Strange Days

奥鬼怒温泉雪中偵察行

2010年03月06日(土曜日) 22時05分 山歩き , デジタルカメラ , 自転車 ( 自転車旅行検討 ) 天気:雪降る山奥

 ただの温泉旅にしては厳しすぎる旅の果てに待っていたのは、思いもかけぬ桃源郷でした。


 今日は平野氏召集による奥鬼怒温泉への偵察行だ。自転車無しの旅なので"旅"カテゴリーかと思いきや、"山歩き"カテゴリー久しぶりの出番と相成った。内容を察してください。
 さて、朝は7:30新宿発のJR日光号での出発なので、5:00には起きて出発準備し、6:00の地下鉄で戸塚へ、そして湘南新宿ラインで新宿に向かった。
 新宿駅では、東武に接続するホームがかなり離れていて驚いたが、余裕をもって行動していたので、難なく日光号の待つホームに到着した。途中でJRの窓口に寄り、初乗りで乗った切符を鬼怒川温泉駅までのものに再発してもらった。
 日光号の座席を占めて程なく、(た)女史がやってくる。電車はさっさと出発し、池袋で首謀者平野氏と、ピンチヒッター*1のいいづか氏も乗り込んでくる。
 車窓を眺めながらおしゃべりしているうちに、電車は下今市に到着。普通の列車に乗り換えて、鬼怒川温泉駅に滑り込んだ。この辺は当然拓けている。
 さらにバスで女夫淵温泉に向かう。ここまで1.5h程度、\1500かかる。途中頻出する厳しそうな坂道、狭いトンネルを見て、『自走アプローチは無理かな』と考える。
 女夫淵の近辺には、雪がかなり積もっている。寒々とした風景だが、それだけに深山の趣があって良い。
 昼食はここで。山菜なんたらの類もあったが、基本的には町の食堂だった。じゃあボリュームを取って、この有様。
 宿までは、一般車通行禁止の林道を行くか、遊歩道を行くかだが、まずは遊歩道を行くことに。しかし一部区間が崩落しており、川の対岸から始まる迂回路の入り口はこの有様だ。いきなり冒険感を味わいつつ、雪の遊歩道を恐る恐る進んでいった。この辺では昨日一昨日の暖気で一度雪が解けたようで、それが昨夜の寒気で凍りついた恐ろしい区画がいくつも現れた。すってんころりんとならぬように、慎重に進んでゆく。
 今日は寒かろうと思い、綿シャツにジーンズ、その上に自転車用のレインジャケット上下を着込み、足はトレッキングシューズをスパッツで固めてあった。おかげで雪も雨も辛くは無かったのだが、点睛を欠く点があった。グローブをうっかり忘れていたのだ。それはいいづか氏から軍手を借用*2することで解決した。
 迂回路は、一山超えて、氷の残るを橋を超え、最終的には正規の遊歩道へと連絡した。そこまでが大冒険だったが、以降は比較的平坦な道を進んでゆけた。が、雪解けが始まるかどうかという微妙な時期ゆえに、積雪は底の方から解け始めている。なので、時々雪に足がズボッとばかりにはまり込むことがあった。これを防ぐには、歩幅を縮め、足をそっと乗せてそっと引くテクが必要とされた。
 道々、こんな風に凍りついた小滝など、深山の風景を堪能できる。ちょうどほぼ同道することになった別のパーティを除けば、周囲に人界の気配は無い。
 しかし、気配が無さ過ぎて、道はやがて『本当にこのルートでいいのか?』と疑念を抱かせるほどのものになってきた。どう見てもただの雪道に、先人の足跡が残されているきりの道行きだ。時折現れる沢を過ぎる度、このまま遭難してしまうんじゃないかという懸念が頭を過ぎる。
 そんな懸念も、前方に家屋を認めて解消される。そこは奥鬼怒4湯の一つ、八丁温泉だった。時代を感じさせる本館と、ログハウス風の別棟の落差がイイ。ここで温かい缶コーヒーを入れ、ホッと落ち着いた。
さらに進んでゆくと、ここ奥鬼怒で最大の、そしてもっとも商売っ気を見せる宿、加仁湯が現れる。ここはちょとした規模の温泉旅館だ。送迎用のバスも数多く停車しており、下流域の宿と提携しての日帰り企画もあるようだ。
 林道に入り、急傾斜の登ってゆくと、奥鬼怒からさらに奥へと進んでゆける林道への橋に至った。道は雪に覆われていて、果たして自転車で難無く行ける道かどうか不明だった。
 さらに林道を*3戻って行くと、ようやく手白沢への分岐点に到達した。しかしここからさらに高度100mほども稼がねばならない。
 相変わらずな雪道を進んでゆく。周囲は国立公園ゆえか、大木が豊富だ。やがて前方にうっすらと人工物のシルエットが現れた。やっとついた。
 宿は、想像以上に大きく、綺麗に手が行き届いたものだった。カウンター前の靴脱ぎには温泉パイプが通されたラックがあり、濡れた靴を乾かせる。行き届いた心遣いを感じさせられた。そして入り口にはわんこ。クロというそのまんまの名前だが、時折は女夫淵まで足を伸ばしていたという。しかし老齢ゆえか、暖かいパイプの側から動こうとしない。
 部屋は15畳あり、清潔で手入れも行き届いている。窓からは深山の風景が独占できる。しかしテレビが無いのは、軟弱な宿に慣れた拙者には衝撃だった。あっても見るもんじゃないけどな。
 ちなみに、加仁湯のまん前にはドコモのアンテナがあって、恐らくは八丁の湯、日光沢辺りまでは入るのだろうが、ここ手白沢は高度さがありすぎて、まったく入らない。文明世界との絆は一切断たれ、ロビーにある小さなグレー電話だけが連絡手段だ。おかげで気楽になれる。
 泊まった部屋の対面に薪ストーブのある食堂があり、そこでフレンチ風の料理を供された。ワインで乾杯し、無事到着を祝いあった。ワインを追加し、魚山菜主体の料理に舌鼓を打つ。鶏肉料理にりんごのソースをかけた皿もおいしかった。最後はりんごのシャーベットで締め。満足度の高い、豪華な夕食だった。
 食後は風呂に。内湯と露天がある。湯はぬるめと思えたが、浸かっているとなにかが染み込んでくるようにポカポカしてくるものだった。内湯も大きな窓のおかげで外が良く見える。露天はまさに露天で、周囲が一望できるほどだ。空が曇り、星空を拝めなかったのが残念だ。
 部屋に戻り、LOOX Uで今日の経路を復習していたら、平野氏がVAIO Pを出してNHKの『男二人自転車旅』の録画を流し始めた。キーボードは明らかにLOOX Uより打ちやすそうだが、画面の精細度は同クラスだろうか。
 疲労とアルコールのおかげで、みんなさっさと沈没し、22:00には明かりが消された。

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