Strange Days

2002年08月30日(金曜日)

明け方の観望

22時00分 星見

 会社で仕事し、朝の嫌な気分のまま帰宅し、酒をかっ食らっていたら、いつの間にか寝床で寝てしまっていた。意識を失うほど飲んだわけではないが(というか缶1本)、眠くて横になってるうちにそのまま眠ってしまったらしい。
 起き出して、今日は口直しのツーリングにでも行こうかと思いつつ、外に出てみたら、東にオリオン座が掛かっているのが見えた。そうか、もう3:00前にはオリオン座があんなに高く昇っているんだ。早速、CANON18*50ISを抱えて、廊下に出た。
 M42はと......よく見える。夏のどの星座でもお目にかかれないくらいの散光が、たくさんの微光星を取り巻いている。これを見ると、冬が近づいているなと感じる。
 ここで18*50ISは電池切れ。代わりにMIZARの20*80を引っ張り出した。さすがに散光は18*50よりも口径分明るく映える。大三つ星に向けると、そこにうじゃうじゃと群れる明るい輝星、そして無数の微光星が敷き詰められている。きれいだ、と思った。ひたすらきれいだ。
 昨日、僕の自転車に轢かれて逝った猫のことを思い出した。つくづく、可哀想なことをしたと思う。だが猫が死のうが、僕が死のうが、その辺の親父が死のうが、この星の輝きはいささかも曇ることはないだろう。残酷なくらい、超然と輝いているだろう。指輪物語でサムワイズ殿が確信したように、どんなに願っても望んでも、決して人の手が届かない美というものもあるのだ。

猫踏んじゃった

22時00分 自転車

 4:00、またもや良く眠れないまま(早起きしようとすると熟睡できないのはなぜだろう)起き出す。4:30にTCR-2にまたがって部屋を出た。今朝は雲が無いせいか、この時間なのにもう薄明かりが始まっている。そんな中、ロードバイクの軽い走行感を楽しみながら、境川へと漕ぎ出した。これから災難に見舞われるとも知らずに......。
 区役所沿いの低地に出る直前の十字路だった。少し先の車道に注意しつつ進んでいたとき、12Wのライトに照らされた白いものが、突然民家の生垣から飛び出してきたのだ。どうにもならない。ブレーキを引くも、全く間に合わなかった。ガツン、という衝撃。意外に衝撃は弱く、姿勢を崩すことも無くその白いものを乗り越えていたが、その一瞬、その白いものが猫であることを見て取っていた。猫は前輪が乗り越えた瞬間にサッと走り去り、僕が減速しつつ振り向いたときには、もう姿を消していた。衝撃はたいしたこと無かったし、すぐに走っていったので、しっぽでも踏んだのかと思っていたのだが......。
 サイクリングロードに入り、やや重いギアで突っ走ってゆく。をを、今朝は意外に足が回るなあ、などと思いつつ、俣野橋に到達。今朝は空に雲一つ無いせいか、この時間でも既に明るくなっている。ライトを消し、R467への上りを、今朝はアウターのまま、さりとてダンシングもしないで、黙々と踏んでゆく。重いけどがんばって20km/h以上を保って登る、登る、登る......。うきゃきゃー! だめだ、足が速攻で売り切れました(;_;)(ダメすぎる)。最後の50mはいつも以上にヘロヘロで、結局インナーに落としてのろのろと足掻くようにして登る破目になった。持久力無いなあ。裏アームストロングと呼んでくれ(爆)。
 R467を突っ走り、湘南台公園で一休み。こんな時間なのに、いつも東屋で談笑している人たちがいる。早起きだ。
 サイクリングロードを取って返し、上飯田団地、環状4号を越え、急坂を下って区役所近辺に出たときだった。視界に、車道に横たわる猫の死骸を片付けている、どうやら散歩中だったらしい男性が入った。車に踏まれないよう、道端に引きずっていた。その瞬間はさっきの遭遇とその猫の死骸が結びつかず、『ああ、かわいそうに』などとのんきに考えつつ、でも親切な人に見つけてもらえて、猫よ良かったじゃないか、などとも考えていた。
 100mほど走り、さっきの遭遇地点に到達した。そこを通過しながら、ふとさっき遭遇した猫も、今見た死骸も、同じ黒斑だったように思えてきた。もしかして、同じ猫? その瞬間、いわく形容しがたい不快感がこみ上げてきた。
 そりゃあ、僕は猫には思い入れが無いし、野良猫も危険な街暮らしでは死ぬことも多いだろうと、やや冷淡に達観することは出来る。ようするに、奴らの大半は、ある日、突然に、不条理な死を遂げる運命にあるのだと。だから、街中で猫などの死骸を見ても、かわいそうに、以上の感想など持ちようが無いのだ。しかし、自分の手で殺したとなると別だ。
 恐らくは、あの猫は轢かれたときに致命傷を負っていたのだが、なんとか力を振り絞り、あの場所まで行き、そこで死んだのだろう。あるいは、轢かれた時の怪我で体の自由が利かず、車にでも轢かれてしまったのか......。
 アパートに帰り着き、風呂に入る用意をしながら、さっきの事件を思い出しては、嫌な想いを何度も反芻していた。
 猫よすまん。だが同時に、轢いたのが猫でよかったとも思っている。もしも人間の子供だったなら......。そして自分が無事なのにも、ホッとしてもいる。
 とりあえず、TCR-2は"猫踏み一号"と命名し("猫スレイヤー"ではブラック過ぎる)、この事件を記憶にとどめるようにしよう。そして、自転車で走るときは、常に20km/hで走る70kgの凶器に乗っていることを意識するように努めよう(今までも注意していたのだが)。
 ごめん、猫。冥福を祈る。