Strange Days

今夜のサイエンス・アイ

2000年03月11日(土曜日) 20時30分 テレビ

 今夜のサイエンス・アイは、海外のドキュメンタリーをそのまま放映していた。期末で製作が間に合わなかったのか。
 番組では様々な動物が示す能力を取り上げていた。だいたい、我々が知能の定義に深く関わると思われるような能力ばかりだ。
 例えば良く訓練されたオウムは数を数え、色を見分けるなど、人間が出す課題を理解し、正確に答えるがごとき行動を示す。オウムに人間の言語を理解できるというのは信じ難いが、とにかく実験者の言葉を理解させ、その回答を音声で答える(オウムだから)という実験を行っていた。なにか「賢い馬」の類かとも思えるのだが。
 さすがに猿を使った実験だとこちらも納得しやすい。ボノボを使った実験は著名だ。またキツネザル(だったっけ、真猿類じゃないの)を使った実験でも、猿は的確に状況判断する能力を持っていることが示されている。キャンディを取るという課題を与え、二つの到達性に差をつけた方法を示してやると、大抵はより簡単に到達できる方法を的確に選択するのだ。こちらは言語を使った実験ではないので納得しやすい(どうも言語というモノは人間の特権的な能力という気がする)。
 また良く訓練したチンパンジーは、ある部屋に隠したおやつの場所を、その部屋の模型を使って説明してやると、簡単に到達できる。これはチンパンジーが部屋の模型という抽象概念を理解し、それを現実の場で再適用できる能力を持っているからだと説明できる。この課題をヒトの2才児に与えるとこなすことが出来ない。この年齢ではヒトの方が猿に劣っている面もあるらしい。
 またチンパンジーには他人(他猿?)がある事柄を知っているかどうか推測する能力もあるらしい。2匹のチンパンジーを使い、ある猿に対し、猿たちが大嫌いな獣医が、別の猿に接近する状況を見せてやる。この時、接近されている方の猿が明らかに獣医の存在に気づいていない場合、それを見ている猿は警告の声をあげる。逆に明らかに知っていると思える場合、警告の声は上げない。別の猿が危険な状況を察知しているかどうか理解しているからだと説明できる。
 同じような能力はより脳の小さなキツネザルにもある。実験者が二つの箱に果物を隠し、それに別の実験者が操作を加えるという状況を猿に見せる。実験者1が箱に果物を隠し退出する。そこで実験者2が果物をもう一方の箱に写すという操作を猿に見せ、戻ってきた実験者2が果物がない方に手を突っ込んでも、猿は注目しない。しかしこの時にトリックを使い、無いはずの果物を取り出してみせると、猿はしばらく注目する。あり得ない状況が発生して事を理解しているからだと説明可能だ。
 このような事例は様々な動物にも見られるが、注意が必要なのは全て人為的な環境での実験だということだ。つまり、猿たちは自然環境の中では人間の言語を使うことも、模型のような抽象概念を扱うこともない。ただし他者がある事柄を理解しているかどうかという能力は、自然環境でも役立つと考えられている。
 このように動物にも抽象概念を扱う能力はあり、実験ではそれを引き出すことが出来るというのは興味深い。しかしそれがなぜヒトほどにまで発達しないのか、あるいはなぜ言語を獲得しないのか。ヒト自身の言語獲得にまつわる謎と絡めて、これからもますます追求されていくだろう。


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