Strange Days

相模原の陸上装備研究所一般開放日に行ってみた

2016年10月15日(土曜日) 16時54分 思考 天気:晴れ

 今日、相模原にある、防衛装備庁陸上装備研究所の一般開放がある。ぜひ行きたいので、自転車での往復を考えていたが、駐輪環境がよくわからないので、結局鉄道で行くことにした。
 地下鉄で湘南台、小田急で町田、町田から横浜線ですぐの淵野辺に出た。Googleマップをちら見しながらてくてく歩き、陸上装備研究所に難なく到達。受付で記名し、パンフレットを何点かもらった時、「ポケGOのポケストがあります」と言われた。確かに、周辺に数点設定されている。
 さて、場内は高校それくらいの広さのグラウンドに屋外展示、こぢんまりした建屋で屋内展示をやっている。屋内展示の撮影は不可だが、屋外はOKだ。
 手近な展示から、時計回りに見ていった。このでかいカメラを背負ったトラックは、IED*1の検出システムだそうだ。サーモカメラで怪しい熱源を探す*2という方法論のようだ。イラク派遣のように、陸自もIEDの脅威に晒される昨今なので、ぜひとも欲しいのだろう。
 その隣にあった装甲車リアビュー。あまり詳しくなかったのだが、軽量戦闘車両システムという、小松製作所が主担当で開発中の装輪装甲車だという。サイズ的に、84式/87式装輪系統の後継になるのかなと思う。しかし、先のIEDへの対策は、この車両の開発でも大きなテーマになっており、パネルには2つの新技術適用が目論まれているとあった。一つはインホイールモータによるハイブリッド駆動だ。主機はディーゼルだろうが、軸動力ではなく発電を行う。それで、6輪それぞれのホイールに組み込まれたモーターを駆動することで、駆動力を得る形式だ。メリットはいくつかあるようで、一つは駆動軸*3を持たないため、地雷やIEDによる被害を極限できること。また、動力を機械伝達しないために車体高を自由に上下させられるため、同じく地雷やIEDに強く、路外走行性能も確保できるとのことだった。デメリットは動力効率が低くなることだろうが、昨今はハイブリッド車流行のお陰で経験値が高まった分野であり、行けると踏んだんじゃあるまいか。
 この軽量戦闘車両システム、兵員輸送型の他、火力型も設定されている。あれ、ということは84式系統の後継車では、必ずしも無いのか。
 興味深いのは、この火力型がL7系の105mm砲を積んでいること。16式に比べると10t程も軽い*4のに大丈夫か。その答えはデュアルリコイル化にある。要は緩衝器を2段階化したものだ。火砲の反動は物理的に相殺しない限り*5運動量としては変えようがないが、緩衝器によって時間を引き伸ばせる。瞬間的には巨大な力でも、時間成分を引き伸ばせば十分に緩和できる。これをさらに2段階化したことで、緩衝に長い時間を要する代わり、軽量の車体でも扱えるくらいに山を低めた、という感じかな。しかし、この砲は低強度の目標、具体的にはゲリラコマンドを対象としているようだ。ならば平射迫撃砲の類が向いているんじゃないか。そもそも、遮蔽物の向こうの敵を制圧するという、ゲリコマ対策の欠かせない任務に使いにくい。そこで、この火力型では、砲弾の方を工夫しているという。遠隔起爆を可能にし、遮蔽物越しに発射した弾薬が遮蔽物を飛び越した途端に起爆できるようにしたのだ。また、高抵抗型砲弾というのもあるらしい。105mm砲は元々戦車砲なので、たとえ弱装弾を使っても迫撃砲のような曲弾道は作れない。そこで弾薬に高い空気抵抗がかかるように工夫した、というものらしい。いやはや、色々考えるもんだ。
 隣には現用車両。みんな大好き10式戦車だ。実物を見たのは初めてなんだが、想像以上に小さいな。近寄って、ディテールをマジマジと観察。砲塔前側面のモジュラーアーマー。ポコポコ開いている丸い穴は傘立て、ではなくて中に76mm発煙弾投射器がいるのだ。四隅にレーザー検知器が立っている。先の76mm発煙弾は、これと連動して投射されるとも言われる。砲は滑腔砲なので、ライフリングはない。右に見えるのは砲身歪みセンサーの反射鏡で、防盾部から出る光を反射、検出することで、砲身の歪みを高精度で検出できるものだ。その防盾部、砲塔上面には、数多くのセンサーが並んでいる。
 隣には、遠隔操作式の前線工作車が。これは東北大震災時の高危険度域作業や、イラク中東東アフリカでのIED対策の必要性から生まれたもの。車体の四周に設置されたセンサーからの画像で遠隔操作する、いわば巨大なリモコン車両。開発の最終段階なのか、完成度は高そうに見えた。別のコンテナサイズの遠隔操縦ユニットが用意されている。この写真の方はバケットなど作業機器のコントロール用、こちらのハンドル付きが車体用だろう。2セット用意されていて、恐らくは2台同時に操作できるはずだ。
 その隣に地味な車両。目的がわからなかったが、パネルによれば、これがハイブリット駆動系のテストベッドらしい。なんとなく、74式の足回りを再利用したような形状だ。上に乗っているのがリチウムイオン電池らしいが、詳細は聞きそびれた。
 さて屋内展示に。と、その前に、みんな大好き軽装甲機動車がおいてあった。パネル展示でRWSのテスト光景があり、そういうテストベッドに使われている模様。
 屋内展示も色々あったが、一つ記憶に引っかかったのが、断片サンプルに”155mm迫撃砲弾”があったこと。155mm迫撃砲といえば、制式化だけはされた68式というのがあり、テストに使われたのだろう。
 研究所を退去し、来た道を戻って帰宅。楽しかったので、来年も行こう。


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