Strange Days

国宝探訪

2001年04月21日(土曜日) 23時50分 テレビ

 時間が22:00に移動した国宝探訪を見た。今夜の題材は「白描絵料紙理趣経」。平安時代末期に流行した、きらびやかに装飾された仏教経巻だ。厳島神社に平家が奉納した経巻と同類のものだ。
 この経巻の特徴は、経巻の下地に製作途中の絵巻物を使用していることだ。絵巻物の下絵と見られる線画が、そのまま残されている。この経巻の但し書きによれば、後白河法皇が製作を進めていた絵巻物が、法皇逝去により未完成となり、法皇を弔うべく未完成の下絵にそのまま経文を書き込んだという。だから下絵がそのまま残されているのだ。その線画の内容は、一見して源氏物語のような、絢爛豪華な王朝絵巻に見える。実際、そのような意見が多い。
 これに異を唱える向きもある。というのは、この下絵には、ふわふわした毛玉のような、異様なものも書き込まれているからだ。これは物の怪ではないかともいわれる。当時、平治の乱を始めとする戦乱が諸国に巻き起こり、公家政権は危機に瀕し、市中は度々戦火に巻き込まれていた。人心は動揺し、物の怪のような超自然的な存在が広く信じられるようになった。そうした流れの中にこの経巻もあるというのだ。しかし別の意見では、この正体不明の物体は、隠れ蓑を纏って隠身の術を使っている貴族の姿ではないかとする。
 この当時、宮中のあちこちを、隠身の術を使って密かに見回るという筋書きが流行した。恐らく、スキャンダラスな絵物語に使われたのだろう。後白河法皇は絵巻物の収集、製作に熱心で、こうした流行の素材にも熱心だったのだろう。
 絢爛豪華な平安絵巻にミスマッチな題材の気もするが、怨霊の類が頻出することを思えば、そうでもなかったのだろうか。


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