Strange Days

2003年09月28日(日曜日)

第3回東京・南会津サイクルトレイン2日目

00時00分 自転車 天気:いいのだ

唐沢峠越え


 朝、6:30に起床。昨夜はぐっすり眠られたので、気分的には楽だ。だが全身に疲労感が漂っている。特に膝にストレスを感じる。やっぱ、ちゃんとアイシングしておけばよかった。次回への課題だ。
 7:00から朝食ということだったので、大広間に向かった。朝食は温泉卵、鮎の甘露煮、肉じゃがなど。ご飯はきのこご飯だった。食が進む。
 8:00に玄関に集まり、昨夜の大型犬(パルという名前だった)を前に記念撮影。ここもいい宿だった。
 自転車を置いたガレージに徒歩で移動し、ここからはめいめいの自転車で唐沢峠を上って行くことになる。
 唐沢峠は全線ダートの上りで、まさにMTBの為の道という観がある。ダートが始まる場所までみんなで上り、そこからは各自のペースで上っていった。自分の体力を鑑み、真っ先にスタート。
 昨日も感じたことだが、ダートの上りは舗装路の上りとは違うスキルが必要で、体力を余計に使う傾向がある。軽いギアを回して上っていったが、昨日の疲労がたまって、次第に足が回りにくくなっていった。それでも頑張って上っていったが、最後の方で力尽き、数人にパスされる。それでも、なんとかトップグループで峠の頂上に到着した。残念ながら、山間の切通しという感じの道で、見通しは良くない。それでも、周囲の緑がすがすがしい。

大規模林道


 唐沢峠を下り、少し走ると、木賊温泉に到達する。ここで大規模林道を前にした、最後の小休止があった。道端にずらりと自転車を並べ、ボトルのドリンクで喉を潤す。
 さて、いよいよこのツーリングのメインイヴェント、大規模林道の踏破だ。確か800mくらい上るんだな、と憶えていたので、高度計を横目に見ながらの上りになりそうだ。
 ちょっと準備が遅れたので、身支度して先行グループを追い始めた。ずっと前方にhai氏の後姿が見える。ねず吉氏と、つらいねえ、などといいながら上って行く。
 先行するグループにはすぐに追いつくつもりだった。だが、あれ、離されてゆきますよ? 全然足が回らないではないか。心拍がすぐに上がるので、これはもう燃え尽き寸前? この大規模林道では、費やせる時間が限られているので、バシバシと足切りがかかるらしい。あんまり下位の方にいると、お声が掛かるかも。危うし、俺様! 必死に登りに掛かる。が、足は思うようには回ってくれないものだ。当たり前だな。いつでも思うように回ってくれるものなら、今頃は日本一周でもなんでも出来てるよ! 思うように回らないからこそ、自転車は面白い、のか?
 そんなのん気なことは言ってられない。上位に追いつくどころか、どんどん抜かれてゆく状況だ。マジにツライっす。足が回らなくなると、他にも気になるところが出てくる。たとえば直前に換えたサドルが硬すぎて、尻が痛すぎることとか(定期的に尻を上げて対処)、右手に血行障害が出て、痺れてきたこととか(しばしば片手運転して対処)。あまりにつらすぎるので、無休憩という目標は放棄し、高度200m程度で小休止を取ることにした。ストレッチして、固まってきた体をほぐし、なんとか動かそうとする。
 そろそろ半分かな、という辺りで、先行集団が休止しているのに追いついた。GPS表示を見ると、この先も九十九折れが続いているようだ。一瞬、タイヤの気圧を3.5BARから最高(確か5BAR)まで上げようかと思ったが、Crank Bros.のインフレーターでは日が暮れてしまうので、諦める。
 適当に休んだところで、先行集団はもう出発していってしまった。すぐに出る気力は無く、少し間をおいて再出発した。
 また汗だくになりながら、上り続ける。上りでは、ドロップハンドルみたいに姿勢を変えられるハンドルが欲しいな。EPICに着けているライザーハンドルは、ハンドルが曲がっている場所をシフターのクランプ部が通れない関係で、僕にとっては幅が広すぎる。だから、ダンシングするのがかなり難しい(というか楽しくない)自転車になってしまっているのだ。これも、もっと幅を詰められるストレートの、それもカーボンのハンドルに換えてしまいたい所だ。
 高度計を横目に、上り続ける。確か1700mくらいまで上るんだったか。正確な標高は分からないが、さっき木賊温泉で『700m上り』という情報があったので、その時の標高から逆算すると、この高度計では1650mまで上がれば頂上のはず。しかしまあ、相変わらずつらい。そういえば、木賊温泉を出た頃に比べると、ずいぶん人が減ってしまった気がする。先ほど、自転車を満載したサポートカーが上っていったので、下位グループは続々と足切られているのだろう。それが背中に迫ってくる気がして、慌てて足の回転数を上げた。
 高度が上がると、木立もまばらになり、楽しい景色が広がってくる。もちろん、そっちに目をやる余裕は無いが。後ろからやってきた二人連れに抜かれるとき、『後200mくらい上りです』と言っておいた。もちろん、自分に言い聞かせるために。最後まで上りきれるように、さらに体力温存モードに退行する。要するに、7km/hの世界から、6km/h、さらには5km/hの世界へと
 この辺りで、少しアップダウン気味になってくる。もちろん上りが圧倒的に多いのだが、少し山肌を縫う観も出てきた。これはきついなあ、という急坂を登りきると、目の前にトンネルが口を開けていた。高度計の読みは1550m。まだまだだな、そう思った。
 トンネルは結構長く、照明の類が一切無い。対向車も皆無なので、自分の走行音が反射して聞こえるだけだ。ふと思いついて、『ヒョ!』などと声を出して、反響を楽しんだりして。『にょ!』じゃないだけ、自制心は残っていたようだな(なにがだ)。
 やがてトンネルを抜けた。さあ、下りだ。えっ、下り? 高度計によれば、少なくとも100m以上の上りが待っているはずだ。しかし、この先はどう見ても下りだ。とどめに、少し先にある駐車スペースに、先行した全員が待っている。あはは、どこかで大きく読み間違えたようだ(この場合は嬉しい方に)。
 自転車を止めて、やっと一休み。これでもう、大きな上りは残ってない。飲み物で喉を潤し、トマトが振舞われていたので齧り付く。南郷トマトなる名産品で、確かに汁気たっぷりで大層美味であった。

南会津を駆け抜けて


 苦しい上りの後は、ご褒美の下りが待っている。下りではEPICは最強だなあ。ほとんどダウンヒルバイクだ。もう少しリアタイヤの空気圧か、リアサスのそれを下げたい気もするが。また、どんな状況でもガツンと利いてくれるVブレーキは頼りになる。逆にジャックナイフが怖いくらいだ。というのを、この後で思い知ることになる。
 『みんなビョーキ』と和田(夫)氏が評するダウンヒルを楽しんだ後は、この辺りの景勝地をいくつかつないで走った。屏風岩という大きな一枚岩が立ちはだかるポイントで小休止。この辺りは、いかにもな渓谷美あふれる場所が散見された。
 ドライブインのような観光設備で長めの休憩を取った時のことだった。先に到着して、目に付いた"ゴマソフト"の文字に惹かれ、さっさとそれを買い求めて、外で味わっていた。ゴマの風味が利いて、これは大層美味だった。やっぱり自転車にはアイスだよな、などと再認識したりして。
 ふと、来た道に目をやると、なぜか隊列の後半が、この施設直前の橋梁の上で止まったきりだ。なにか、問題があったようだ。ようやく動き出し、こちらに到着する。どうやら参加者の一人がコケてしまったようだ。実は、先ほどの橋の上からは、真下を流れる渓谷のおいしい眺めが得られる。だから、多くの人が自転車を止め、一時魅入ってしまうのだ。かく言う僕もそうだった。その人は、前の隊列がそんな風にして停止したとき、反応が遅れてしまい、パニックブレーキ気味にレバーを引いてしまったらしい。Vブレーキがガツンと効いて、ジャックナイフ気味に前転してしまったのだという。肩や手を打ってしまったが、走行には支障無さそう。やっぱり、とっさの時に自制できるよう、十分気をつけないと。効きすぎるブレーキも怖いものだ。
 トラブルがもう一つ。なんと、ゴマソフトのコーンがさっさと切れてしまったとかで、買いそびれた人が出てしまったのだ。たかが30人程度(買い求めた人はもっと少ないだろう)の客を捌ききれなかったとは。ゴマソフト、おいしかったんだけど、売れてないのかな?
 ここから先、時間がますます押してくる。慌しく隊列を組んで、会津の田園風景を走り続けた。やがて、小学校の一角にある、風格ある大樹の傍に来た。これが天然記念物に指定されている、古町の大イチョウだった。もっと樹勢が盛んだった頃は、校庭に大きな影を作っていたそうだ。この前で記念撮影。あまりに大きなイチョウをバックに、なんだか30人の参加者もまばらに見えたとか。
 昼食場所は、久川城址公園の予定だったが、グラウンドが付随した何かの施設での昼食になった。そのグラウンドを見下ろす芝の上で、仕出し弁当の昼食をとった。これはこれで、遠くまで盆地を抱きながら連なる山並みが見渡せて、魅力的なロケーションではある。第1回の時、観音沼のほとりで幕の内弁当をいただいた時にも思ったのだが、この地ではただの弁当さえもおいしいものだ。

きらら温泉に


 食後、あまり時間を取らないで、出発。先ほどまでの山間部とは異なった、盆地の田園風景の中を駆け抜けてゆく。平地では元気に走る我輩であった。しかし、あまりに尻が痛いので、少しの坂でもダンシングで上ってゆく羽目に。決して元気が余っていたわけではなく、ダンシングでもして体力を搾り出さないと、とても走っていられなかったくらいだ。
 大規模林道を下って以降、きらら温泉(なんちゅう名前)までは、長いスノーシェッドを何度も慎重に潜り抜けて行った。大きな雪よけのシェルターで、中は暗い。危険なので、前後を車で走り、女性陣を前に、隊列を組んで走っていった。これはこれで、妙に楽しい時間だった。ただ、途中で隊列が延びすぎる瞬間があって、迷子が出ないかと心配になったのだが。
 やがて、真新しい、大きな施設に到着。ここが最終目的地のきらら温泉だった。なんでも、竹下内閣当時のふるさと創生政策の1億円で掘ったんだとか。温泉ブーム盛んなりし頃だったので、温泉掘削という博打に打って出た自治体は多かったらしいが、的中率が低かったとか。ここは成功した方に入るのだろうか。
 自転車を適当な空きスペースに止め、人間の方は温泉に入る。泉水がしょっぱかったのにはびっくり。還流式で、人体から溶け出した成分が味を醸しているのだろうか(いやまさか)。
 風呂から上がり、みやげ物を漁る。ちょうど名物の南郷トマトが入荷したところだったのだが、バックパックにとても入りそうに無かったので、諦めた。

さらば、南会津


 ここからはマイクロバスで会津田島駅まで移動する。自転車ではとても苦労しそうな道のりを、エンジン付ならあっという間に駆け抜けて行ける。文明の利器なり。しかし、時間があれば、やっぱり自力で走ってみたかった。
 会津田島駅には、既にCコースの参加者が集まっていた。にち氏らとも再会。自転車をホームに入れ、ほっと一息。
 余裕は少ない。程なく、帰りの列車が入線し、再び慌しく自転車を入れる。一息ついた後には、もうお別れだ。ドアが閉まり、地元の人々(全てがボランティアだという)との間に敷居が生まれた。列車が滑り出した。お互いに手を振り、別れを告げた。さらば南会津。来年の第4回まで(もう出る気か)。ちなみに、来年は5/29,30だそうな。
 会津高原駅で、A,Dコースの人員だけ(自転車は会津田島に先行して、既に積み込まれていた)が乗り込んできた。こぐ氏とも再会する。Aコースも、おいしそうなコースだ。次回はAコースにしようかな。
 列車は走り続け、山間の渓谷が、次第に平野に、都会に変わってゆく。旅の終わりが近いのだと実感した。
 気分的にとても憂鬱になっていたので(特に明日以降の仕事の日々を顧みるに)、一人で離れたシートに座って、ぼんやりしていた。時々立っては、別の車両にも顔を出す。春のような狂ったような乗りではない。どうやら、みんな疲れてしまったようだ。春よりはきついコース設定だったからな。
 東京に近づいたところで、めいめいの車両で締めが始まった。と、クリキン氏がやってきて、『全車一斉に関東三本締めやるから、見本を見せてあげて』と頼まれる。やる気で待っていたら、Bコース独自の締めが始まり、それが全車一斉のそれと重なって混乱したため、十分見本を示すにはいたらなかった。次回への反省だ(ってやるのか)。
 とりあえず締めて、北千住、浅草と停車し、各々の乗客を降ろして行った。こぐ氏一行とは北千住でお別れだった。
 浅草で流れ解散となり、とりあえず北口を出て、なんとなくBD-ML人脈を中心に墨田公園に集結した。とりあえず東京まで走り、そこから輪行することにした。東京までは同行することにして、一団について走り出した。が、足が回らない。夕食を取ってなかったので、完全にハンガーノックになっていた。たまらず、途中で『ここで分かれます』と告げ、適当な店でうどんでも食おうと思いつつ走った。が、これという店が見当たらない。いまさら、コンビニでというのもなあ。なんて考えているうちに、再びおのひろき一行に追いついてしまったではないか(爆)。『やあ、奇遇だね』などとぎこちなく挨拶する俺様は、いい笑い者だった。
 東京駅近辺で、やはり輪行するすずき氏ともども、一団から分離した。駅前で輪行準備。やはりMR-4Fの輪行準備はあっという間に終わり、MTBはまだ輪行準備の準備が終わった時点だった。"人に見られていると輪行準備が進まない現象"が発生したのと、疲労からくるイライラが募り、せっかく待っていてくれるすずき氏に「時間が掛かるので先に行ってください!」と言い放ってしまった。すずき氏は一瞬、むっとした顔をしたようだが、寛容に「ではお気をつけて」と別れを告げ、去っていった。ああ、俺はこういうところがダメなんだな。なんか気分的に更に落ち込んで、自転車がさらに重く感じられた。
 半ば崩れ落ちるようにして東海道線の列車に乗り込み、後はボーっと、眠り込まないようにしながら、戸塚到着を待った。戸塚から地下鉄に乗り換え、戸塚で降りて輪行解除する。帰宅は22:00を大きく過ぎた頃だった。疲れ切っていたので、MTBの清掃は後回しにして、とにかく風呂に入る。そして軽い夕食を取ってメールの処理をしたら、もう耐えられないくらいの眠気に襲われた。横になって。あっという間に就眠。
 今回の南会津は、走りという点では充実しきっていたな。