Strange Days

九州横断ツーリング9日目

2010年05月03日(月曜日) 22時14分 , 自転車 ( 自転車旅行記 ) 天気:快晴

 長かったツーリングの最後を飾るのは、3回目の参加になるツールド国東。今回Aコース160kmだが、3年前にも完走していることもあり、楽観的だったのだが……。


 つくづく天気に恵まれる旅だ。とうとう今日まで降られずに済んだ。今日はツールド国東160kmの試練が待っているので、もちろん好天に恵まれる方がうれしい。日焼け対策は必要だが、宿を出る前に日焼け止めをばっちり塗っておく。
 フロントにてトラベルケースの発送を依頼し、すぐ近くの別府駅まで輪行状態のポケロケと、メッセンジャーバッグに収めた荷物一式とを担いでいった。
 杵築駅で降り、スタート地点の住吉浜までゆっくり走った。こんな早くから消耗しちゃ敵わん。途中で今日の宿になるスカイホテルに寄り、荷物を預けておいた。これで身軽に走れる。
 スタート地点に着いたのは、最初に出走するBコースがスタートする9:00目前だった。すごい人数だな。全部で2500名。Aコースだけで1500名弱に達するエントリー数だ。しかもこの好天。出走率は極めて高かろう。
 まずBコースが出走し、ついでCコース。Aコースは9:30の出走となる。無線タグでの計測なので、出走時間によってタイムに有利不利が大きく出るわけではないはずだ。そもそも、タイムを競い合う催しでもない。だから、mixiで目にした主催者側の意見としては、今年から順位だけでなく、タイムの計測も無しにしようという意見があったようだ。僕も、タイムなら自分で計れるのだし、タグを用意する負担もあるだろうから、別に計測する必要はないと思う。
 さて、9:30になって、ようやくAコースがスタートしたっぽい。Aコースはエントリー番号700を境に2分割されて出走する。僕は前半だ。どこがゲートだったんだろうと思いつつ、いつのまにか国道に出ている。
 さて、今回の作戦は、前半出来るだけがんばり、後半は列車に乗り継ぎながらタイムを稼ぐというものだ。3年前に参加した時、ポケロケよりも重いMR-4Fで、とにもかくにも7.5hで走り切れた。ポケロケなら6h台に乗せられるんじゃねえの?
 やがて坂に掛かる。これから勝負だ。が、案外に足が回ってくれない。疲労が相当たまっているようだ。昨日、意外に走ったからな*1。ああ、バスで住吉浜に行けば良かったか。
 ともかく、いきなり続く坂と格闘し続ける。この、坂が前半にてんこ盛りなコース設定は、どうも最初のうちに集団を分散させて、道路交通へのインパクトを限定させるためのようだ。まあ、最後に坂を登らされるより、ともかく列車を組める平地を走る方がうれしい。
 しかし、ポケロケは坂道を上れる自転車なのだが、その分だけ疲れる気がする。フロントをアウターで頑張ったのがいけないのか、かなり消耗している。この好天を甘く見ていた分もありそうだ。ともあれ、最初の給水地点*2の大分空港近くまで走り、そこから今度は西進する。
 走りつつ、段々と足が回らなくなり始めているのを意識していた。これは、ハンガーノック? 朝食が軽すぎたようだ。しかし持っているのはペットボトル1本。生憎なことに、Aコース前半は延々と山中を走らされるので、沿道に店はおろか、自販機さえも見あたらない。やむなく、ペースを落としてエイド目指して走り続ける。
 今日は結構な事故を目撃した。最初のうち、真っ暗なトンネルを通ることが多かったのだが、ライトの用意もなく突っ込んで、恐怖から停止してしまい、同じくライトの用意のない後続が突っ込むという事故が連発したようだ。また下り坂で飛ばしすぎ、曲がりきれず自爆というケースも。今回は今までになく事故を目撃したのだが、今後の運営に響かないか心配だ。というか、みんな自重しろ。
 最初のエイドは杵築市山中のダム近くだ。こんなに遠かったかなと思うくらい時間をかけて到着し、目についたこんにゃくゼリー、バナナ、飲料水をバクバクやった。あー、飢えが癒される。
 これで元気よく走り出せたかというと、この先ますます体調が悪化して行く。胃が非常にもたれ、足がさらに回らなくなってきたのだ。これは、本格的な危機だ。この分では完走すら危うい。前回だって、ここまでひどくなかった。これはもしかして、こんにゃくゼリーのせいで胃がもたれているのか*3
 うう、気持ち悪いよ。道ばたにてコアダンプさし上げたい気分だった。もうAコースでも相当後ろの方だろう。とうとう、坂でフロントインナーを使い始めた。ってか、さっさと使っていれば、ここまで酷くならなかったかも。
 リタイヤを意識し始めた。どういう手順だっけ。救護車に体調不良を訴えて、人車は別に運ばれるという手順だっけ。そんなことを考えるくらい、ダメダメ状態だった。
 次なるエイドステーションでは、足切りタイムにとっくに掛かっている時間だった。が、Aコース後半組が居るせいで、今回は足切りが緩い。ここでやはりバナナを口に入れ、ともかくエネルギー確保に努めた。といっても、お腹がこの調子ではなあ。
 昼食場所は、このエイドから28kmの地点だという。遠いな。でもまあ、そこまでは走るか。あのお接待攻勢は素晴らしいので。あれを堪能しないと、悔いが残る。逆に言えば、そこでDNFとなっても構わなかった。
 ここで、BD-1に乗っている男性に、ジロジロと眺められる。うーん、と思っていたら、ふと気づいた。メイドさんジャージだ。その男性、メイドさんジャージを着ていたのだ。実は拙者も決戦用と思い定め、鯔背でシックなメイドさんジャージを着ていたのだ。健闘を誓い合って別れる。
 ともかく走り出し、しかしあまりに遅いので列車に乗れず、独りで向かい風の中、淡々と走る状態だった。もうビリッケツ辺りじゃないかな。不安が募る。坂が来る度に、とうとう一休みしてからじゃないと、登る勇気が湧いてこなくなった。救護車に『大丈夫だよね?』と声を掛けられる始末。今年はダメだったな、とここでほぼ諦めた。実際のところ、3年前の実績より、さらに1時間は遅れているのだ。もう足切り確実だ。なんだ、今年は完走できなかったか。
 いやまて、完走は出来るかも、と思い直した。というか、回収されない限りは、自走で住吉浜に戻らなければならないのだ。どのみちそうなら、ともかく走り続けよう。そう思い直して、ともかくも昼食場所を目指して頑張った。そのうちにふと気づいた。あれ、足、回ってねえ?
 昼食場所は98km地点だったか。とにかく過半を相当すぎた地点だった。なんとかたどり着いて、さて昼食をと思ったら、もう追い出しに掛かってしまった。しかし、意外に腹が空いている。とにかくすぐエネルギーになりそうな、豚汁とたこ焼きをせしめた。豚汁がうまい。むさぼるように平らげた。意外に食欲がある。ということは余力があると言うことだ。なら、ともかく完走は出来るだろう。問題は足切りに掛かるかだが……。まあそれは、ダメ元で走ってみよう。昼食場所を出た時刻が、なんと15:00直前。3年前よりも1時間遅い。計算上、残りを27~8km/hで走らなければアウトだ。うーん、無理感が濃厚。
 ともかく、残りはまあまあの平地だ。とはいえ、国東半島の東岸に回りきるまでは、岬の先端をぐるりと登らされる道ばかりだ。やがてそれも減り、ずっと平地を走り続けることになる。ここで、ようやくトレインに乗り始めた。意外にも、まだまだ後続は居る雰囲気だった。まあ1500名もいるんだから。それと、後半スタート組も。
 トレインといっても、あまり速度は上がらない。速いトレインに飛び乗っても、すぐに切れてしまいそうだ。しかし、なぜだか最後に向けて足が急に回り始める。速いトレインに乗って、30km/h近くで走り続けた。時間的には、ア、セ、セウトだ! 微妙な時間だなあ。
 最後の10km以上は、歩道に導かれた。これが意外に道行きが捗り、大分空港が見えてきた頃には、もしかしてギリギリ間に合うかもと言う希望が芽生え始めていた。実走距離が本当に160kmあったらアウトだが、例年数kmは短い。その場合なら間に合いそうだ。
 最後の方は頭の中に、なぜかACCEPTのBound to Failが延々とリピートされる状態。あのゲルマンなだみ声コーラスで奏でられる無闇に荘厳なエンディングをリピートしながら、もはや脚力の全てを燃焼させるつもりで、足を回し続けた。
 やがて住吉浜が見え、北岸のコンクリート路面に導かれる。その頃には妙にハイな気分になっていて、もう走り終えたらエイドの茶を貪り呑もうとしか考えてなかった。
 やがて、到着ゲートを潜り、タグを返却し、引き替えに完走賞を受け取った。時間を見て思わず笑う。7h59m51s。実に、足切りタイムの9秒前のことだった。
 なんとなく呆然として、しかしエイドの茶だけはしっかり飲んで*4、まだまだ到着する同好の士をボーッと眺めていた。ああそうか、足切りタイムは結構緩かったようだ。まあ、8時間切ったのは僥倖だったな。
 疲れ切った体にむち打ち、スカイホテルにチェックインした。広い部屋でボーッと外を眺めていたら、素晴らしい夕陽が沈んで行く。それを見ながら思った。とにかく諦めないで良かった、と。

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