Strange Days

2005年12月04日(日曜日)

NHKスペシャル脳梗塞(こうそく)からの“再生”~免疫学者・多田富雄の闘い~

23時15分 テレビ 天気:雨だなあ

 夜、NHKスペシャルを見る。脳梗塞で半身不随に陥った、免疫学者の生き様。闘病生活とか日常とかではなくて、まさに生き様と形容すべき内容だった。NHKからの取材申し込みのメールに対し、『私の心が衰える前に』取材して欲しいと返答したエピソードが、心に残った。
 この人は、咽喉の一部、舌の感覚が麻痺しているという。金曜日に歯医者に掛かった時、麻酔を使ったのだが、しばらくは唇と歯の感覚が全く無かった。触ってもつねっても、なにも感じることの無い"肉"が付いているという感覚は、異様なものだ。この人は、それを日常的に抱えているわけだ。しかも、舌という重要な部分さえも。結果、言葉を失ってしまったのだが、執念で言語回復訓練を続け、少しだが発声を取り戻している。
 脳梗塞からのリハビリは、発生から半年が勝負だという。それ以降の期間では、回復の望みは薄い。だが、この人は、4年経った今も続けている。僅かずつでも、麻痺した肉体は新しい反応を見せる。それを糧に続けてゆくことは、人間の尊厳を回復する作業だという。
 この人、免疫学者であると同時に、能にも造詣が深く、最近は新作能の製作に打ち込んでいる。能は生者と死者を自由に登場させるのだが、広島の原爆投下に関する能では、まさに原爆に倒れた死者が、亡霊となって現れる。その画面に戦慄した。死後の世界を弄ぶあまり、死の重みを忘れがちな僕たち現代人にとって、能という表現手段は可能性を持っているのではないか。
 僕も病を心配する歳になったからか、思わず最後まで見ちまったぜ。