Strange Days

2006年02月19日(日曜日)

NHKスペシャル『気候大異変』第二夜

23時42分 テレビ 天気:降りそうだな

 これ、昨日今日と二日間連続のシリーズなのだ。
 さて、昨夜は超巨大台風と豪雨、乾燥化といった未来の気象異変にワクワクさせられたわけだが、今夜は更にそれを敷衍してゆく。
 地球シミュレータ*1が描き出す未来の地球気象、その変化の予兆は、既に現れ始めているのではないかと考える学者は多い。
 去年、スペインを中心とする欧州南西部、そして南米はアマゾン川流域において、記録的な旱魃が猛威を揮った。スペインの農業は大打撃を受け、アマゾン川は水位が大きく下がった。しかしそれは、去年だけの現象では無い。むしろ未来の姿を先取りしているのだという指摘がある。
 100年後、これらの地域は乾燥化が進む。特にアマゾン川流域のそれは、砂漠化という形で顕在化するだろう。気温が上がると、なぜ乾燥化が進むのだろう。まず土壌から蒸発する水分が増大する。その分を降雨が補えばいいのだが、降雨はむしろ減ってしまう。アマゾン川では、大西洋で蒸発した水分を含む大気が、西進してアンデス山脈に衝突した結果、雲となって雨をもたらしてきた。ところが大西洋の水温が高くなりすぎ、蒸発量が多くなると、以前は内陸部に進んで雲となっていたのが、大西洋の上空でもう雲を形成してしまう。雲が出来るとそこで雨を落としてしまうので、結果的には乾燥した空気しか内陸部にもたらされなくなるのだ。
 雨が減れば、アマゾン川の流水量は減少する。そしてそれは、密林の消滅、草原化、さらには砂漠化という形に繋がってゆく。今世紀末には、アマゾン川流域は広大なジャングルの代わりに、アラビア半島に匹敵する砂漠が出現するだろう。
 気候が変われば、農業への影響は甚大だ。日本の場合、気温上昇の結果、東日本で収穫されている林檎が生育限界を越えてしまい、北海道や高地でしか収穫できなくなるだろう。また西日本の温暖な地域で収穫されている蜜柑は、その生育地が東進し、内陸部で収穫されるようになるかもしれない。
 主食たる米も大きな影響を受ける。かつて稲が育たぬといわれた*2北海道は、生育適地となり、逆に本土は生産量が減少してゆく。農業に関しては、北海道に集約されてゆくかもしれないのだな。
 これに留まらず、熱帯性の病原害虫の侵入なども懸念される。地球温暖化がもたらす気温の上昇は、冬が寒くなくなってラッキーなどとほざいてはいられないものだ。
 はてさて、どうなることだろう。この程度*3の気温上昇など、実は地球の歴史ではありふれたものらしい。とはいえ、そんなありふれた事象の影には、その度に絶滅を余儀なくされた多数の種が存在しているわけで。そこに人類が加わらないよう、足掻いてゆくのだろうか。人類の在り様に大きなインパクトを与えるだろうこの気候変動、果たしてそれを予防する道はあるのだろうかね。

2006年02月18日(土曜日)

NHKスペシャル『気候大異変』第一夜

23時31分 テレビ 天気:くもり

 今日明日のNHKスペシャルは、久しぶりに面白そうなお話。横浜にある世界屈指*1のスーパーコンピュータ、地球シミュレータは、地球規模のマクロな気象の様子を予測する能力がある。こいつに今後百年間の気候変動因子*2を入力し、今世紀の気候変化の予測を試みた。一度、見学に行ってみたいね。
 この地球シミュレータは、本当にそのようなマクロな気象の変動を予想できるのだろうか。実は、つい最近、地球シミュレータが予測したのではないかと思われる、これまで見られなかった異常気象が発生している。ブラジル南部、ウルグアイとの国境に近い付近には、穏やかな気候に恵まれた、美しい港町が立ち並んでいる。穏やかな温帯性気候であり、激しい風雨を伴う、熱帯性低気圧の類とは、縁遠いと考えられていた。ところが、近年この地を襲った激しい嵐が、実は熱帯性低気圧だったのではないかと考えられている。この近辺を襲った、過去例を見ない激しい風雨のため、甚大な被害がもたらされた。地元の気象台ですら、記録にある限り初めての現象だという。だが、地球シミュレータは、これを予測していたかもしれないという指摘がある。近年の平均気温の上昇を織り込んでシミュレートしたところ、通常は熱帯性低気圧の現れないこの近辺で、それが発生する可能性が示されていたのだ。このことから、地球シミュレータは、図らずも実際の気象変動を予見する能力を持っていると示されたのだ。
 そうなると、今後進むと思われる平均気温の上昇が、こうした激しい熱帯性低気圧を、どれほど大型化、多発化させるのかが気になる。去年、アメリカを襲った超巨大ハリケーン、カトリーヌの威力は記憶に新しい。一般的に、こうした熱帯性低気圧は、水温が高くなればなるほど、発生頻度と強度が上がる。では、今世紀末の気温はどれほどになるのか。
 今世紀末までのCO2の増大傾向は、もっとも楽観的な予測でも700ppmの濃度にまで高まるだろう。その場合、地域によっては、平均4.2度もの上昇になる。それは、一義的には、日本の気象をより南方化させるだろう。東京では、今は11月に紅葉の時期を迎えるのだが、今世紀末には年を越し、正月になって見頃という有様になる。冬は短く、すぐに春がやってくる。桜は3月には咲き、5月には夏そのものの気温になる。夏は9月、10月まで続くだろう。暖かくなるんだからいいじゃないかという声も聞かれそうだが、その分、真夏の酷暑は長引くだろう。
 さて、夏が長くなれば、その分だけ熱帯性低気圧の頻度と強度は増す。なぜならば、海水面の温度が上昇するからだ。去年は記録的な数の台風が本土を襲ったが、それが例年のものになる。さらにカトリーヌを思わせる、強風と高潮を伴った巨大台風も、幾度と無く上陸することになる。日本だけの問題ではない。アメリカにおいても、カトリーヌ級のハリケーンに、しばしば襲われることになるだろう。
 気温上昇がもたらす脅威は、ハリケーンだけではない。より端的に、気温上昇そのものによって、人命が危機に晒されることがある。2003年夏、欧州、特にフランスを襲った熱波は、3万人もの死者を出すに至った。この近辺は、むしろ冷涼な気候の地だ。それゆえ、熱波に対する備えが十分ではなかったのだ。このように、気候の変動は、備えの無い事態をもたらすことにより、多大な被害をもたらすのだ。
 さらに気温上昇は、地球の乾燥化をもたらすと予測されている。日本は九州を除き、今よりも降水量が減る。そうなると、巨大な消費地を抱えた関東は、水の確保に苦慮するようになるだろう。今ですら相模水系はしばしば干上がっているというのに、これはたまらん。ダムの新設ももはや難しい*3。今のような縦割り型水行政は立ち行かなくなるだろう。より遠隔の地と、水を融通できるようにしなければ。
 しかし地球の平均気温が、最大でも6度弱上昇するだけで、この大騒ぎだ。過去の地球では50度もの上昇を記録した時期もあることだが、それが今起こったらどうなることだろう。