Strange Days

九州北部山岳戦(4日目)

2007年05月01日(火曜日) 23時55分 天気:くもりがち

 4日目の今日は、最後の宿へと中津から国東まで移動する。途中で宇佐神宮に立ち寄り、まあ余裕があれば熊野磨崖仏を訪うくらいの、のんびりした道行きになるはずだったのだが……。


 今日は中津から住吉浜まで走る。40km程度と見込んでいた。事前の検討では、明日の別府訪問と列して、まあ中休みくらいの位置付けのはずだった。
 ホテルは9:00過ぎに出た。足の調子はあまりよくない。やはり、昨日、一昨日の負担が大きかったようだ。
 住吉浜までは、杵築まではR10を走り、それから住吉浜方面に分かれるつもりだった。途中、宇佐神宮に立ち寄る時間を考えても、まあ5時間程度で行けるだろう。
 宇佐までのR10は道も良く、車も激混みでは無かったので、平穏な道行だった。とはいえ、少しの坂でも心拍が上がってしまう。
 途中で別府に向かうバイパスと別れ、宇佐方面に走り続けると、やがて宇佐神宮に到着した。駐輪場に迷ったので、裏手の駐車場を管理しているおばさんに尋ねてみると、その辺に停めていいと言ってくれた。有料駐車場だが、無料で自転車を敷地内に停めさせてくれたのだから、これはありがたい。
 駐車場の近くには屋根つきのゴージャスな橋が見える。ここは横手なのだが、かつてはここが表参道だったらしい。
 不思議なことに、宇佐神宮界隈には、古社につきものの巨木があまり見当たらない。道鏡の失脚の遠因を作るなど、生臭い政争の一端を担ってきたこの社、何度も焼き討ちされたのかもしれない。
 参道の程近くに、なぜだか機関車が保存されている。かつて豊後高田からここ宇佐神宮まで通っていた、宇佐参宮線という鉄道を走っていたのだという。この機関車、国鉄からの払い下げ品だったらしい。なんてことを説明書きの類で学んでいたら、初老の男性から声を掛けられた。なんでも、この機関車のことが新聞記事になったらしい。そのスクラップを見せてもらった。この機関車を撮るためだけに来たのだという。
 参道を進んでゆくと、下宮との分岐点に来る。実は本宮から下宮の裏手に降りてくるのが、正式なルートだ。下宮をすっ飛ばして片参りになりませぬように、と注意書きがあちこちにあって、賽銭の搾り取りを画策している様がうかがえて可笑しい。この時はそんなルートなど預かり知らぬことだったので、先に下宮を参拝してしまった。
 本宮は壮麗なものだが、つい先日に東照宮などという恐ろしい代物を拝んでいたせいか、このあっさり具合が物足りなくさえ感じる。やはり巨木に取り囲まれていないというのが、物足りなさを助長しているように思った。
 宇佐神宮近くの店で適当な昼食を取り、R10を先に進む。しばらく進むと立石峠というプチ峠を越えるのだが、この前後の門司から90km超の辺りが辛かった。路面は悪くなるし、トラックは多いし*1で、疲労もあってのろのろとしか進めなくなった。それでも、さっきの昼食が効いてきた頃、ようやく前に進めるようになってきた。
 山香に入ると、下り基調ということもあり、道行は大いに捗り始める。これなら行けるかなと思った。熊野磨崖仏にだ。本当はホテルに荷物を下ろし、明日に行こうと思っていたのだが、今日行った方が時間的にも余裕が出来る。まだ14:00だ。よし、行っちゃえ。熊野磨崖仏の標識で、東に逸れた。
 すぐに後悔する。これは、10%弱あるだろうという登りが待っていたのだ。アップダウンがある分、アップの角度がきついのだ。しかし、風は追い風だ。神仏に背中を押されている気がした。気がしただけだがな。この状況で追い風をもらっても、実質なんの意味もありゃしない。
 ともあれ、歯を食いしばって、荷物満載のMR-4F改を山上へと引き上げていった。駐車場に滑り込んだ頃には、いささか脱水症状を起こしていた。
 ともかく、磨崖仏だ。意外に観光客は多いようで、定期観光バスも立ち寄るようだ。入山料を200円取られて、磨崖仏のある奥の院の方に登り始めた。
 参道は、乱積みにした石段が目を引くものだった。上の方に行くほど角度は厳しくなる。今は手すりが設けられ、登りやすくなってはいるが、かつては余人を寄せ付けぬ厳しさだったのだろう。昨日の鍾乳洞といい、ここといい、クリート付のサイクリングシューズの敵のような場所ばかり行ってるなあ。
 上り詰めると奥の宮*2だが、その少し手前の断崖に、磨崖仏があった。それらを見上げつつ、ちょっと感慨に耽る拙者であった。去年、いやそれ以前、ツールド国東の事を知った頃から、国東に行くならここは訪おうと考えつづけてきた場所だからだ。
 向かって右手の穏やかな整った顔立ちの仏が大日如来、左手の妙な表情をしている仏が不動明王だ。大日如来の方は、千年以上もよく残ってきたなと思うくらい、整然とした形状を保っている。ちょっと参ったのが、この大日如来像とかつての上司の顔が余りに似ていることだ。
 不動明王は、ふつうは噴怒の相を作っているものだが*3、ここのものはなんだか悪戯っぽいというか、プッと吹きだしたような、愛嬌のある顔立ちをしておられる。なんとも見ていて飽きない仏だ。
 R10まで戻り、杵築市内を経由して住吉浜スカイホテルに投宿するまで、さっきまでの足の重さが嘘のような快調さで突っ走った。去年は果たせなかった目的の一つを果たせた、心の軽さが足回りに反映されたのだろう。と、なんとなくありそうなこと書きつつ、旅の前半戦を終えるのだった。

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