Strange Days

2008年08月31日(日曜日)

NHKスペシャル「幻のサメを探せ ~秘境東京海底谷~」

23時51分 テレビ 天気:くもりみたい

 今夜のNHKスペシャルは、久しぶりに興味を引く題材だった。
 ミツクリザメ、というのは存在は知っていたが、謎の多いサメだと聞いていた。深海性のサメ*1は、観察が難しいので謎の多い生き物だ。ところが、東京の目の前、東京湾に棲んでいるというのだ、そのミツクリザメが。
 東京湾の出口、むしろ神奈川県と千葉県の間辺りから、相模湾に向けて、深い谷が刻まれている。”東京海底谷”と呼ばれるその谷は、東京湾の浅い海底から、相模湾の深海へと一気に落ち込んでゆくものだ。そしてそこで、数多くのミツクリザメが捕獲されているのだという。
 ミツクリザメは、過去世界中のあちこちで捕獲されてきたが、その数は30例程度で、しかも陸地を離れた深海での捕獲例ばかりだった。ところが、東京湾の出入り口にあるこの深い谷で、近年実に180例も捕獲されたというのだ。なぜ、これほど多くのミツクリザメが見つかるのだろうか。
 番組では、ミツクリザメを捕らえてきた漁師の協力を得て、実際に水中カメラを設置し、さらに漁師の船にも同行し、ミツクリザメを追い始めた。その結果、深海での直接観測には成功しなかったものの、漁師の捕らえたサメを浅海で観測することに成功したのだ。
 ミツクリザメは、水揚げされた成魚と、若魚とで容貌がやや異なっていた。成魚は口吻部が大きく飛び出しているのだ。両者の構造に違いは無いので、恐らくは成魚の方がサイズ的な問題などで飛び出しやすくなっていたのだろう。実は、この口吻部に、ミツクリザメの最大の特徴がある。
 ミツクリザメの顎部は、頭蓋とさらに一対の骨でつながっており、獲物を捕らえる瞬間に顎部ごと飛び出し、食いつくというより噛み取る感じで獲物を捕らえるのだ。その動きは一瞬で、専門家も驚いていたようだ。構造から想像は出来ても、実際の画像を見て初めて知った事もあったのだろう。
 なぜこのような構造を持っているかというと、基本的にミツクリザメは泳ぐのが下手なサメだからという。獲物を追跡することは難しいので、出会ったら必ず捕食できるよう、特殊な構造を獲得してきたのだろう。
 ミツクリザメに限らず、この東京海底谷には深海性の生物が豊富だ。実は、そこには東京湾周辺に広がる3000万もの人口が関わっている。この巨大な都市群で生成される有機物が東京湾に流れ込むと、この海底谷へと落ちてゆく。その有機物を基礎に海底生物たちのヒエラルキーが維持されているのではないかと思われるのだ。
 ミツクリザメは、この海底谷の入り口、東京湾寄りで産卵し、成魚となると相模湾に移動する生活史を持っているらしい。もしかしたら、日本海溝へと連なる日本近海の深海へと、東京湾産のミツクリザメたちが広がっているのかもしれないな。