4:00に目覚めた。目覚まし掛けてるんだから当然だがな。
起きてすぐ、かなり激しい雨音に気づいた。耳を澄ますと、随分な雨が降り続けているようだ。一瞬、DNSという文字が頭を過った。ぶっちゃけ、『行くの止めようかな……』と思ったのだ。
それでも、外の様子は見ておこうと思い、とりあえず寝床を抜け出して、外に出てみた。やはりかなりの雨。うーん、どうしようかな。この時点では『やっぱり止めるか……』『いやいや、とりあえず様子を見て、途中合流も考えよう』などと逡巡していた。それでも、とりあえず朝食はとっておいた。
天気予報をチェックする。気象庁の予報では、明け方は雨だが、その後はくもり時々雨。雨雲の動きを見ていると、ちょうど南西から北東へ、関東地方南部を過っており、この先は上がりそうに思えた。しかし、駅までは雨の中を走って行かねばならない。それが憂鬱だ。
ともかく身支度をしているうちに、いつの間にか雨音は止んでいた。身支度を終えて外に出ると、なんと雨はきっぱり上がっている。5:00過ぎの空は、雲の切れ間が見る見るうちに大きくなり、晴れ間が広がり始めていた。
地下鉄の駅まで走り、自転車を畳むも、目的の便を1分差で乗り逃がしてしまう。っていうか、明らかに定刻前に通過してる。時計の時刻が遅れていた模様。とほほ。次は15分後で、そこから連鎖的に乗り継ぎに時間が掛かってしまうので、葛西臨海公園着は予定よりも40分ほども遅くなってしまうのだ。ともあれ、本日の隊長のにち氏にメールを入れて、東京駅で自転車を再展開したくなるほど長い京葉線への乗り換え通路を急ぎ、7:15頃に葛西臨海公園に到着した。その頃には全員が揃っていた。
MR-4Fを展開し、物資を買い込んでから、にち氏の号令の下、発進した。めざせ宇都宮。
去年は走りきったのだから、今年は気楽なものである。最初、
旧江戸川沿いのサイクリングロードは狭く、また不条理な接続になっているので嫌だったが、新江戸川に入ってからは快調だった。
寅さん記念館の手前だったか。ふと道端に、途中合流予定のマモル氏が居たような気がした。同行していたにち氏に声を掛けてから引き返すと、果たしてその通りだった。チェーントラブルに対処中だった。やっとこいつを働かせることが出来るのか、とばかりに拙者が取り出したのは、CBあさひのマルチツールだった。これのチェーン切りは、未だに使ったことが無いのだ。しかし、こいつがなんとも使い難い。苦労して、曲げてしまったチェーンを取り除き、再接続すると、走れるようにはなった。まあ、今日は坂無いし、マモル氏の脚力なら問題ないでしょ。
先を急ぐ。27km/h前後で巡航してゆく。この先、数箇所の休憩があるはずなので、30分の遅れぐらいならなんとかなるはずだ。
と、道端で止まっている、リカンベントとアップライトのコンビを発見した。RAY&うっきーの新婚コンビだった。後で聞くと、ちょうどパンク修理をした後だったのだとか。
健脚のRAY女史の先導で、先を急ぐ。巡航速度は30km/hにまで上がる。追い風気味なので、なんとか付いてゆけた。それと、リカンベントであっても、ハイレーサーは風除けになるものだ。途中、練習帰りらしいリトルリーグの連中が道一杯を占拠していたので、蹴散らしてゆく。非難囂々だったが、そもそもオマエらが横に並んで走っているのが悪いのだよ。それにしてもだ、荒川での惨状も見るにつけ、少年野球の監督どもは、どういう教育をしているのだろう。
RAY女史の恐るべし働きにより、我々は2番目の休憩ポイント、コンビニの手前で追いついた。いやあ、今日は昼まで追いつけないかと思ったが。しかし、なんだか今日のクライマックスを、いきなり乗り越えた気分だった。
だが、この日、最初の想定外が我々を襲った。お目当てのコンビニが閉店されていたのだ! なんてこと。補給&トイレポイントを失い、我々はしばし呆然としていた。が、先に進むしかない。次なる休憩ポイント、龍Q館までには、なにかあるだろう。
アクシデントは続いたものの、この日のこの時点では追い風気味。空は予想以上に晴れ、雨の心配は無さそうだった。目を道端にやると
菜の花畑。今日の山を越えきってしまった気分の僕は、このまま気楽な漫遊が続くものと、漠然と信じ始めていた。しかし、我々は忘れていた。与えた分だけ奪ってゆくのが、自然という存在なのだということを。
龍Q館のかなり手前で、道端にコンビニっぽい店を発見した僕らは、ちょっと苦労しつつ車道に降り、その店に向かった。
ヤマザキ系のふつうのコンビニに見えるが、ちょっと不思議なものがあった。店の前に、なぜだかなぜか『ラーメン』の幟が翻っているのだ。一同、「?」。
店に入って、理由が分かった。この店、小さな飲食店を併設しているのだ。インスタントではない、ちゃんとしたラーメンを出すようだ。そういえば、今日の方針の一つに、『決められた昼食時間は設けない』というのがあった。適宜、補給食で凌げということだ。なら、ここでラーメンを食べるのも悪くないな。5分で出せますということだったので、食料を買ってから注文することにする。
おにぎりをゲットして、店内を歩き回っていると、気になるものを発見。かのアラビヤン・焼きソバだ! 日本でも千葉でしか売ってない、謎の袋焼きソバだ。さすがに買ってゆく気にはなれなかったが、なんか惹かれる一品だ。
ラーメンを注文し、店内の喫食スペースでいただいた。ガラス張りの場所だったので、まるで動物園で餌付けされる猿の気分だったがな。ラーメンは、一言で表せば学食のラーメンだ。値段も400円。猛々しい横浜家系ラーメンに慣れた身には、ほのぼのとしたものを感じさせられた。なんとなく贔屓にしたい気分。
ラーメンで補給は十分だ。走り出して最初のうちは、鼻の穴から麺が出そうな感じだったが、それが落ち着いてからは快調だった。
龍Q館、関宿の休憩を挟み、利根川に入った頃から、風に向かってゆく形になってきた。今までとは打って変わり、風に苦しめられる展開になってきた。やはり、与えられた分だけ奪ってゆくのね。しかし、まさかこの後、奪われ放題になろうとは。
渡良瀬遊水地に到着したのは、去年よりも1時間ほども早い時刻だった。一同、これまでの快調を喜びつつ、
少しまったりする。
記念撮影したりしてな。
それにしても、この先は風に苦しめられた。渡良瀬遊水地近辺の土手道を走っていると、激しい横風にしばしば飛ばされそうになった。トレンクルに凧をつないだら飛んだのとちゃうか。
しかし、その先の北上する道は、市街地で風が遮られたり、追い風になったりで、あまり風に苦労することが無かった。R4を進むうち、『宇都宮xxkm』の表示が、ついに目に付くようになって来た。ここまで来れば楽勝だ。そう、みんな信じきっていた。だがもちろん、大自然のお仕置きが、いまや餃子のこと以外念頭に無い腑抜けた自転車集団を待っていたのだった。
残り17km辺りで、
田川サイクリングロードに入った。そもそも、この企画はサイクルスポーツ誌の記事を基にして立案されたものだ。そして記事中、宇都宮までの道は、この田川サイクリングロードを通ることになっていたのだ。なら、行こうじゃないかというわけだ。
ところが、田川に出てからの風が強いこと強いこと。正面からの風に挫けそうになる。これまで、なんとか20km/h平均以上を保っていた一団の進行速度は、ここで遂に17km/h以下にまで落ちてしまった。そして、残距離の減らないこと減らないこと。気分的には、今朝の貸付分を高利で取り立てられているようだった。大自然のお仕置きはきついものだ。
途中の小休止でみんなの顔を見ると、さすがに疲労の色が濃い。でもまあ、あとわずかだ。
残り7kmになった辺りで、みなさんを引っ張って差し上げようと、アタックを掛ける。しばらく走っても着いてこないので、結局は延々と逃げる破目になった。そこでふと気づいた。『ここで待っていても、後続は別の道にそれるかも知れんぞ』と。やや悩みつつ、結局はその後ずっと単独行で、宇都宮駅に先着した。後続も無事に到着。
宴会は、全員無事に完走ということもあり、それはそれは
盛り上がった。色々、目線を入れたい気もするのだが、面倒なので勘弁しろ。
その後、この時刻は湘南新宿ラインでの直帰便が無いため、上野行きで上野まで出て、山手線、東海道線と乗り継いで帰宅した。戸塚からの地下鉄は、なんと終電。帰宅は当然のことながら午前様だった。
これで宇都宮ロングライド企画も締めかなという雰囲気。また別の企画が出てきそうな気配だ。それは楽しみとして、とにかく寝たい。