Strange Days

萩から仙崎へ

2015年08月19日(水曜日) 22時04分 , 自転車 ( 自転車旅行記 ) 天気:くもり時々ポツリ

 今日は萩から仙崎へと自走する。真夏のことだし、素直に輪行しようとも考えていたのだが、なにせ山陰本線は便数がものすごく少ない。特に、萩を含む長門市~東萩間は、交通機関としての意義を問われるレベルだ。なら、自走するかとなった。
 宿を後にし、一旦萩市街を経由し、西へと抜ける。後はR64を走るだけだ。しかし、このR64が、なかなか食わせ物だ。延々と山陰本線に沿って走るかと思えば、蛇行して山に海に向かったり、バイパスに別れたり、終いには三隅辺りで北浦街道へと乗り換えることになったり。これは、GPSマップの使いでがありそうな道だ。
 ともあれ、まずは山陰本線に沿って走る。萩の西隣、玉江駅を通過。道は、すぐに「家並みなぞ見飽きたであろう?」と言わんばかりに、速攻で山へと吸い込まれてゆく。というのも、この辺の海側は崖地で、家屋の立錐する余地も、道を通すそれも無いからだ。
 車のほとんど通らない、寂しいが走りやすい道を、淡々と走ってゆく。寂しいが、楽しい。楽しいが、坂はやはり嫌だ。これが、旅というもの。
 時々、山陰本線を過るので、ちょっと止まっては車両通過を待ってみた。しかし、元々本数の少ない山陰本線で、そんな都合よく通りがかったりはしない。
 海の眺めは良い。実に海の匂いのする道だった。
 山間の小盆地を抜け、よほど車が通らないんだろうなと思う荒れた山道を越えたところで、なんと都合よく車両が近づいてきた。止まって、カメラを向ける。Finepix S1は良いカメラだが、一大欠点はRawで撮ると連射できないこと。置きピンで狙った。少し早かったが、まあ仕方ない。
 三隅くらいまでは、大体は海を見ながら走る山道も細くて、これ本当に国道なんだよなと訝しみながら走る。
 昼食には早いが、道の駅三見が目に入ったので、そこまでへいこら登って昼食に。眼下に灰色の海が見え、なかなかの景勝。
 この辺りから、海岸に集落が目立ち始める。集落、田畑、高架の対比が良い。
 山道を抜け、三隅は三隅八幡宮の辺りで、今度は北浦街道に乗り換える。ここは厳然たる幹線道路で、沿線には家屋も多く、コンビニもある。眺めは詰まらないにしても、安心感はグッと増す。
 この公民館のような建物は、なんと長門三隅駅の駅舎だ。
 淡々と走り続け、海沿いに仙崎へと向かう。海側のトンネルを、さらに海側の小道でバイパスすると、トンネルの向こうがみすゞ公園という小公園になっているのに気づいた。トンネルの出口にそって、山の上までこうらしい。
 まずは、宿に荷物を置きたい。青海島に渡るべく、みすゞ通りも仙崎駅もすっ飛ばし、青海大橋に向かった。これはまた、エラい橋だ。船を通すために、かなりの高度まで持ち上げているのだ。歩道が広いのが救いか。
 橋を渡り、西に向かった港辺りまでは、家屋も商店も多い。しかし、宿のある青海湖の辺りまで来ると、人家はまばらだ。
 宿に着いたが、チェックイン可能時間までは、まだまだ時間があるので、周辺をうろつくことにする。宿から内陸に向かうと、意外に田畑があった。青海湖の周辺は、この島ではもっとも平地に恵まれた区画のようだ。周辺には休憩所などの設備がそれなりに整備されていたが、それらが活用されている気配はなかった。要するに、寂れていた。買い物できるのは、この自販機くらいだ。と思ったら、こんなところにもみすゞ物件が整備されている。誰が見に来るのだろう*1
 時間が有り余っているので、仙崎に戻り、駅を訪う。ここから伸びるみすゞ通りが、仙崎の大きな観光物件のはずだが、賑わっているふうには見えない。でもまあ、名うての寂しさハンターだった金子みすゞの故地には、あるいはふさわしいのかもしれない。
 チェックイン時間になったので、宿でチェックインして荷物を置き、また周辺の散策に向かう。宿は青海湖のほど近くに立つ、青海島シーサイドホテル。古い建物らしく、埃っぽい臭いがつきまとったが、意外なことにソフトバンクモバイル*2がちゃんと入ったので、助かった。
 身軽になったので、青海島観光だ。島の先端に走る。アップダウンが多く、天気も今一つだが、ガシガシ走るぜ。
 一山越えた漁港に、夏みかんの原木があるというので見に行った。案内板にそって向かうと、畑にあるのを発見。と思ったら、振り返った民家の庭先にあるのが原木だとか。ちょうど、このお家のおばさんが畑仕事をしていらしたので、話を伺う。なんでも、何処からとも無く流れ着いた実から生えたのが、この原木だったらしい。畑に立っているのは、それを農林試験所でクローニングしたものだとか。夏みかんの正体が未だにわからないというのは、一般的な果物なのに不思議だな。
 おばさんに礼を言って、先を急ぐ。プチ峠を越え、いくつかの集落を経て、島の先端は通漁港に到着する。ここに、かの鯨墓がある。その鯨墓の近所にある、くじら資料館に入ってみた。五島だったかで見た、でっかいそれと異なり、小ぢんまりしたもの。しかし、鯨一頭で七浦賑わうと言われていたほどで、大層な羽振りだったということだ。
 民家の間の、心細くなるような案内標識に従って山に向かうと、かの鯨墓があった。これは、鯨の胎児の墓であるという説を知っていたが、鯨そのものの墓であるという説もあるようだ。今回の旅は、これを見たかったので立案したものだ。
 ふと、俊敏な姿が、墓の裏手から近所の民家の屋根へと走る。なんと、ニホンザルだ! こんな所におるんか。まあ、東北の山に比べれば、よほど過ごしやすいのだろうが。
 くじら資料館を後にし、宿まで戻る。途中、小島に魅力的な小社を見つけるが、渡りようがない。
 宿に戻る前に、買い物しておこう。宿には夕食が無い。また仙崎へと渡り、街中のポプラでポプ弁を買う。橋から気になる場所が見えていたので、寄ってみた。弁天島といい、ここが埋め立てられる前は、やはり海上の小神社を抱える島だったらしい。橋を渡って、青海島側の公園で夕陽を待ったが、なんと雨雲が湧いてきて、よろしく無かった。
 宿に戻り、今日の復習と、明日の予習をしていると、雨が落ち始めた。この旅は、結構雨にやられるんじゃなかろうか。


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