Strange Days

ヴィノクロフがドーピング疑惑でTDFを去る

2007年07月25日(水曜日) 12時25分 自転車 天気:予想通り晴れ

 第13ステージで見事に復活し、しかし第14ステージでは総合優勝を望めないほどに沈む地獄を味わい、それでも第15ステージで素晴らしいアタックを決めた、今年のヴィノクロフ。第5ステージでの負傷を鑑みると、総合に絡めないとはいえ、ここぞという場面でステージ優勝を狙える実力はピカ一だ。これで落車さえなければ、今ごろは総合でも争えていたのに。そんな風に惜しんでいたのだが。
 休養日の今日、ヴィノクロフがドーピングの疑いを指摘され、アスタナごとツールを去ることになったという、衝撃のニュースが駆け巡った(らしい)。どうやら他人の血液をレース前に導入する、血液ドーピングをやらかしたらしい。ハミルトンがこれで出場停止を食らった奴だ。ハミルトンの起こした裁判の経緯を見るに、誤判定の可能性はかなり低い。
 ヴィノクロフは、恐らくは2年間の出場停止を食らうだろうから、これで引退ということになるだろう。また一人、古顔がツールを去ってゆく。とばっちりを食らったアスタナが、このまま解散してしまわないか心配だ。クレーデンはどうするんだろう。
 それにしても、人間の限界に挑んでいるアスリートたちにとって、ドーピングの誘惑は絶ち難いものがあるようだ。凡人には窺い知れない世界ではあるが、3大ツールのあまりもの過酷さを思うとき、あるいはそうした人間的な弱さをさらけ出すような行為も、止むを得ないのかなと思う。そもそも、これほどキャンペーンを打っても、いっかな減らないという事実は、ドーピングを促す強力なプロモーター要素が存在するということだ。その一つが、トップアスリートたちでさえしばしば弱音を吐く、サイクルスポーツの過酷さではないか。毎日4~8時間、全力でペダルをこぎ続け、それがシーズン中、毎日のように続く。しかも来年の契約の確約があるわけではない*1。これでは、コツコツ実績を積んでゆくより、体がもつ間に出来るだけ注目を集めなければ、そもそもサイクリストとして生きて行けない。いちかばちか、薬物やドーピング行為に手を染めてしまうのも、僕には止むを得ないのではないかと思える。
 UCIが、徒に反ドーピング・ドラッグキャンペーンを打ち続けても、ドーピングやドラッグが更に精緻化して、検出が困難になってゆくばかりではないだろうか。それはかえって不公平になってしまう。なぜならば、こうした不正を隠し果せたものの方が、結局レースでは有利になってしまうからだ。こうした不正を働かない選手でも、十分に太刀打ちできるように、レースを"楽"にするべきではないかな。そう、*2フランス人選手たちが活躍できるくらいに。
 もちろん、僕ら観客は、もっと過酷で過激なレースを望むのだけど、今はそんな要望に応えている場合ではないと思うのだ。改革すべきタイミングは、今しかないのでは。たとえレースが短く、楽になったとしても、集団競技である以上、盛り上げ方はいくらでもあると思うのだ。
 それにしてもヴィノクロフ、痛いよ。第15ステージに感動した俺の気持ち、どうしてくれるのだといいたいくらいだ。


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