Strange Days

2003年10月12日(日曜日)

名古屋~大阪ツーリング3日目

00時00分 自転車 天気:また晴れた

桂川を行く


 宿坊を出て、まずは自分たちが泊まった仁和寺を見て回った。国宝の金堂を始め、文化遺産の塊のようなこの寺だが、あいにく予習をしてなかったので、見どころはいまいちつかめなかった。でも、もう一度、今度はじっくりと京都市内を回ってみたいものだ。
 しばし、京都の美味しそうな場所を走る。映画の撮影に使えそうな竹林を抜けた後、抹茶アイスを食す。それでも止まらず、冷奴まで立ち食いする始末。本当は湯豆腐の方が良かったのだが、『3分かかる』といわれたのでは。
 さらに走り続けてゆくと、桂川に架かる橋の上に出た。嵐山だったようだ。ここからの眺めが絶景だった。上流側は水をたたえた淀みになっており、舟遊びに興ずる人々の姿が見えた。下流へは流れが抜けている。また上流側から右岸に掛けてはこんもりした山がうずくまっており、その中腹には寺院の伽藍が見え隠れする。デジカメ程度では、この風景は収めることが出来ないだろう。超広角レンズをつけた1眼レフが欲しいところだった。
 ここで合流したのが、ベネトン14インチを駆るベス女史だった。一行はますます大所帯になってゆく。
 続いて、電電宮なる、NTTグループの守り社かと思えるような神社を参拝した。面白い神社だった。エジソンとオームが祀られている(!)。

毛虫だらけの昼食タイム


 桂川をしばし下り、やがてお菓子どころで買出しの後、桂離宮、の正門だけを見学した。皇室財産ゆえ、見学するにははがきを出し、しかも抽選の上で、と手間がかかるそうだ。
 昼食はコンビニで買い出し、川沿いの公園で取ることになった。川沿いにある高い土手の上という絶好のロケーションにもかかわらず、なぜか人気が無い。その謎は、ほどなく判明した。公園の案内板の近くに自転車を止め、思い思いに休んでいた一行のあちこちから、悲鳴のようなもの(って『バールのようなもの』の類だが)が聞こえてきたのだ。遊歩道の左右に立ち並ぶ樹に、無数の毛虫が群生していたのだ。それが、気がつくと衣服の上を這いまわっていたりして......。僕も、案内板の上に腰掛けた拍子に、毛虫の死骸を潰してしまった。道理で、人気が無いわけだ。
 毛虫騒ぎに前後して、近くのコンビニへと昼食買い出し隊が出動した。僕も買い出し隊に志願し、同行した。あまり食欲も無かったこともあり、いなり寿司を中心にウィンナーなどを付け合せる。
 コンビニを出て来た道を戻ろうとした時だった。左右のビンディングを嵌めて、漕ぎ出すと同時に、ギアをシフトダウンした。が、なかなかギアが決まらず、ノイズが続く。これはおかしい。
 自転車を止めようとした時、『なんか絡んでるよ』と周りから声がかかった。見ると、リアハブの周囲に黒い鉄線のようなものが......。あちゃー、やっちゃった。キャットアイの携行ワイヤロックを掛けたまま、強引に漕ぎ出してしまったのだ。破損したのはワイヤロックの方で、スポークなどには異常は無い。助かった。ただ、ハブのシールドが一部破れてしまったので、この先雨に降られると不安だ。まあ、実はリアハブは、もっといいのに替えたいと思っていたのだが。
 ともかく、走るのに異常は無いので、昼食地点へと走って戻った。途中、橋の近くで、リカンベントを含む一隊と遭遇した。関係者か? いや、無関係の第三者でした。しかし、近畿に来て、ぽた郎氏以外の野生(笑)のリカンベントを見たのは、これが初めてだった。
 昼食には、ぽた家がわざわざ買って来て下さった鯖寿司が饗された。要するに"ばってら"。とても美味で、ちょっと食欲が落ちがちだった胃袋にも、すんなり収まってくれた。

悪名高き淀川の車止めを越えて


 昼食を済ませ、桂川をさらに南下していった。桂川、淀川などが集合する地点を経て、淀川のサイクリングロードに移る。専用のサイクリングロードは、道幅も広くて快適なのだが、車止めが聞きしに勝る恐ろしい代物。どんな自転車に乗っているにせよ、一度降りなければ通過できないような様式になっているのだ。荒川で言えば、青い水門のところのそれが近い。設計者の思い描く自転車(おそらくはママチャリ)以外は、担いで越える他は無い。それが、数百メートルごとに登場するのだ。これほど利便性を欠いた設備も無いだろう。
 ここで問題になったのが、にち氏と(あ)氏のSatRDay。ツーリング装備を含め、恐らく20kg超には達しているだろうそれを、いちいち担ぎ上げねばならないのかと思われた。数度それを繰り返した後、試しに車止め(というか自転車止めか、これは)の中央に設けられた、ロータリー式の車椅子通しを使ってみると、ぎりぎりで通過できることが判明。以降は、担ぎから解放された。とはいうものの、いちいち止まらねばならないのは同じことだ。
 途中から、昨夜の湯豆腐に参加して頂いていた、pekopoko氏も同行していた。乗車は、なんとあのロデオ(赤)。これでこの一行にちゃんと着いてきた。まあ、荒川では20km/h超で車道を走る一団に、ちゃんとついてきた人もいるけれど。
 このロデオが大活躍したのが、小休止にと止まった公園での試乗会でだった。(た)女史が早速挑戦する。最初は一漕ぎも出来なかったのだが、だんだん乗っていられる距離が伸び、なんとか一漕ぎ、もしかしたらさらに、というところまで上達したようだ。どうやら買う機満々。ソファー掛け気分のまま走れる究極の安楽自転車、SatRDayの次は、一瞬足りとも油断ならない究極のじゃじゃ馬自転車、ロデオを買う気みたいだ(笑)。頑張れ、これ以上となるとFREVO RACERが待っているだけだぞ(リカンベントのロデオと呼ばれる、最強のじゃじゃ馬自転車)。

イトーサイクル訪問


 車止めの嵐を除けば、サイクリングロードはよく整備されていた。初日に走った名古屋のサイクリングロードの惨状と見比べれば、まだしも将来に明るい展望が拓ける......といいなあ。
 かなり走った後に、右岸へと橋を渡った。橋の途中で記念撮影。行き違う人々は、一隊何の集団だと思ったことか。
 市街地を走り抜け、やがてとある自転車店へと到着した。ここが今日の目玉、イトーサイクルだった。東の和田サイクル、西のイトーサイクルというところか、小径車の改造に関して造詣の深いショップだ。僕も、トレンクルに着けたアルホンガのデュアルキャリパーブレーキを、ここから通販で取り寄せたことがある。
 店は、和田サイに較べるとずいぶんきれいだ。普通の自転車屋をやっている。そして店舗の前には、真っ赤なGreenspeed GTOが。乗ってる人も真っ赤。迎撃してくれた(?)定吉氏だった。定吉七番の定吉か。いや、ただの定吉だろう(謎)。今回参加できなかったまき氏もいい加減赤い人だが、定吉氏の赤さ加減には負ける。自転車パーツもことごとく赤で、赤くないものは自分で塗ってしまったとか。徹底している。
 さて、店内を見て回る。普通の自転車屋をやっているが、ランドナー向けのオールドパーツの棚が広い店が、ちょっと異彩を放っている。ウェブページの商品傾向と比較すると、思ったより普通の店という感じだ。が、店主の人がやや変わった人で、宇宙人ッぽいと言う声さえも聞かれた。一見、それほど変わっているとは感じなかったが、店を出る時ににち氏のSatRDayにスルスルと滑るように近づいていった足捌きを見ると、やはり宇宙人の血が流れているのかもしれない。
 ここでベス女史がベネトンのブレーキキャリパーを、アルホンガのデュアルに交換。さらに『内装3段化する!』といってました。みんな同じ道をたどるのか。

とんがらし、そして猫事件


 今夜の食事は、「とんがらし」というイタ飯屋で取ることになった。開店時に押しかけるも、狭い界隈ゆえに路上駐車は気が引ける。すると、店主の人が近所の空き地に止められるように交渉してくれた。治安は悪いかもしれないが、昔ながらの人情味の残る街のようだ。
 店に入り、ビールやワインを空けながら、イケる料理に舌鼓を打つ。ワインピネガーも、地中海系の海鮮料理もダメと、ボスニア派兵にはとても耐えられないような僕だが、この店のものはイケた。店を辞す時、店のスタッフ共々記念撮影。アットホームな雰囲気の店だった。
 食後は、さすがにアルコールをふんだんに摂取したことがあり、またホテルも近いこともあり、自転車を押して行くことになった。私鉄数駅分を歩いていったのだが、酔いも覚めて気分よく歩けた。
 半分以上歩いた地点だったろうか。『に~』という声とともに、白いものが足元に寄って来る。猫、それも生まれてそれほど経って無さそうな、本当に小さな子猫だった。それが、なぜか僕の自転車に擦り寄ってくるのである。とことこ駆けながら、盛んにホイールに擦り寄ろうとする。ホイールの下敷きにしそうなので、こっちは慌てて自転車を止め、慎重に避けなければならない。それが繰り返されるうちに、いつの間にか一団と距離が開いてしまった。例の東名高速下の(勝手に建てられた)猫小屋で見かけた子猫もそうだったが、生まれて間もない猫は警戒心も無いらしい。手を伸ばして押しやっても、また追いかけてくる。なにがこの猫の情熱を掻き立てているのか? 他のより大きめ(この日の参加車の中では最大の24インチ)ホイールと、銀色のスポークが目を惹いてしまうのか。
 そりゃ可愛いのである。片手に乗りそうな子猫が、無心に擦り寄ってくるのだから。ここが境川なら、思わずお持ち帰りしたかもしれない。だがここは遠征先の大阪だ。お持ち帰りするわけには行かないのである。こぐ氏に引き渡して猫汁を堪能していただくわけにもいかない。そんなわけで、アワアワと慌てている間に、ますます集団から距離が離れてしまう。このままでは迷子の危機なのである。ここは心を鬼にする時だ。
 猫をそっと靴のつま先に乗せて、ポンと1mほど向こうまで放った。当然、猫は怪我も無く、また寄って来る。するとまた同じ事を繰り返す。何度かやって見せると、さすがに猫の方も、こちらが寄せ付けまいとしているのを察したのだろう。少し離れて、にーにー鳴き始めた。今だ。すかさず駆け出して、一気に距離を開ける。背中に、猫の悲しげな『に~』という声が追いすがってきた。それを振り切って、なんとか原隊に復帰できた。これが僕以外誰も知らない、"大阪猫事件"の顛末だった。
 それにしても、なんなんだ、この罪悪感は(笑)。別に悪いことをしたわけではないのだが。去年夏の猫轢死疑惑といい、どうも僕は自転車と猫に関しては面白い体験を......いや、ツいてない思いをしなければならないようだ。

ホテルで、まるで修学旅行のように


 ホテルでは、各自シングルの部屋が取られていた。きさ女史がホテルと交渉してくれて、会議室に自転車を置いてよいことになった。これは、翌日のことを考えると、とても助かった。
 寝る前、"ミーティング"ということでにち氏の部屋にみんな(10人)集まったのだが、実際には酔っ払いの延長戦だった。こんな狭い部屋なのに、むりやり集合写真を撮ったりして。これだけでかなり笑えた。
 部屋に戻り、風呂に入りながら、昨日の仁和寺では出来なかった洗濯をする。コインランドリーは無く(駅の近くにはあるといわれたが)、風呂場で石鹸を着けて洗っておいた。部屋のエアコンを入れ、そのまま自然乾燥を図ったのだが......。