Strange Days

2013年11月04日(月曜日)

松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム

21時25分 美術館 天気:雨

 朝から雨が降り続く。止むこともあるが、概ね路面は水が載っている状態だ。自転車はダメだなあ。
 ということで、予定通りに、鉄路とバスとで近美葉山に向かうことにする。
 鉄道で逗子に出てから、駅前から出る葉山方面のバスに乗る。雨は降ったり止んだりだ。バスは近美葉山館の真ん前に止まるので、雨に悩まされることもなく到着。
 開催中の催事は「松本瑠樹コレクション ユートピアを求めて ポスターに見るロシア・アヴァンギャルドとソヴィエト・モダニズム」展。ファッション関係で財を成した松本氏が収集した、革命期前後のロシア・アヴァンギャルドに流通したポスターに焦点を当てた、ユニークな展覧会。
 ポスターが象徴するものは、ある者が他者へと発するアピールだ。この展覧会では、そのある者が帝政期の愛国者たちから社会変革者、革命期のボルシェビキ、成立した革命政権から、やがて先鋭化してゆく独裁政権中枢*1へと移りゆく流れを追いながら、その創造物にきらめく"見せる技術"と"魅せる意思"とを展覧できるもの、と書くとなんとなく至近弾くらいにはなった気になれる。ともあれ、無知無学であり浮気な一般大衆の興味を惹起し、はっきりしたメッセージを伝えるために、当時の才人たちが知力と技術を振り絞って作り上げたポスター群が、なんともカコイイ。実に厨二的なカコヨサなのだ。庵野監督辺り、絶対好きだよな、こういうの。
 ポスターが華やぐのは、成立直後の革命政権が、娯楽の必要性に気づいて映画産業を再興した際の、主に輸入映画に対して作られたポスター群だ。やたら血腥い戦時共産主義体制では国民の疲弊が深まるばかり、と暫定的に導入された新経済政策の下で、いかにも他人の財布から落とさせようという意図が見え見えの、しかしそうであるだけに極めて洗練された様式のポスターは、見ていて飽きない。
 しかし、やがてポスターが物語るのは、巧妙に隠された権力者の惹句へと収束してゆく。スターリンが自身の神格化を推し進めるに従い、ポスターからは芸術家たちの意図が失われ、権力者たちの意思だけが示されるようになってゆくのである。いかに才能ある者たちを発掘することに長けた独裁政権下とはいえ、表現に強力な枠が科せられてしまっては、やがて停滞へと向かっていったのも宜なるかなである。
 この展覧会は非常に面白かったので、基本的に買わないことにしている*2展覧目録を買った。これはパラパラとめくって読むと、楽しい。
 帰る頃には、雨がやや強まっていた。またバスと鉄道を乗り継いで、帰宅。