Strange Days

2000年01月02日(日曜日)

日本人はつらい民族だ(司馬曰く)

19時31分 思考

 「つかぬことをうかがいますが…」(早川書房、ISBN4-15-050232-3)という本を出勤途上に読んでいる。これはアメリカのNew Scientistという週刊科学誌(週刊だぜ)の末尾にある読者の疑問コーナーをまとめたものだ。日本の科学雑誌にも同じようなものが設けられていたりするが、違うのは答えるのも読者だという点だ。面白い事に、答えには誰も責任を取れない構造になっているのだ。必ずしも正解が得られるとは限らないのだ。
 例えば、「眩しいものを見るとくしゃみをするのはなぜ?」という問いがある。それに対する一人目の読者の答えは「光子が鼻に飛び込むからさ」というふざけたもの。しかしありえない事ではない(マジかよ)。そこで次の読者の答え。「光に反応するくしゃみ遺伝子があるからです」というこれもちょっと待てといいたくなるような答えだ。遺伝子に絡めればなんでももっともらしくなるってのか。ところが三人目の読者も「それはくしゃみ遺伝子のせいです」という回答をしている。しかもそれは全人口の10%程度に遺伝している云々......というまことにもっともらしい説明さえついている。うーむ、これは科学的事実なのか、それとも血液型と性格の関係のように科学的には証明されていない風説が流布しているのか、これだけではなんとも判断がつかない。ともあれ、欧米では「くしゃみ遺伝子」なるものが信じられているという事が分かる。~
 こんな感じで、権威ある専門家がずばり答えてみせる場合より、むしろ科学的な探求心を刺激するような作りになっているのだ。そういう意味では良書だと思うので、暇つぶしに読んでみる事をお勧めしたい(誰にだ)。
 寂しいのは、英語圏の読者(欧米や香港、他の非英語圏も)が和気あいあいと参加しているのに、日本からのそれはどうも皆無らしい点だ(熊本からの参加者もあったが、名前からすると在日外国人らしい)。日本は1億超の人口を持っているので、大抵のものは良くも悪くもその内部で賄う事が出来る。科学雑誌もそうで、権威という点で海外のNatureなどに遠く及ばないものの、科学総合雑誌や専門誌、一般誌など、大抵の種類は揃っている。それが英語圏にアクセスする必要を低めている観は否めない。日本人に、そのセルフイメージでも、また海外の人々のイメージの上でも異質感があるとされるのは、こうして大抵のものを賄ってしまえるが故の閉塞性があるように思える。とすれば、なんとも皮肉な話だと思えるのだが。