を見せず、また他の熊たちもほとんど姿を見せなかった。動物を自然の状況で観察しようとすると、時々こういうことが起きるようだ。
 取材班はリモートカメラをあちこちに設置して、ツキノワグマの動静を探った。その結果、ツキノワグマが非常に広い範囲を移動していることがわかった。
 このことはツキノワグマの減少傾向と関係がある。ツキノワグマ同士が交尾できる期間は限られているのだが、この間に異性に出会える可能性は元々高くは無い。しかも森の奥深くに入り込んだ林道などにより、森は次第に分断されつつある。林道は動物の移動を妨げるので、その内外にいる個体同士が交流できる可能性も低くなってしまうのだ。
 中国山地といえば、それが瀬戸内に流れ落ちる辺りが僕の故郷なので、多少なりとも親しみのある地勢ではある。故郷の呉市の山間には「熊野」とか「焼山」とかいう地名が散見される。熊野はいうまでも無いだろう。焼山も熊が出没するたびに山焼きをして追い払ったという故事に基づいているらしい。かつては僕が住んでいたような、海が見える傾斜地にまで熊が日常的に出没したものだという。しかし人間社会の拡大は、共存していた多くの生き物たちを追い払ってしまった。人間にとって快適な環境と、他の生き物たちにとって危険な環境とは、それぞれ等号で結んでしまってもいいだろう。
 人間は少し、というか、かなりやりすぎてしまった。人とその愛玩動物だけがぽつんと存在する世界というものは味気ないものだ。
 僕たちはもう少し後退する勇気を持っていいのではないだろうか。例えば山間地を縦横に走る林道や道路網を統合し、森を分断する部分を少なくするとか、今あるインフラを放棄してでも森を守る処置を講じなければならないのではないだろうか。山で暮らす人たちには悪いけど、しかし山を見たことも無い役人たちが計画した林道が、地域経済に本当に貢献できているとも思えないのだ。


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