Strange Days

国宝探訪

2002年08月24日(土曜日) 23時55分 テレビ

 寝る前にETVの国宝探訪を見た。今夜は高野山は金剛峰寺に集まった、仏教芸術の数々を取り上げる。
 金剛峰寺は、平安時代に空海によって開かれた、密教の根本道場だ。空海は、既に雑密と呼ばれる初期密教と修験道の修業地であった高野山を整備し、自らが日本に持ち込んだ純密の中心地としたのだ。人々の空海への信仰は厚く、その死後も実は生きているという空海信仰まで広まっている。
 そんな金剛峰寺も、空海の死後は荒廃が進んだ時期があった。それを立て直したのは、真言僧ではなく、他宗派の僧侶たちであったという。その証拠の絵画として、釈迦入滅の情景を描いた大幅の絵画が残されている。空海の密教では、信仰の中心は大日如来であり、それが様々な形に具現することで、この世の森羅万象が形作られると説く(超ひものひもみたいなものか)。それなのに、あえて仏陀入滅をテーマとする絵を書かせたのは、他宗派の僧たちも共に信仰できる対象であったからだと思われる。
 空海以降、密教はもっぱら加持祈祷を主として、朝野に数多くの信者を獲得する。その結果、貴族、皇族から数多くの宝物が、金剛峰寺へと収められることになった。今日、それらの宝物の多くが残存しているのは、歴代の真言僧らの政治手腕が優れていたからだといわれている。この事は、空海以降、もはや理論的に発展することが出来ず、加持祈祷による現世利益ばかりに走った真言宗の姿に重ねて、なにか皮肉なものを感じざるを得ない。


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