Strange Days

NHKスペシャル「海のけもの道」

2002年03月10日(日曜日) 23時00分 テレビ

 今夜のNHKスペシャルは、「海のけもの道」。日本独特の漁法である、定置網の話題。
 定置網は、その名の通り、海中に網を仕掛け、魚を誘い込むという漁法だ。定置網は能登半島に抱かれる富山湾で発達してきた。その発祥は、戦国時代、関が原の合戦の頃にまでさかのぼるという。
 富山湾では、秋冬にかけて、10kg前後の脂の乗ったブリが大量に水揚げされる。その水揚げの多くを担うのが、この定置網なのである。
 定置網は、まず沖合いから岸に向かって伸びる垣網、この垣網で誘導された魚を囲い込む運動場、魚を定置網の奥へと誘導する登り網、そして最終的に魚を水揚げするための箱網で構成されている。最小の空間である箱網の中でさえ、ブリの魚群が十分回遊できるスペースがある。
 垣網は黄色く着色されており、この色を嫌う魚たちは垣網と並走することになる。回遊魚は水深が深いところを好む性質を持っているので、沖合いにある運動場へと誘い込まれる。運動場に入った魚は、次第に定置網の奥へ奥へと誘い込まれ、最後は箱網で水揚げされることになる。ところが、最近の研究では、定置網に入った魚の2割しか捕獲されてないことが判明した。定置網は入った魚を決して逃がさない半密閉型の仕組みではなく、できるだけその滞在時間を長くしようという一種の開放系なのだ。
 定置網は規模が大きいだけに、その設置には多大な時間が掛かる。
 去年、相模湾を漁区とするある漁協が、台風で壊されてしまった定置網の再設置に乗り出した。相模湾の急潮による定置網破壊は、寺田寅吉が研究した事例もあるそうで、結構長く対策が練られてきた。それでも事故が無くならないのは、定置網をあまり頑丈に作ると潮流を妨げ、今度は潮の流れを利用する定置網自身の意味がなくなるからかもしれないと思った。
 この漁協では、まず製網会社に設計を委ね、その設計に沿って実際の設置作業を行っていった。
 まず中心となる2対のロープを張るところから始め、そのロープを位置決めし、しっかり固定し、次の網を張る、という手順で進んでゆく。その所々で、伝統的な手法が生きている。位置決めの際には、陸地の見え方から位置を割り出す山立てという技法が用いられる。400年もの歴史を持つ定置網は、こうした技術の分厚い蓄積に支えられているのだ。


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