遂に屋久島に上陸する。
屋久島に向かうフェリーは、まだ暗いうちに出港する。宿を出て、真っ暗な発着場に向かう。
船は貨客船で、どっちかというと人はおまけみたいな位置づけだ。
乗船する。乗客用の区画はそれほど広くはないが、自販機もあって最低限の配慮はされている。この便は鹿児島本土からやってきたので、家族連れやライダーが魚河岸の冷凍マグロのようにゴロゴロ転がるパラダイスだった。僕も冷凍マグロとかして、ゴロゴロの群れに加わる。
一眠りして起きると、船が入港する旨のアナウンスが有り、ライダーがぞろぞろと下ってゆく。自転車も同じタイミングで下船する。
遂に屋久島に上陸する。なんかすごいフレーズだ。超自然。俺は生還できるのだろうか。
今日は屋久島の南端辺りの宿に泊まるので、そこまで反時計回りに走ってゆく。島の9時~12時くらいの象限までは、まだ厳しい峠道は少ない。とはいえ、島なのでアップダウンは多い。
磯の洞窟に安置されたお社が、海人の文化を伺わせる。
道はやはり、時折山間に分け入り、切り立った岬を迂回している。
海と山に囲まれた小天地が好ましい。
小さな隧道をひょいと通り抜け、また別の人界に至る。島の暮らしは、本質的には離散的で、しかし海でつながっている。
昼飯どうしようかなあ。適当な店があればと思うが、果たしてあるかどうかわからない。途中、通過した高台の集落に店を見つけたので、パンをいくつかと
すぐるのビッグカツを買っておいた。すぐるは呉の会社だが、こんなところにまで。
なんとも趣を感じる家があった。三連になった神社建築のような重厚な佇まいがそそる。
永田という集落で、そこそこ店が固まった一角を発見。とりあえず暑かったので、海岸に出てクールダウンする。なんじゃろ、この
歌碑は。
じゃらく亭という店で食事できそうだったので、入る。無事に
まともな食事にありついたぜ。この先に待ち受ける厳しい道程に立ち向かう準備はできたぜ。
宿までは、まだ島を1/3周ほども走らなければならない。ここからが厳しい道行きだ。いよいよ来たぜという感じで、海沿いの道は崖の上を徐々に登ってゆく。しかし、まだまだ余裕はある。
屋久島灯台に立ち寄ってみた。そんな大きくもないが、高台にあるので高さはいらないのだろう。しかし、
灯台からの見晴らしは良い。
道は遂に単車線にまでなり、山中の掘割を縫うように進み始める。絶え間ないアップダウンに、少しずつ消耗してゆく感じだ。
と、動くものがいる。
ヤクザルだ。ヤクでラリってる猿、ではない、もちろん。
ヤクシカもいる。割と人を恐れない奴らだ。なので、観光客が車を止め、間近でカメラを使っていたりする。それでも逃げない。
この辺ではアップダウンの角度が急で、いよいよギリギリの戦いを迫られる有様だった。重い荷物を積んで走り続け、やっと厳しい箇所を抜けた。
その先に待っているのが、ご褒美の
大川の滝。雨量の多い島だけに、滝の水量も豊富だ。山中には無数の滝があるという。
今日の宿は尾之間という集落にある朋という小さな宿。女将さんが気さくに相手をしてくれる宿だ。風呂としては近所の尾之間温泉を勧められるので、貸してくれる入浴セットを片手に行ってみた。街湯という感じの、地域の入浴施設で。疲れた体に温泉が心地よい。
宿で女将さんの話を聞きながら
夕食を取り、小さな部屋で爆睡する。屋久島にはあと1泊するが、どこ行くかな。