Strange Days

歴史ドキュメント「隠された聖徳太子の世界」

2001年11月03日(土曜日) 23時19分 テレビ

 今夜のNHKスペシャル枠は、歴史ドキュメントと称して「隠された聖徳太子の世界」という番組を放映していた。内容的にNHKスペシャルで時々やる歴史ロマンものと変わりなく、なんだって別枠にしたのか不思議だ。
 聖徳太子の死後、妃だった橘大女郎が作らせた、1丁の刺繍がある。天寿国繍帳というその刺繍は、太子没後の1300年もの激動の時代を生き延びてきた、貴重な文物だ。
 もともと、太子が建立した法隆寺に眠っていたものを、鎌倉時代の尼僧信如が発見したものだ。当時、既に痛みが進み、銘文や図案の概略に関しての書写が行われていた。その後、さらに痛みが進み、遂には断片化してしまったため、江戸時代にそれらを縫い合わせたり、足りない部分を継ぎ足したりする補修が行われた。しかし補修は従前の図柄や時代的な背景にまったく無顧慮に行われたため、オリジナルの部分もそれぞれバラバラに継ぎはぎされ、元の図柄が全く分からない有り様になっていた。
 今回、この刺繍を30年も研究してきた早稲田大学の大橋教授を中心に、CGによるオリジナル図案の復元が試みられた。しかし、ほとんど原型を留めていないこの刺繍帳、果たして本当にどこまで再現できるのだろう。
 手がかりは、まず残されたオリジナル部分にある。例えば、同じ幾何学模様を繰り返している細い図案が残されている。これは明らかに帳の四周を囲っていたと考えられる。また飛天、蓮の花が多用されていることから、仏教思想、しかも中国隋代のものに色濃く影響されているものと思われる。また製作の経緯から、原図を描いたのが朝鮮出身の帰化人であったことが分かっており、当地のデザインも影響していると考えるのが自然だ。
 さらに、信如が書き残した概略、特に完全に解読されていた銘文の情報が役に立った。銘文は400文字が100個の亀甲紋に記される形だったとされている。これらの情報を突き合わせることで、最終的にかなり確度の高い復元が可能になった。
 基本的に、寝台などを飾る帳という形態から、同じ図案がほぼ等間隔に散りばめらていたと推定された。帳は二枚一組で、それぞれの中央に最も重要なモチーフが縫いこまれていた。一つは菩薩像、そしてもう一つには蓮華の花から天寿国(極楽)に往生した瞬間の聖徳太子像が、それぞれに縫いこまれていただろう。そしてその周囲には、蓮の花が咲き乱れる池、その蓮華から太子と同じように往生して現れた人々が表現されていたのだろう。
 それにしても、手がかりってのはあるもんだと思った。


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