Strange Days

NHKスペシャル『気候大異変』第一夜

2006年02月18日(土曜日) 23時31分 テレビ 天気:くもり

 今日明日のNHKスペシャルは、久しぶりに面白そうなお話。横浜にある世界屈指*1のスーパーコンピュータ、地球シミュレータは、地球規模のマクロな気象の様子を予測する能力がある。こいつに今後百年間の気候変動因子*2を入力し、今世紀の気候変化の予測を試みた。一度、見学に行ってみたいね。
 この地球シミュレータは、本当にそのようなマクロな気象の変動を予想できるのだろうか。実は、つい最近、地球シミュレータが予測したのではないかと思われる、これまで見られなかった異常気象が発生している。ブラジル南部、ウルグアイとの国境に近い付近には、穏やかな気候に恵まれた、美しい港町が立ち並んでいる。穏やかな温帯性気候であり、激しい風雨を伴う、熱帯性低気圧の類とは、縁遠いと考えられていた。ところが、近年この地を襲った激しい嵐が、実は熱帯性低気圧だったのではないかと考えられている。この近辺を襲った、過去例を見ない激しい風雨のため、甚大な被害がもたらされた。地元の気象台ですら、記録にある限り初めての現象だという。だが、地球シミュレータは、これを予測していたかもしれないという指摘がある。近年の平均気温の上昇を織り込んでシミュレートしたところ、通常は熱帯性低気圧の現れないこの近辺で、それが発生する可能性が示されていたのだ。このことから、地球シミュレータは、図らずも実際の気象変動を予見する能力を持っていると示されたのだ。
 そうなると、今後進むと思われる平均気温の上昇が、こうした激しい熱帯性低気圧を、どれほど大型化、多発化させるのかが気になる。去年、アメリカを襲った超巨大ハリケーン、カトリーヌの威力は記憶に新しい。一般的に、こうした熱帯性低気圧は、水温が高くなればなるほど、発生頻度と強度が上がる。では、今世紀末の気温はどれほどになるのか。
 今世紀末までのCO2の増大傾向は、もっとも楽観的な予測でも700ppmの濃度にまで高まるだろう。その場合、地域によっては、平均4.2度もの上昇になる。それは、一義的には、日本の気象をより南方化させるだろう。東京では、今は11月に紅葉の時期を迎えるのだが、今世紀末には年を越し、正月になって見頃という有様になる。冬は短く、すぐに春がやってくる。桜は3月には咲き、5月には夏そのものの気温になる。夏は9月、10月まで続くだろう。暖かくなるんだからいいじゃないかという声も聞かれそうだが、その分、真夏の酷暑は長引くだろう。
 さて、夏が長くなれば、その分だけ熱帯性低気圧の頻度と強度は増す。なぜならば、海水面の温度が上昇するからだ。去年は記録的な数の台風が本土を襲ったが、それが例年のものになる。さらにカトリーヌを思わせる、強風と高潮を伴った巨大台風も、幾度と無く上陸することになる。日本だけの問題ではない。アメリカにおいても、カトリーヌ級のハリケーンに、しばしば襲われることになるだろう。
 気温上昇がもたらす脅威は、ハリケーンだけではない。より端的に、気温上昇そのものによって、人命が危機に晒されることがある。2003年夏、欧州、特にフランスを襲った熱波は、3万人もの死者を出すに至った。この近辺は、むしろ冷涼な気候の地だ。それゆえ、熱波に対する備えが十分ではなかったのだ。このように、気候の変動は、備えの無い事態をもたらすことにより、多大な被害をもたらすのだ。
 さらに気温上昇は、地球の乾燥化をもたらすと予測されている。日本は九州を除き、今よりも降水量が減る。そうなると、巨大な消費地を抱えた関東は、水の確保に苦慮するようになるだろう。今ですら相模水系はしばしば干上がっているというのに、これはたまらん。ダムの新設ももはや難しい*3。今のような縦割り型水行政は立ち行かなくなるだろう。より遠隔の地と、水を融通できるようにしなければ。
 しかし地球の平均気温が、最大でも6度弱上昇するだけで、この大騒ぎだ。過去の地球では50度もの上昇を記録した時期もあることだが、それが今起こったらどうなることだろう。


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