Strange Days

NHKスペシャル「核拡散テロリズム防止最前線」

2003年03月01日(土曜日) 23時00分 テレビ 天気:雨

 今日のNHKスペシャルは、旧ソ連を中心とした、核物質拡散の実態を追うものだった。
 内容的に、よく知られたこと、すなわち旧共産圏での杜撰な核物質管理の実態、それを使用した核テロの危険性を取り上げたものだった。
 去年の8月、旧ユーゴスラビア(ここも今は亡き国家の仲間入りか)のセルビアにある核エネルギー研究所から、大量の高濃縮ウランがアメリカに運び出されることがあった。ここは長年、ユーゴスラビアの核研究の中心だった研究所だ。しかし、ユーゴ連邦の崩壊に伴い、潤沢だった資金は途絶え、施設の管理が行き届かなくなってきた。アメリカは大使館を通じてこの施設の実態を調査した。すると驚くべきことに、核爆弾を製造するのに十分な高濃縮ウランが、十分な警備も無いままに在庫されていることが分かった。アメリカとセルビアは話し合いの時間を持ち、これをアメリカが買い取ることで決着させたのだ。アメリカはウランの代価のほか、経済援助も約束したという。それでも、このウランがテロリストの手に渡り、それを使ったテロが引き起こされるよりは、遥かに安上がりなはずだと作戦関係者は主張する。確かに、そうやって製造された核兵器が、紛争地域だけでなく、アメリカの中枢部で使用された場合、どれほどの被害をもたらすか、想像もつかない。その予防が可能なら、確かに高くは無いのだろう。それに、こうやって核関係情報の収集と、友好関係の構築が図れれば、一石三鳥だ。
 同じ問題は、旧ソ連圏にも存在する。旧ソ連では、セミパラチンスクを始めとする核実験場を、中央アジアに置く傾向があった。それらの国家はソ連崩壊と同時に独立を果たしたが、核管理に十分な予算を割けているとはいいがたい。故に、核物質の拡散が進む可能性が大きいのだ。事実、低レベル核物質の盗難は、日常茶飯事といってよいほど起きている。アメリカは、それらの核拡散リスクを低減するために、ロスアラモス研究所など、自国の核研究者の活用を進めている。核拡散のリスクが大きい諸外国の施設に、視察、指導、支援、核物質引き取りの要員として、これらの人員を派遣することを行っているのだ。海外諜報活動と相まって、アメリカは危険な施設の実態を、よく把握しているといわれている。
 さらに、衛星写真から核物質の所在地を割り出す技術を開発するなど、アメリカは核拡散防止に向けた取り組みを強化しつつある。
 この核物質盗難のリスクは旧共産圏だけではなく、もちろん先進諸国やアジア圏にも存在する。日本でも放射性物質の紛失事件が続いていることもあり、楽観は出来ない状況だ。少量の核物質と爆弾を組み合わせただけで、一定地域を使用不能にする"ミニ汚い核爆弾"が製造できるのだ。それがテロリストの手で使われる日が来るのかどうか、恐れながら待つしかないようだ。


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