Strange Days

NHKスペシャル「巨大穴の謎に挑む」

2002年07月28日(日曜日) 23時00分 テレビ 天気:晴れ(やはり雲量大)

 今夜のNHKスペシャルは、「巨大穴の謎に挑む」。南米はギアナ高地に点在する巨大な穴の話題。
 なつかしいなあ。たぶん、僕と同年代の方は、NTVの木曜スペシャルでの放映を覚えてらっしゃることだろう。サンデーだったかマガジンだったか、少年誌でも盛んに特集されたものだ。今回は、あの巨大穴に再び調査に訪れた研究者たちに同行する。
 この巨大穴は、ギアナ高地の上面に点在する、直径50mから300mに達するものだ。ギアナ高地のサリサリニャーマという台地に存在するこの穴は、40年近く前に航空機によって偶然発見された。今回の番組に登場するブリュワー氏も、発見直後の巨大穴に降り、調査を行ったという。ところが、その時には数日の時間しかなく、十分な調査を実施できなかった。そこで今回は、ベネズエラ政府の特別な許可の元、数人の科学者チームと共に3週間の調査を行うことになったのだ。
 このギアナ高地自身、人跡未踏の地であり、ヘリコプターによる移動がもっとも確実だ。一行はサリサリニャーマの台地上にヘリコプターで機材を運びあげた。
 調査の主目標としたのが、巨大穴の中でも最大のもの、直径、深さ共に300mを超える穴だった。穴の周囲は切り立った断崖になっており、探検家であるブリュワー氏はともかく、他の研究者たちには自力での降下は難しい。そこで、ヘリコプターでの着陸が試みられた。しかし、ヘリコプターでも、鬱蒼とした木立をかいくぐってのランディングは難しい。結局、ヘリコプターを地面すれすれにホバリングさせ、そこからおのおの飛び降りる形になった。
 穴の内部には、台地上とはまた違った生物相が見られる。ここはギアナ高地の断崖によって下界から隔絶し、さらにそのギアナ高地とも穴の断崖によって隔絶している。二重の孤立地なのだ。それ故に、今まで知られてなかった新種の生物が、相次いで発見された。
 穴には不思議な場所がいくつもある。その一つが、ある断崖に沿って存在する「種の山」だ。植物の種が、何メートルにもわたって降り積もり、山をなしているのだ。この映像を見て、これは確か昔の放映でも見たぞと思い出した。その時には、確か成因は謎とされたんだっけ。
 しかし今回、その謎が解き明かされた。この場所の断崖に、大量のヨタカの一種が生息している。彼らは夜になると巣穴を出て、ギアナ高地へ、さらに下界へと去り、食料を調達してくる。この食料として最も多いのが、木の実の類なのだ。ヨタカは巣穴に帰ると、消化できない種だけを巣穴の外に出す......つまり、その種が巣穴の下に積みあがっていたのだ。
 これにより、巨大穴内部の不思議な植物分布の謎も解明できる。ここには、ここ固有の植物がある反面、下界にあるありふれた植物も存在しているのだ。後者はヨタカなどによって、下界から持ち込まれたものだったのだ。
 ところで、この巨大穴はどのようにして生まれたのだろう。ブリュワー氏は一つの仮説を立てた。
 このギアナ高地自身は、1億年程前、南米が超大陸の一部だった頃、湖に堆積した土砂が固まった堆積岩で出来ている。やがて超大陸が分裂し始めると、ギアナ高地の真下にホットスポットが生まれ、そこから上昇するマグマの圧力で、この地が高々と押し上げられた。さらにその堆積岩が雨などに浸食された結果、この奇観が生まれたのだという。
 では巨大穴は? 巨大穴の内部を観察すると、大きな岩塊が散乱しているのが分かる。そのことから、穴は空洞が生じ、それが崩落することで生じたと推測される。その空洞を穿ったものは? ブリュワー氏は、それは地下水だと推測した。ギアナ高地は雨量が多く、その多くは隙間の多い堆積岩の性質から、地下深くに浸透し、地下水脈を形成しているはずだ。その地下水脈の豊富な水流が、地下深くで空洞を穿った。その空洞は、内部に水が充満している間は、その水圧で保持されていた。ところが、ある時になんらかの理由でその地下水が放出され、水圧で支えきれなくなった空洞の上面が崩落したというわけだ。
 もしもこの仮説が正しいのなら、巨大穴には地下水脈の痕跡が見つかるはずだ。調査団はそのありかを探し始めたが、最大の穴では見つからない。恐らく、最大であるだけに、堆積した岩石の層も分厚いのだろう。そこで別の穴を調査した。すると、水量の豊富な泉が断崖から湧き出しているのが発見されたのだ。さらに、この水脈の行方も推測された。最終的には台地の外周のどこかで、下界へと流れ落ちているはずだ。その地点をヘリコプターで調査したところ、確かに台地のふもとへと、大きな水流が湧き出しているのが発見されたのだ。
 これらの証拠から、恐らくは巨大穴同士は地下水脈でつながっており、最終的には台地の外周から流れ出ているのだろうと推測された。
 ブリュワー氏は、いつかこの地下水脈を探検したいという。そんな狭くて暗くて危険な場所は、僕ならごめんだが。元気なおじさんである。


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