Strange Days

今年も出席、SFセミナー

2002年05月03日(金曜日) 22時00分 SF 天気:くもり?

 今年もSFセミナーに出ることにした。今年は13:00からなので、少し遅め、11:00過ぎに家を出た。
 御茶ノ水まで出て、全電通労働会館に向かう。開講15分前くらいだったが、既に50%くらいの入り。
 受付を済ませ、少し上の方に席を取る。ほどなく、開講(だよな、セミナーなんだから)。
 今年は男性二人組みが進行役だ。1コマ目は、「かめ、くらげ、たぬき、北野勇作」と題し、最近なんとなく名が知られてきた、また日本SF大賞受賞者でもある作家、北野勇作へのインタビュー。内容的に、このタイトルはまったく違和感無かった。つまり、北野勇作とは、かめ、くらげ、たぬきと併記してもなんら違和感の無い人だった。
 北野氏が生まれた町には本屋が無く、隣町の小さな本屋が数少ない書源(っつうのか)だったという。この点、歩いて繁華街に出ればいくつも本屋があった僕の方が、恵まれていたようだ。
 働きたくなくて大学へ、楽そうな仕事へ、そして作家へと志向していったそうだ。やはり、ゲージュツカにとっては怠惰こそが原動力たりうるのだな。
 北野氏の作品、前になんか買ったまま積読になっていたような気がする。
 2コマ目は「SF入門というジャンル」。日本SF作家クラブが編纂した「SF入門」出版の動機を、その中心となった川又千秋、巽孝之、牧眞司、小谷真理らが語るというもの。
 前半、というか大半は巽氏の語り、続いて牧氏による日本で出版されたSF入門書の紹介、小谷真理女史による編集裏話に費やされた。川又氏はあまり発言しなかったな。というか、そんな時間的余裕が無い駆け足の企画だった。
 このSF入門、作家による作家視点でのSF紹介というものだという。いわゆるSF入門(SFガイドでもいいが)が、読者の視点から書かれているのに対し、この本はSF作家が自分たち(あるいは同僚たち)の仕事を概説するというスタイルになっているらしい。小松左京の「SFセミナー」でSF理解を深めた僕とすれば、なかなか興味深い本になっている模様。
 3コマ目は「立ち上がれSF新レーベル」と題し、SFを視程に置いた各社レーベルの担当者に話を聞くというもの。
 角川春樹事務所、徳間、早川といった、おなじみの顔ぶれに混じって、祥伝社が混じっているのが目新しい。祥伝社はSFプロパーでこそ無いが、半村良、平井和正といったSF畑の作家の新刊を数多く出版している。特にSFにこだわってないが(積極的に取り込んでいるわけでも排除しているわけでもない)、中篇を書ける人材を集めたらSF畑からの人材が多かったとのこと。
 最後のコマは「小説の可能性を求めて。奥泉光インタビュー」と題し、SF的アイデアをいわゆる主流文学に積極的に取り込んでいる作家に、SF界からのインタビューを試みるという企画。例年、最後の企画は面白いが、今年も興味深く見た。
 奥泉氏は「近代文学における自然主義」への違和感を表明していた。文学における自然主義というのが不勉強でなんだか分からなかったが、ようするに出来るだけかなに開いた、すらすら読みやすい文体を持つ小説群のことを指しているのだろう。例えば「五月に入り、空気はますます温み、空の青さも深まってきた。恵子は~」などという文章の"不自然さ"に耐えられないのだという。情景の説明があって、その後に登場人物の説明が入るというのはごくありふれた手法だ。察するに、自然主義(文学)というものは、そのような導入部を設けることで、登場人物が"居ること"への不自然さを和らげる、という特徴があるのではないだろうか。しかし、どんな導入部を設けても、どんなに工夫しても、その"恵子"が作中に置かれるという"作為"は消せない。奥泉氏が表明した不自然感とは、そのようなものを差すのではないかと思った。それくらいなら、いきなり「恵子は~」と始めたほうが、まだ我慢できると奥泉氏はいう。そのジャズへの耽溺振りも含めて、興味深い作家だった。
 閉会後、秋葉に寄ろうかとも思ったが、特に用事も無いので直帰した。


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