Strange Days

四国南部ツーリング初日:四国カルスト山岳戦

2008年04月27日(日曜日) 22時57分 , 自転車 ( 自転車旅行記 ) 天気:晴れ

 今日は今次ツーリングでも最難所を越える。四国カルスト高原1200mの登坂だ。
 意外に楽じゃがのと思いつつ登っていたら、最後の方で来ましたよ。


 松山から四国カルストまでは、いくつもの峠を越えてゆかねばならない。全部越えていると、一日で登りきるのは厳しい。そこで、松山から久万高原落出まで出ているJR西日本バスのバス便を使用することにした。これで坂は四国カルストまでのそれだけになる。落出から、四国カルスト地芳峠まではR440で行ける。
 バスは松山6:50出、落出8:27着。どんなバスかと思いきや、ふつうの路線バスだった。国と県から路線維持のための金が出ているようだ。意外に乗客が多かったが、座席数の4割程度というところ。自転車は、後乗り前降りの後ろ扉近辺、座席が単座になっている辺りに置いた。3台くらいなら余裕で載りそうだ。
 バスに揺られること1時間半、これを自力で越えると死んでたろうなと思えるような峠を越え、まずは久万高原町に入る。役場の近くにある折り返し点で長めの停留が入る。ここで、僕を除く全ての乗客が降りてしまった。運転手も手洗い所に行ってしまう。この先はおまけ扱いのようだ。久万高原から先ならば、自転車を10台くらい持ち込んでも余裕だろう。なんせ、貸切状態なんだから。
 バスはおいしそうな渓谷沿いの道を走り続け、やがて終点の落出に到着した。山間の小集落と言うところで、この辺りにしてはちょっとだけ平地が多いためだろうか、役場の支所や民宿の類が見えている。落出大橋の袂のバス停で降りると、待合所の手洗いを借りてから、自転車を組み立てた。頼むぜ、MR-4F改。
 まずはR440に合流しなければならない。R440は、ずっと高所のトンネルを通過しているので、そこまでは素敵なうねうね道を登ってゆかねばならない。しかしこの道は、意外に楽に登って行ける。交通量が皆無なので、マイペースで登ってゆけるのだ。意識的にゆっくりと登ってゆく。坂がゆるくなる、逆にきつくなるところで、より力を出したい誘惑に駆られるが、そこはぐっとこらえ、緩くなれば力を抜き、きつくなったら速度の方を落として、ゆるゆると登っていった。今日は坂と戦うのは止めようと思っていた。なにせ、ツーリングでは毎日結構な距離を走るのだし、今日だって1200mほどの高度を獲得しなければならないのだ。エスケープルートは無い。代わりに、時間的余裕は十分なはずだ。
 意外に楽々とR440に合流でき、後は補給だけが問題だなと思い始めた。一気にどーんとモノを食い物すると苦しむので、適当に細々としたものを補給して行こうと考えていた。そんなところに気になる掲示が。道の脇に何度か『焼き餅』という文字が見えたのだ。どうやら、なんかの販売所がある模様。でも、全然見当たらないんですけど……。
 そんなことを考えつつ数km進んだところで、道の脇に怪しい広場を発見。地元の物産の販売所とトイレ、昼寝に良さそうな広場がセットで待っていた。その販売所で焼き餅を売っているらしい。どんな焼き餅だろう。販売所を覗くと、地物の野菜類の他、脇にある炊事場でご婦人二人が立ち働いており、うまそうな炊き込みご飯などの他、問題の焼き餅が売られていた。でも5個パックだ。それは多すぎるな。生産直売だし大丈夫だろうと思い、ばら売りをお願いしたらいいですよと小分けしてくれた。炊き込みご飯と焼き餅2個を買い、広場のベンチで早めの昼食にした。炊き込みご飯は普通においしかった。焼き餅は蓬餅を炙ったもので、中のあんこが甘くて癒される。焼き加減もいい。ベンチから目を上げると、川向こうの山肌に萌黄色の木々が映えて、目にも嬉しい眺めだ。これはご馳走でございました。
 再び走り出す。この先、西谷辺りまでは町営バスが通っている。そのバス停を目当てに走った。「ごうかく」停留所は、たかが停留所なのになぜか立派過ぎて笑えるくらいだった。いかに四国とはいえ、冬は雪が積もることもあるのだろう。やや平坦になり、わずかに下りもある区間だ。まあ、後で取り返されるんだろうけど。R440もこの辺りから1車線になることがあり、とても国道とは思えない道になってくる。眼下の渓谷の眺めが美しい。
 次第に高度が上がり、『地芳峠』の看板が頻出するようになって来た。『姫鶴荘8km』の看板を過ぎた辺りから、いよいよ斜度がきつくなってきた。常時10%越えだ。やはり最後で取り返されたか。インナー26T、ロー27Tという、凶悪なギアを駆使して、斜面をゆっくり登っていった。木陰が多く、それほどつらくは無かった。この辺もいまいちな道が続く。
 きつい坂を上り続け、ふと目前の看板に目をやったら、そこが地芳峠だった。峠という割りに周囲の見晴らしがまったく無いので、なんだか達成感が湧かない。でもまあ、前半戦は終わった。後は四国カルストを越えてゆくだけだ。でも、姫鶴平方面への道、物凄い傾斜なんですけど……。これは15%近くあるんじゃなかろうか。まあ、ここまで来たら越えるだけですぜ、旦那。
 どえらい細い、きつい道を、車の通過に気をつけながら登りきると、いきなり視界が開ける。そこが四国カルストの西端、姫鶴平だった。この辺も愛媛県上浮穴郡久万高原町なんだな。今日はどこまで走っても久万高原な気分だ。堀晃の短編に『銀河系を背に飛行し続けても、光行差によって拡大され、赤方偏移によって赤黒くなった銀河系が追いすがってくる』ってアイデアがあったが、それに近い気分だ。高知は何処にありや?
 姫鶴荘に自転車を止め、昼食を取ることにした。拙者、こういう高負荷ツーリングの時には、なぜか肉うどんかカツ丼を猛烈に食いたくなるのである。今日は肉うどんの番らしい。肉うどんを啜りながら、iPAQ212でウェブをチェックした。さすがにWillcom回線は使用不可だ。DoCoMoも圏外。だがauはアンテナが立っている。凄いな、au。執念を感じるぜ。W05KでGmail他をチェックする。こんな場所でもGmailを使えるんだから、もうローカルMUAなんて要らないかもしれないと思った。もっとも、あまりにアンテナが遠いからか、あるいは単に使用者が多くて輻輳しているのか、なかなか思うようにはアクセスできないものだったが。
 姫鶴荘の周辺を散歩する。少し行ったところから姫鶴荘方面を振り向いて一枚。姫鶴荘辺りから、やっとカルスト高原っぽい眺めになってきた。これで日本3大カルストを全て登ったわけだが、一番見所が多かったのが秋吉台、次いで平尾台という感想だ。ここ四国カルストは、鍾乳洞が整備されてないのが痛いところだ。しかし、眺めは最高だ。なにせ、ここだけは1000m超級の山岳地帯なんだから。
 それにしてもだ、オートバイの多いこと多いこと。逆に自転車は1台も居ない。まだGWが始まったばかり、どころか世間様では始まってもいないというのが大きいのだろう。しかしオートバイがこんなに多いのにな。
 ともあれ、独り孤独に今夜の宿、天狗荘を目指す。天狗荘のある天狗平は四国カルストの東端にある。時間は13:30。まったくもって余裕です。しかし、この五段城を越える道、やはりきつい傾斜だ。ところどころに展望台があるが、SPDなサイクリングシューズで行く気にはなれない遠さだ。道からもかなりの展望が開けているので、それで満足することにしよう。
 最高所の展望台を過ぎ、一度トンネルに入る。短いが、道が悪いのでちょっと怖い。ここでライトが点灯しないのに気づいたが、すぐにトンネルを出るので、宿で修理することにした。
 宿には14:00過ぎに着いてしまいそうだったので、それまでは宿の前にある四国カルスト学習館を見学させていただく。四国カルストの自然科学的知識を得られる場所だ。管理人が撮った四季折々の写真が美しい。
 宿には15:00過ぎにチェックインした。早めに入って近所を散策しようと思っていたのだ。が、和室の客室に入り、ちょっと寝転んでいたら、いきなり夕刻になっている。お、俺は時間跳躍の技を手に入れた!*1 ちょっと悲しいので、窓から夕景をじっくり眺めた。この宿、建物の中を高知、愛媛両県の県境が走っている。いつの間にか久万高原の呪いを脱していたようだ。夕食、風呂、洗濯*2を済ませてから、早々に布団に入った。まあ、この旅で一番きつい登りは越えた。
 本日の走行距離は35km強。しかし獲得標高は1400mを越えただろう。

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