Strange Days

九州横断ツーリング6日目

2010年04月30日(金曜日) 22時14分 , デジタルカメラ , 自転車 ( 自転車旅行記 ) 天気:実に良好

 今日は阿蘇の高いところに登ってやろう。中岳だ。


 一昨日の天草一周が不発に終わったこともあり、今日のヒルクライムはぜひやり遂げねばと思っていた。このまま鉄旅だがなんだか分からないまま終えるのは、不甲斐ないじゃないか。
 宿をややゆっくり出て、まずは阿蘇駅に向かう。その真ん前から、阿蘇中岳火口まで続く県道111号線、通称阿蘇パノラマラインが伸びているのだ。
 その阿蘇駅までのR57は交通量が多く、少し嫌な予感を抱きつつパノラマラインへと折れた。すると交通量が減り、これなら車に煩わされることなくヒルクライムに専念出来そうな予感がした。
 登り始め視界が開け始めるまでは、鬱蒼とした森の中をゆるゆる登ってゆく。足はくるくる回り、これなら楽勝じゃわいと舐めていたら、高度を100m弱加えた辺りから急に角度が増して、本格的なヒルクライムになってきた。流石にフロントをインナーに落とす。
 路面の舗装はよく、道幅もまあまあ広い。バス相手ではギリギリ一杯だが、交通量が少ないので、よほどのことがない限り相手が大きく避けてくれる。ただ、側溝が蓋なしの区画と蓋ありの区画が交互に出てくるので、蓋なしの場合に転落しそうで怖かった。しかし、50mくらいずつ交互に現れるので、後続を見てタイミングを合わせれば、あまり恐れることもなかった。
 やがて森林地帯を抜ける。ある高度から上は一面の草原になっており、牛馬の放牧が行われていた。上の方を仰ぎみると、阿蘇の中央火山群が聳えている。あそこまで登るのかあ。
 傾斜の増減はあるものの、基本的にインナーローでゆるゆる登り続け、やがて最高部と思しき場所に到達した。草千里と中岳火口を一望できる展望台だ。
 そこを越え、阿蘇火山ミュージアムのある駐車場に入った。自転車は無料。ここで昼食をとって、草千里をうろついてみた。スケールの大きな高原の眺めはいい。しかし風が強くて、体感温度がずいぶん低かったので、しばらくうろついてから阿蘇火山ミュージアムに入ってみた。こちらは地学萌の向きにはたまらん物があるに違いない。ビデオ教材が実に充実している。また5面スクリーンの映写室もあって、阿蘇山に関するビデオが流されたのだが、いまいち有効に活用できてない気がした。しかし5面一杯に使ってのパノラマ映像は楽しかった。
 火口も見ておこう。ちょっとダウンしてアップすると、中岳火口へのロープウェイがある。有料道路が併設されているのだが、今日はロープウェイに乗りたい気分だった。
 ロープウェイで上に登ると、観光ガイドのおっさんがなにか必須な説明をする係員の顔で客を集めている。紛れ込んで話を聞きつつついてまわる。昭和の香りのするガイドだ。最後に、案の定なにがしかのアイテムを売りつけようとするので、そそくさと抜けた。
 今日はガスが強いらしく、朝のうちは立入禁止だったようだ。風向きが一刻変わり、火口にたまった水面がちらりと見えた。
 阿蘇中岳第一火口は、火口湖の形成、蒸発、赤熱、爆発というはっきりしたサイクルを持っている。活動時期を予想可能なので、危険を限定出来、観光資源として活かせるのだ。しかしそれでも突発的な爆発はあるそうだ。この元気な火口の隣に今は静まり返っている旧火口がある。しかし50年ほど前の昭和の活動期と呼ばれる活発な時期には、ここからも盛んに噴火があったという。50年前なんて、地質学的にはついさっきのことだ。
 ロープウェイの駅から見て、少し登った辺りに、新設された展望台がある。ここからの眺めは、この辺の最高所であることもあって素晴らしい。荒涼とした荒地に、ロープウェイと有料道路が走っているのが見下ろせる。しかし風が強い。気温が7℃なのだが、体感は0度に近いんじゃなかろうか。そろそろ帰ろう。
 下りは一気に、と行きたいが、熱容量の少ない小径車なので、時々停車してリムを冷ましながら下った。草原の眺めが美しい。なだらかな丘に見えるものも、阿蘇の旧火口の一つだ。阿蘇は数知れない火口跡が残されており、それが中央火山群の複雑な外形を生み出しているのだ。
 このまま宿に戻るには早い時間だったので、内牧温泉にも立ち寄ってみた。この辺に宿をとると、大観山への往来が少し楽になるのだな。
 宿に戻り、とりあえずビール。しかし、阿蘇はいいな。こういうスケールの大きな地形は、走って楽しいものだ。

Add Comments


____