Strange Days

NHKスペシャル

2001年03月03日(土曜日) 22時22分 テレビ

 今日のNHKスペシャルは、北海道のヒグマの生態を追う番組だった。
 北海道の知床半島には、数百等のヒグマが生息していると見られている。ヒグマは立ち上がると2mにもなる大型の哺乳類だ。一般に雑食性と知られ、よく動物を襲うものと考えられがちだが、実際には植物の方を好むようだ。
 番組では、去年生まれた子供と暮らす母子の行動を、1年にわたって追跡していた。子熊に"カムイ"と名付けていたが、確かにアイヌの人たちにとってヒグマは神の使いだったのだな。
 日本のヒグマは、北米の近縁種に較べて、生活圏が圧倒的に狭い。北米種のそれに較べ、たった1%程度にしか過ぎないのだそうだ。その為、別のヒグマと出会う可能性が高い。ヒグマたちのテリトリーははっきり決まっているので、その時は侵入者が退避してゆく。しかしそれぞれのテリトリー外にあるリソースの優先順位は、どうやって決まるのだろう。それは隣接する個体同士の順位で決まる。そのヒエラルキーの母集団が良く分からないが、多分ある個体から見て接触する可能性のある個体の全て、というところなのではないだろうか。猿の群れと異なり、実際には行動範囲の決まっている個体が散在する形になっているわけで、接触する可能性の無い個体同士の順位など、ほぼ無意味(というか決定できない)のではないだろうか。
 ヒグマの子育ては2年間に及ぶ。人間以外の動物の能力は、生得的なものがほとんどを占める。しかしヒグマは生まれつき泳ぐことが出来るわけではなく、母親の行動を真似、訓練することで得られるようだ。また川を遡上してくる鱒を捕る技術も、やはり母親の行動を真似ておぼえるようだ。
 ヒグマたちの順列を決めるのは、簡単にいって強さらしい。擬似的な闘争を経て、概ね平和裏に優劣が定まる。殺しあうようなことは少ないようだ。しかしオスによる子殺しなどもあるそうだ。なんかの本に、人間は動物がやらないことをやって、なおかつタブーを定めるということが書いてあった。近親相姦とか殺人とか、人間はそれらをきっちり実行した上で、かつタブーとして規定しているのが興味深い。それらが生得的に実行されない狼やヒグマと、それらをしばしば実行する人間とでは、どちらが高級な動物なのだろうか。
 秋が近くなると、2年目の小熊には親離れのための試練が待ち構えている。恐らく、母親が発情すると、子供を寄せ付けなくなるのだろう。母熊はカムイを突き放し、オスを追ってテリトリーから去ってしまう。ここからカムイが生き残るために闘争が始まった。この時期、川には鱒が多量に遡上し始めており、重要な蛋白源になっている。ところがカムイは技術的に未熟で、鮭をうまく捕らえることが出来ない。闇雲に追いかけるだけで、効率的な狩が出来ないのだ。しかも遡上し始めたばかりの鱒は元気一杯で、未熟なカムイにはとても手が出ない。カムイは海の漂着物で命を繋いでいた。しかし、やがて鱒が産卵期を迎えると、その動きが鈍くなってくる。そうなって初めて、カムイは母熊がやっていたように鱒の動きをじっくり見定めるという戦術を体得した。彼はようやく鱒を捕らえ、飢えを凌ぐことが出来るようになった。
 やがて懐かしい匂いが近づいてきた。雄熊との交尾を終え、発情期を過ぎた母熊が戻ってきたのだ。母子は久しぶりに身を寄せ合い、また共に暮らすようになった。これが不思議な点で、母子の別離はまだ先のようなのだ。しかし冬が来る頃には、この母子も別々に生きるようになる。


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