Strange Days

台風一過で観望

2000年07月08日(土曜日) 23時52分 星見 天気:台風一過の晴れ

 台風は朝のうちに去っていった。昼頃に起きだすと、空は台風一過の濃い青空。霞のかかってない、但し書きのついてない青空は本当に久しぶりだ。今夜は絶対観望できる!
 久しぶりにまともに星空を見れそうなので、うきうきしながらGP赤道儀を調節しておいた。三脚を広げて極方向にだいたいあわせ、赤道儀を載せて付属の水準器を見ながら水平を出した。100ED付属の片持ち赤道儀でもやったように、予め脚位置をポイントしておいて、設置作業を簡略化させるつもりだった。
 C8EXを載せ、ファインダーを調整した。どうもまだピントが合ってないようなので、取り外して合わせてみたのだ。しかし僕の目があまりに悪すぎるのか、可動限界まできてもまだいまいち合わない。メガネをかけた状態で左目でならば何とか見えるが、右目は全然ダメだ。メガネを作り直したほうがいいか。
 苦労しながらファインダーの軸併せをする。この伝統的な3点保持は微調整が物凄く大変だ。だいたい、ファインダーそのものが倒立像で、全然直感的じゃないのだ。それでも遠い鉄柱を標的にだいたい合わせた。ふと空を見た。月が出ている。半月だ。これから来週の皆既日食にかけて満ちていくのだろう。「まひるのつき」という歌がみんなの歌であったが(あの映像は怖いものだった)、17:00を過ぎているから夕方の月か。真っ青な青空に白い月がきれいに浮かんでいる。
 スケベ心を出して月をC8EXでのぞいて見た。これが結構きれいに見える。月の表に走る山脈の陰影が、思ったよりくっきりと見える。まあ夜中に見るのとはくっきり加減が違うにせよ。予行演習のつもりでしばらく眺め、それから望遠鏡はそのままにしてDiablo2に興じた。
 20:00ごろ、日が暮れきったのでまたベランダに出た。月は西空にまだ高い。空は所々に雲が出ているが、その間は澄み切っている。最近になく暗い夜空だ。
 まず半月にC8EXを向けた。LV40mmをつけると、視界の中心に月が小ぢんまりと収まっている。この倍率ではかなりシャープに見える。SW18mmに替えてみた。100倍を越えるので、広い見かけ視野に月面の1/3から1/2くらいが入ってくる。これくらいまではムーングラス必須だ。100EDの4倍近い集光力は伊達でなく、ムーングラス無しでは眼を痛めつけそうだ。LV5mmでは400倍になる。これくらいになると200mmのC8EXの限界近いので、像はかなりぼやけて見える。しかし100EDの能力を超えた月のディテールを見ることができる。光軸をしっかり調整すれば、もう少しシャープな像が得られそうだ。
 しばらく月を眺めた後、そろそろ南中しつつあるさそり座に向けた。今夜の空はワイドビノでも星がくっきりと見える透明な夜空だ。シーイングは9/10くらい。台風の名残があるのか、高空の風は少し強いようだ。
 さそり座をファインダーに入れようとして、とんだ苦労をする羽目になった。今回、低高度の星でも見られるように三脚を今までより広げたのだが、その結果、脚が完全に室内に掛かるようになってしまった。そしてGP赤道儀のアーム+C8EXの幅が、ベランダへの開口部ぎりぎりの大きさなのだ。結果、東空にある星をファインダーに捉えようとすると、とんでもなくのぞき難い位置ファインダーが来てしまう。実質、東の空の端から真南近辺(ベランダの真正面から少し左にずれた位置)まではファインダーを使えなくなってしまう。そのため、さそり座が完全に南中するまで待たねばならなかった。ああ、広いベランダが欲しい。
 さそり座が最も高くなった頃にアンタレスを視界に入れてみた。星像はやはり100EDでのそれより太って見える。光軸を調整する絶好の機会だとは思ったが、今夜は観望の方を優先したかったので後回しにした。
 ファインダーをM4が存在する(とされている)辺りに向けてみた。LV40mmでその周辺をうろつく。100EDより暗い星が見えるようで、一見何もない空間に小さな星がポツポツと浮かんでいる。それらの暗い星を目印に、周辺をゆっくりとスイープした。
 ......なにかもやもやしたものが見えている気がする。視野中心では見えないが、より光に鋭敏な視野周辺ではなにかの存在を感じることができる。ファインダーと見比べてみると、それはどうやらM4とみても良さそうな位置にある。確かに、淡い星の集団のように思えなくもない。見間違えかと思い、何度も位置を変えながら眺めてみたが、確かにその位置に淡い天体があることは間違えないようだ。これはM4だ。そう、間違いない。たぶん......。
 あまりの淡さに確信が揺らぎそうになるが、位置的には何度見てもM4に間違えない。ということで、M4との長い戦いもようやく終わりを告げた。思い知ったか、M4め。
 これでC8EXが可視等級に関しては100EDを上回る威力を発揮できることが分かったと思う。しかし今夜のシーイングが良かったから見えたのかもしれない。
 少し雲が出てきたので部屋に引っ込んでしばし涼み、少し経ってベランダに出た。今度はM6、M7を眺めてみた。M7はファインダーでも見えるから、楽に導入できる。ファインダーさえ使えれば(爆)。LV40mmをつけて50倍で除くと、その眺めは本当に見事だ。見かけ視野が少し狭い関係で全体は収まらないが、100EDやMIZAR20*80で見たときよりも背後の微光星は増え、まさに星の大集団という観が強くなる。M7は望遠鏡を買ったらまず見るべき天体だと思う。きっと、その安くはない出費も後悔させないだけの価値があると思う。
 M6はM7よりかなり小ぶりな天体だが、C8EXの高倍率で見ると微光星が数多く見え、M7に劣らない眺めとなる。今夜はシーイングの良さもあって最高だ。
 番号順にM8も眺めてみた。こちらも微光星の集団が迫力ある眺めとなり、隣接する明るい星の小集団も散光をまとって神秘的な眺めとなる。さすがに色を感じることは出来ないが。肉眼でこの眺めなら、デジカメで画像をコンポジットしてやれば、M8の全貌も楽々再現できそうな気がする。
 M22は100EDでは星雲状にしか見えない天体だ。しかしその存在は、MIZAR10*42でも分かるので、導入は楽......なはずだった。しかしまだ東の空にあるので、ファインダーをのぞくのが苦痛でうまく導入できない。少し時間を置いて、ほぼ南中した頃にやっと導入できた。50倍で見るとやはり星雲状に見えるが、100EDに比べてかなりブツブツしてくる。SW18mmで100倍超の倍率をかけると、ようやく細かい星に分解され始める。が、途端に暗くなって見難くなる。この倍率になると光害と迷光で背景とのコントラスト差の無さが響く。しかもM22を導入する頃にベランダ真正面の家が窓を開けて明かりをつけたので、余計迷光が激しくなってしまったのだ。これは仕方ないことだが、長いフードでも自作して工夫するしかなさそうだ。
 明日も出勤なのでそろそろ引き上げようと思い、C8EXを取り外した。そこで100EDでならばどう見えるだろうと気になり、100EDを載せてM7を覗き込んでみた。100EDはバンド式に固定しているので、鏡筒をまわすことでファインダー位置を変えることができる。また鏡筒自身も細いので、C8EXのようにサッシにつっかえる事も無い。取り回しはC8EXよりかなり楽だ。M7の眺めは、やはりかなり見事なものだ。C8EXで見たときよりも微光星の量はやや減るが、低倍率を得やすく、LV40mmではわずか16倍になるだけに実視野が広く取れ、M7の広がり全体を楽々捉えることができる。M8も見事な眺めだ。今夜はシーイングの勝利だったのか。
 結論。良いシーイングは口径に勝る(こともある)。


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