Strange Days

遠すぎた橋 二級峡探訪(未遂)

2003年12月30日(火曜日) 00時00分 自転車 天気:快晴が続く

 呉の東、広の真ん中を、黒瀬川という川が流れている。呉市街を流れる二河(にこう、と読む)川より大きな河だ。帝国海軍の軽巡の名にもあった気がしたが、これは気のせいだった。黒瀬川というと、全国区ではむしろ黒潮の別名として有名だろうか。
 この黒瀬川の中流域に、二級峡という景勝地がある。昔の書には『安芸国第一の滝なり』などと言われた二級の滝を始め、落差の大きい険しい地形が生み出す奇観が売りだという。近い場所なのだが、今まで一度も行ったことが無かった。
 最近、呉市街と広を隔てる休山に、連絡トンネルが開通した。これできつい山越えか、狭い海岸沿いに回るかしか無かった広への連絡が、一気に便利になった。今日は、このトンネルを利用して、二級峡に行ってこようと思った。
 昼前、またしてもモリスに立ち寄り、腹ごしらえ。それから、広に向けて走り出した。
 トンネルを抜け、しばらく走ると、黒瀬川にぶつかった。実は、GPSは持ってきていたのだが、その台座を忘れてしまっていた(ダメじゃん。いや、広島に帰ったのでダメじゃのお、というべきか)。まあ、迷いそうな道ではないので、素直に走って行った。
 市街地では、川は大きな堀のようなもので、河川敷は全く無い。その西側の車道を走っていった。平坦で、流量も少なく、走りやすい道だった。途中のコンビニでおやつと水を買っておいた。
 しばらく走ると、西側の車道は途切れる。橋を渡り、東側の車道に移ると、とたんに流量が激増してしまった。ここは、呉の北にある郷原地区への幹線で、バスや産業用車両、自家用車が行きかっている道だ。
 郷原までは結構上るはずだが、ここまではそんな傾斜ではない。しかし、次第に川面を離れ、高度が上がってゆく。
 ある程度走ったところで、川沿いに浄水場らしき施設を見つけた。ここから本格的な上りになる。車と競争しながらの上りではあるが、道幅はあるのでつらくは無い。
 途中で、道は二手に分かれ、2本のトンネルへと導かれるようだ。新しい方のトンネルを選ぶ。というか、普通に走っていたら、こっちにしか向かわなかったのだが。
 この新トンネル。道幅が片側1斜線しかない上、こっちからはかなりの上りになる。トンネルは結構長い。しかも、出入り口近辺には車道分けのポールが立っているのだ。これが大敵。だって、車が自転車の走行車線(壁寄り)にがぶり寄ってくるのだ。反対車線(下り車線側)には歩道があるのだが、こちらには無い。これは失敗。どうしようもなく、10台くらいの車をせき止めながら、向こう側へと走りぬけた。広島の人は酒が入ると荒いが普段はのん気なので、ブーイングも無く待っていてくれたようだ。
 トンネルの向こうは、郷原学びの丘、という地であった。呉大学という大学があるようだ。ん、地図によれば、二級峡はトンネルの脇にあるという。しかし、ここから見えるのは、満々と水をたたえた二級峡ダムだけだ。この下流に二級峡があるのだが、どうやって行けばいいの?
 悩んだときはお茶、という鉄則で(どこの鉄則だ)、火器を出してコーヒーを作った。ぽかぽかと暖かな日差しの下、意外に早く着いたなと思った。呉の中心街から1時間程度だったか。
 コーヒーを飲みながら、郷原の更に奥地、黒瀬の方を眺めていた。瀬戸内沿いのこの辺りには高山は無く、低い丘陵と、一つ抜けたような低山が連なって見えた。いつか、黒瀬、熊野、焼山と回ってみたいものだ。
 どうも川沿いの低い場所に降りねばならないように思えたので、帰路は旧トンネルを通るつもりで脇道に入った。だが、その旧トンネルは封鎖されていた......。すぐ脇に二級峡ダムが見える。どうすれば二級峡へとたどり着けるのだ。
 とりあえず、新トンネルをくぐり、川の方に降りられそうなルートを探した。一応、見つかったことは見つかったが、かなり激しく傾斜した、細い道だ。自転車を押して川から20mくらいの高さの位置まで降り、川上に向かって歩いてみた。行き止まりまで歩いたが、川に下りるルートは無さそうだ。
 細い、しかしコンクリート打ちの道を下り、やがて川沿いの集落へと出た。川上に少し走ると、そこは轟々たる水音が轟き渡る、水力発電所だった。二級峡ダムからの大きな落差を利用して、タービンを回しているのだ。
 発電所の敷地に入り(本当の管理区画は塀で仕切られている)、徒歩で上流に向かった。が、途中で黒瀬川に合流する支流に阻まれた。ずっと上に、二級峡をまたいでいる赤いつり橋が見えた。あそこに行きたいのに......。上からも下からも近づけないとは、どういうこと? 中国自然歩道にも掲載されてたんだけどなあ。ことごとく拒絶されてしまった。もしかしたら、トンネルの更にを通って行くのだろうか。
 今更上り返すのも嫌なので、このまま帰宅することにした。川沿いの長閑な家並みを潜り、再び幹線と合流して、元来た道へと復帰した。帰宅して気づいたのだが、今日もフライケーキを買ってあったんだな。これ、上で食べようと思ってたんだけど。まあいい、おやつに食うか。むしゃむしゃ。なんか、空しい。負け犬気分な俺様であった。
 あ、誕生日でした。こんな日に負け犬気分かい。


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