Strange Days

意外に楽しい内子

2014年08月12日(火曜日) 22時46分 , 自転車 ( 自転車旅行記 ) 天気:くもり時々ポツリと

 さて、いよいよ未知の土地に。初日の内子は通り過ぎるくらいのつもりだったのだが、どうしてどうして、面白くて夕方まで粘ってしまった。


 朝、早くにホテルを出るので、宿泊室で軽く朝食を取って、松山発内子経由八幡浜行きの列車に乗った。松山からの線路は、海陸2系統に別れ、その陸側の線路が内子線だ。その内子線、トンネルが多いこともあるのだが、なかなかに真っ直ぐな路線だ。
 内子駅で降りる。微妙に繁華街から外れた場所にあるのだが、昔は繁華街近くにあったようだ。駅前にはC12。これは旧内子線で使われていた車両だが、相模線や島原線でも使われていたのだそうだ。
 内子駅前からちょっと東進し、北に向かうと、本来の内子繁華街がある。ここは宇和島街道に沿った宿場町だが、江戸期に櫨の実を使用した蝋作りが始まり、一気に富が蓄積された。その残香を感じる古い町並みだ。
 まずビジターセンターに立ち寄った。古い警察署を改装したもので、真新しい。内部は、内子の歴史を概観できる展示があり、観光への導入部として機能している。この裏手の駐車場にBD-1を駐輪し、概ね歩きまわった。
 内子の通りの構造は結構複雑だ。ビジターセンター前の通りは、せいぜい昭和の薫りを残す程度だが、伊予銀のある辺りから坂道を登り始めると、急に明治大正、さらには江戸期の香りが濃厚になる。面白い。
 立ち寄った方々の旧家に必ずある中庭が、実に風情ある。ここは古い薬問屋だった、”暮らしと商いの博物館”。
 伊予銀から曲がった辺りにある醸造所が、酢卵という個人的にはなんだかなな物をプッシュしているが、そこを抜けると落ち着いた佇まいの通りだ。再整備された観光物件もいいものだが、こういう場所では現用の民家こそが光る。
 ここは蝋作りで栄えた本芳我邸。現用の邸宅だが、前庭には入れる。この辺りは、駅からかなり離れている。しかし、この辺りがもっともかつての佇まいを残しているように思えた。
 町並みの端の方、しかし位置づけとしては山の手の方に、木蝋資料館がある。ここは先の本芳我から別れた上芳我家が蝋作りをしていた大邸宅だ。これは櫨の実から蝋の元の果汁を絞りだすための道具。蝋作りの手順や歴史が一覧できる資料館も有り、力が入っていたな。邸宅は、なにかの事情で中2階の座敷を作らなかったため、ごつい構造を一覧できるようになっている。
 町並みの一番山の手に、高昌寺という寺院がある。何の気なしに立ち寄ると、結構魂消る代物が。涅槃仏があるのは珍しい。
 戻りつつ、裏道に出てみる。曰く有りげな赤い橋があったので、近づいてみると、はりやま橋だそうな。えっ、はりやま橋? この倉庫を持ってる会社の洒落だろうな。
 さらに外れの方に、謎めいた建物があったので、接近。旭館という、活動写真時代の映画館だとか。実は今も映写会が開かれているようだ。
 この辺りで、お腹が空いたので、中芳我邸*1を利用した食事処で、内っ子膳を。蕎麦はまあまあ。冷たいのが、碗に入って出てくる。美味しかったけど、閉口したのが五穀飯の握りが緩かったこと。握りは締めて欲しいな。締めちゃうと文句が出るのかも知れない。
 最後に立ち寄ってのが、実は駅に一番近いあたりにある、内子で最も有名な観光物件、内子座。現役の芝居小屋で、文楽の定期公演もある模様。この日は催事は無し。有料で入館可能だ。
 中は古い芝居小屋のまま、維持されている。二階席の宣伝書きが面白い。昔の自転車は輸入車が多かったのだろう。まあ、近年もそうなっているが。
 舞台上にある円形の跡は、回転舞台の接触部だ。その真中にセリが開いており、人力昇降機で人一人をエッサエッサと持ち上げることが出来る。
 ここの楽しいのは、その舞台下にも入れてもらえること。こんな急階段を降りると、さっきのセリの昇降機まで行ける。ここにはスッポンもあり、暗くて写真は撮れなかったが、やはり奈落にアクセスできる。
 最後に自転車に戻り、内子の山の方にある屋根付橋に行ってきた。内子線の線路を超え、北西に向かってゆくと、石畳地区という山奥の集落がある。そのずっと手前に、丸子橋という屋根付橋があるらしいので、そこまで走った。
 斜度は全く大したことがないのだが、並走する川がむしろ渓流の眺めになってゆくのが楽しい。道も、概ね広い整備された2車線道なのだが、時々細く森の被さった暗い道になるので、これも楽しい。
 途中で見かけた大邸宅。この辺の豪農なのだろうか、民家というより武家か何かのような、ごつい構造だった。
 丸子橋は、やや開けた一角にある。屋根付きなのは、橋を保護するためらしいが、同時に農作物の一時保管や、農具置き場にも使われていたようだ。いい眺めだ。
 この辺、本当に渓流という感じ。
 内子に折り返し、ここから大洲までは自走した。結構細く、交通量の多い区間もあって、自転車だと神経を使った。
 大洲の市街地に取ったホテルに投宿。疲れたので、明るいうちに外に出て物資を買いあさり、自室で食事してから寝た。
 うん、内子は、意外なくらい楽しく過ごせる町だった。

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