Strange Days

NHKスペシャル「永平寺/104歳の禅師」

2004年06月12日(土曜日) 23時33分 テレビ 天気:雨らしいが、まだ

 夜、NHKスペシャル「永平寺/104歳の禅師」を見た。あんまり語るような内容はなかったが、一つだけ。この老禅師の語りに満ちる確信が良い。「~だ」と断言する口調には、確かに迷いは感じられない。ある事柄に関して思考することすらやめるという禅の教義に対する疑義はともかく、老僧がそれを確信し、常に実行あるのみという姿勢を貫いてきたであろう事は、その語り口から容易に想像できる。
 思えば、僕たちは悪しき相対主義に毒されるあまり、あらゆることに対して確信を失いつつあるのではないか。たいていの注意深い人は、一流の知識人と目される人々が語るときに、その言葉に添えられる「~と思います」とか「~ではないでしょうか」という確信の存在を疑わせるような一言に気づくだろう。僕はその度に、ああ、確かに相対主義は言論の世界を制圧してしまったのだなと考える。誰一人絶対的な確信をもち得ない言論の世界の現状は、自由度が高い反面、混迷にも溢れた現実世界にはふさわしいものだ。だが、老禅師の確信に満ちた姿勢を見るとき、迷いの無いことが懐かしい。迷いが自由の必然の代償だとすれば、なんとも不自由な世界に生きているとも思えるのだが。


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