Strange Days

2002年08月24日(土曜日)

国宝探訪

23時55分 テレビ

 寝る前にETVの国宝探訪を見た。今夜は高野山は金剛峰寺に集まった、仏教芸術の数々を取り上げる。
 金剛峰寺は、平安時代に空海によって開かれた、密教の根本道場だ。空海は、既に雑密と呼ばれる初期密教と修験道の修業地であった高野山を整備し、自らが日本に持ち込んだ純密の中心地としたのだ。人々の空海への信仰は厚く、その死後も実は生きているという空海信仰まで広まっている。
 そんな金剛峰寺も、空海の死後は荒廃が進んだ時期があった。それを立て直したのは、真言僧ではなく、他宗派の僧侶たちであったという。その証拠の絵画として、釈迦入滅の情景を描いた大幅の絵画が残されている。空海の密教では、信仰の中心は大日如来であり、それが様々な形に具現することで、この世の森羅万象が形作られると説く(超ひものひもみたいなものか)。それなのに、あえて仏陀入滅をテーマとする絵を書かせたのは、他宗派の僧たちも共に信仰できる対象であったからだと思われる。
 空海以降、密教はもっぱら加持祈祷を主として、朝野に数多くの信者を獲得する。その結果、貴族、皇族から数多くの宝物が、金剛峰寺へと収められることになった。今日、それらの宝物の多くが残存しているのは、歴代の真言僧らの政治手腕が優れていたからだといわれている。この事は、空海以降、もはや理論的に発展することが出来ず、加持祈祷による現世利益ばかりに走った真言宗の姿に重ねて、なにか皮肉なものを感じざるを得ない。

2002年08月07日(水曜日)

今夜の動物モノ

23時00分 テレビ

 夏休み中だからか、今夜21:00からのNHK総合は、特別番組っぽい動物モノをやっていた。
 月夜の晩、無数の帆立貝が海面に浮かび上がり、開いた貝殻に風を受けて走る......そんな話を聞いたことがあるだろうか。僕は初耳だったのだが、アイヌの民話や、それを聞き取った江戸時代の本には、そんな話があるそうだ。
 かなり嘘っぽさを感じる帆走帆立貝話だが、ある研究者は十分ありうることではないかという。航空力学を専攻してきたこの研究者は、帆立貝が長距離を移動する必要があるのなら、貝殻の開閉による水流で進むより、風を受けて走ったほうが遥かに省エネルギーであると考えた。
 研究者は、帆立貝について調べるうち、「飛ぶイカ」の存在を知った。スルメイカの近縁種で、図鑑によれば確かにそのように記述されている。研究者は鹿児島県、さらには離島に足を運び、漁師からも裏づけを取った。研究者は、トビイカの外形から、足の間になんらかの膜を張っているはずだと考えた。
 トビイカを求めて連絡船で粘ること二日、ついにトビイカにめぐり合った。後にその映像、さらには入手した現物からその飛行シーケンスを推定し、大筋では正しいと確信する。が、足の膜をどのように実現しているかが分からない。研究者のトビイカに対する研究は、まだ続きそうだ。
 また、沖縄には大潮の干潮時にだけ現れる「海に浮く花」があるとも聞き、現物を確かめに行く。それはもともと陸棲だったものが水棲に移行した水草で、大潮の干潮時、ほんの数ミリほどの白い雄花が浮かび上がり、風に乗って走り回るのだ。
 この雄花が決して風によって横転しないことに興味を抱いた研究者は、水棲生物の研究者の協力を得て、その構造を明らかにした。この雄花は、外側は疎水性の、内側には親水性の表面を持っている。その結果、雄花は内部に水を抱え、外部は水の表面張力を受け、かならず直立するようになっていたのだ。
 本題の帆立貝に関しては、なかなか情報が集まらない。帆立の水揚げがある港の漁協に尋ねても、否定的な意見ばかりだった。しかし、過去のコラムや、民話などからは、帆走する帆立貝の話題を見つけることが出来た。研究者は、いつか必ず帆走する帆立貝を目撃できるのではないかと期待している。