今日は下天草をぐるりと回ってやろうじゃないか。そんな壮大な構想を抱いた時期が、拙者にもござった。
さて、昨日も敗北感に苛まれつつ、さして距離を走らないまま宿に到達した。今日はガッツリ走らねば。ツールド国東の行方を占う意味で、今日は下天草一周140kmあまりに挑むことにした。したのだが……。
雨が止まない。昨夜半から降り始めた雨が、朝になっても残っている。止んでも水たまりのある状況では困るなあ。などと思いつつ、外の様子をうかがっては朝寝していた。
雨は9:00過ぎにようやく止み、路面は次第に乾き始めた。これなら出動出来る。
11:00過ぎにやっと宿を後にし、それから下天草を時計回りに走り始めたのだった。だいたい、予定より2~3時間は遅い初動だが、さて。
道は悪くないのだが、意外に交通量が多く、やや難儀する。それと、案外にアップダウンが多いのだ。昨日もそうだったが、島の海沿いという場所は、古い規格のままの道が残されていて、すなわちトンネル一切なしに丘という丘をアップダウンしながら超えさせられることが多いのだ。そのことで、毎度毎度痛い目に会っているのに、ちっとも学習しない俺様である。
ともあれ、ひぃひぃ言わされつつも先を急ぐ。実質、半日しかないからだ。
沿道の風景は、瀬戸内や外界のそれとはひと味違う。まず気づいたのは、
干潟の多さだ。瀬戸内でもところどころに見られるが、天草の場合はそこら中が干潟。内海で波が少なく、また大河がないので三角州の類にまでは発達できず、結局は干潟の段階にとどまる場所が多いのだろう。
ところで、生け簀とおぼしき場所で、
奇妙なものを目撃する。最初、海洋技術研究所による新推進方式のテストかと思ったりしたのだが、どうやらエビの養殖に関係あるらしい。餌を頒布し、新鮮な空気を送り込んでいるのだろうか。
また、湾の細長いのにも驚いた。
この水路みたいなのは、実はずっと奥手から左手へと伸びている湾の一部なのだ。
そうこうしているうちに、南風にもやられてしんどくなってきた。40km程度走り、体感的には後100kmくらいなら走れそうだ。ならば行けるかと思ったが、時間的な制約の方が厳しい。既に14:00前だ。まあ、昼飯を取ってから考えよう。
牛深港に到着。市街地へと向かう。飯を食うところがあるかどうかわからなかったので、目についたコンビニでおにぎりを買ってみた。軽く食べたい。そしてさらに港へと向かって行くと、実はここに海の駅なる物産館の類があることがわかった。ここでなんか食えばよかった。しかし、日の当たる岸壁のベンチで、一応は鳶を警戒しながらのんびりほう張るおにぎりは、大層美味であった。この辺の店で作ってコンビニで並べられているらしいおにぎりセットで一つ驚いたのは、小さな焼いた鰯が入っていたことだ。さすが港町。
この物産館の頭上を、
こんな凶悪なものが通過している。南方の島に掛けられた橋梁なのだが、途中でT字型に脇道を延ばしている。
さて、おにぎりを食べながら考えた結論は、帰路は島の中央を縦断するルートを取るというものだった。縦断とはいえ、やや南寄りを通っていることもあり、距離は50km程度と思われた。このまま海岸沿いに走って行くよりも、ずっと距離は短くできる。問題は必ずあるアップダウンだが、それは実はこのまま島北部の海岸線を通っても結構なアップダウンが予想されるので、大差ないかもしれない。ともかく、距離の短さを取って、こっちにしよう。
走って行くと、まず早浦に出るまでに山岳戦をこなさねばならなかったが、その後は意外に捗って、思ったより早く宿に近づいて行く。基本的に南風を背負ってゆけるからだ。また道も結構よく、ほとんどの区間で広い路側帯を望めた。悪くなったのは、むしろ都市部に近づいてからだ。
途中のダム湖畔で
休憩。このためだけに火器を持ってきていたのだ。温かいコーヒーは染み渡る。
都市部に近づくと、交通量の多さもあってつらくなる。それでも突っ走って、ふと気づいたら、見覚えのある風景の中にあった。宿の近くに出ていた。かくして、意外にあっさりと帰着できた。
夜、外に飯を食いに出る。基本的に客に全く干渉しない宿なので、与えられた鍵を持って、いつ戻っても良い。
なんとなく、がっつり肉を食いたかったので、目についたとんかつ屋に入ってカツ丼と生ビールをやった。ビールは小ジョッキでよかったのだが、なぜか中しかなくて、酒に弱いので酔いが回る回る。宿に帰って、写真整理する暇もなく寝込んでしまった。
明日はどうしようかな、というのは、朝考えることにする。