Strange Days

NHKスペシャル

2004年02月08日(日曜日) 23時09分 テレビ

 昼ごろ、まあ近所を走るくらいならと思い、TCR-2で湘南台に出てきた。近所の吉野家で済ませようと思っていたのだが、これがびっくりするような混雑振りだったので、諦めたのだ。多分、吉牛最期の日を前にした駆け込み需要だろう。
 湘南台で湘南家のラーメン(びっくりするほど美味くは無いが、なぜか通ってしまう店)を食ったら、外の冷気で更に喉がつらくなっていた。さっさと帰宅して、また布団に横になっていた。
 21:00からのNHKスペシャルを見た。今夜のNHKスペシャルは見ていて面白い自然科学もの。「探検 溶かされた大地 ~謎の洞窟に原始の命を追う~」
 メキシコの中部を流れる川の支流の一つ、この源流にある洞窟が、世界中の生物学者たちの注目を集めている。この洞窟から流れ出ている細い川は、なぜか白く濁っている。実は、この川には大量の石灰が含まれている。この一帯は、かつては浅い海の底で、大量の貝(牡蠣の仲間)の死骸が降り積もり、それがやがて岩となった地層で出来ているのだ。その豊富な石灰は、川のあちこちに、鍾乳洞に見られる棚田のような地形を作り出している。
 川の源流は、全長500mほどの洞窟に繋がっている。内部は有毒の亜硫酸ガスに満たされており、マスク無しで足を踏み入れるのは危険だ。マスクは有毒物質を吸着するようになってはいるが、フィルタは2時間程度しかもたない。
 洞窟は内部で細かく枝分かれしており、そこここに異様な地形を形作っている。入り口付近にあるのは、まるでなにかに溶かされたような、鋭いナイフのように尖った部分を持つ岩肌だ。また表面がペースト状のものに覆われた岩肌も、更に奥へと行くと見えてくる。岩を溶かしたものの正体は、小さなバクテリアたちだった。この洞窟には亜硫酸ガスを取り込んで、硫酸を排出するバクテリアが生息している。彼らが作り出す強い硫酸が、岩肌を溶かしていたのだ。そのバクテリアが糸状に連なって出来る、異様なものも見つかっている。
 これらのバクテリアはどこからやってきたのだろう。亜硫酸ガスを代謝して硫酸を排出するようなバクテリアは、地表には見当たらない。このバクテリアには、おそらく酸素は活性が高すぎて、有毒なのではないかと思われる。
 実は、このバクテリアは、地中奥深くの岩盤に潜み、地下から噴出する亜硫酸ガスと共に現れたものなのだ。洞窟を満たす亜硫酸ガスは、洞窟内に多数存在する穴から、多くは水と共に噴出している。地殻の奥深くには、マグマから湧き上がってくるガスを代謝して生きる微生物が、多数生息していることが分かってきた。これらの生物の総質量を推定すると、地表に住む生物全体の数倍というとてつもない値が示されている。彼らは、まだ酸素濃度が高くない原始地球に生まれ、葉緑素を獲得した藻類によって酸素濃度が急上昇すると主に、地球の奥底に封じ込められていた微生物たちなのだ。そもそも、生命が誕生したのは、比較的環境の安定した近くの奥底だという説もある。
 洞窟内には、このバクテリアを基底にした生態系が築かれている。洞窟内を流れる川には、洞窟外の下流にも見られる小魚が住んでいる。しかし、洞窟内のそれは、酸素濃度が低い洞窟内の水質に適応した、ヘモグロビンを多量に持つ種類だ。またその小魚を食すウナギの仲間までいる。生息数はごく少ないようだが、これも洞窟内の環境に適応したものだ。蚊やこうもりも生息している。
 洞窟の最深部は、亜硫酸ガスの濃度が特に高く、研究者たちも数えるほどしか足を踏み入れてなかった。ここに入るには、マスクでは能力が不足しており、外部からボンベで空気を供給する型のマスクが使われる。
 そこは濃い亜硫酸ガスが岩の表面に硫黄を析出させ、花畑のように広がった空間だった。美しくはあるが、さりとてマスクを外せば人間は長くは生きていられない。人間にとって苛酷な環境ではあるが、そこに住む生き物たちにとっては、まさに楽園なのだろう。


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