2日目、利尻の周回に向かうも、出迎えたのは雨であった。
朝、波音を聞きながら目覚める。
朝日が、静かに上り始めていた。
朝食は、おかずを各自で好きなだけ取る、バイキングスタイル。朝から新鮮な魚介責めじゃなかったのは、歓迎だ。
さて出かけるぞ、という時になって、雨がぱらつき始めた。宿を後にし、港から市街地の高所に抜ける頃には、しっかり路面が濡れ始めている。いい天気じゃないが、寒くも暑くもないので、走るのは大丈夫だろう。
こば氏によれば、利尻富士町の山寄りから、自転車道路が伸びているらしい。自転車道路か、実際には車道と共用か、歩道に毛が生えたようなのだろうな、とその時には舐めた感想しか抱かなかった。
利尻山神社が目に入ったので、参詣する。北辺の神社らしく、本殿は雪の守りが堅い。
サイクリングロードへは、利尻富士温泉の南へとアクセスする。思いの外に本格的な、独立型自転車道だ。車道と全く並走していない道路が、結構な長さ走っている。途中、
湾内大橋という、わざわざこの道のために高所に掛けられた橋を渡る。ここだけではなくて、高所を走る道故に、幾つもの橋が掛けられている。この道のために。なんと申しますが、舐めてスマンという気持ちでいっぱいだ。
しかし、雨なのだ。湾内大橋に入ると、高所の吹きっ晒し故、風も加わる。こりゃ大変だ。
しかし、なんと雨は山の上にしか降ってないようだ。ふと港の方を見ると、
虹が出ている。海上に向かうと、晴れ間が覗いているようなのだ。風雨に晒され、かえってきれいになった気がする
BD-1を撮る。
橋を渡り切ると、休憩所がある。これが、自販機の類も、手洗いもない、純粋休憩所というべきところ。しばらく休憩する。他にやること無いもんな。
高い場所故に、眺めはきっと良いのだろう。が、霧がかかっていて、なかなか視界が開けない。海側の視界がひらけ、立地の良さの片鱗を感じた。
いい眺めだ。
湾内大橋ほどではない
橋を、幾つか
渡ると、いつしか海沿いの道路へと近づく。
姫沼という景勝地に分岐していたので、立ち寄ってみた。鳥が多そうだな、雨が降ってなければだが。鳥見にはいい場所なんだろう。
道は、段々と海沿いに近づいてゆく。雨も上がりそうな気配だ。雨具を脱いだり、またパラつかれて着込んだりしながら、走ってゆく。
野塚の展望台に立ち寄るため、海に降りた。北東に面しているのだが、本土と利尻港方面の展望はあるものの、なにを見るために設けたのか分からん展望台だ。
ここで遂に、自転車道は車道に吸収される。海沿いを走ってゆく。今までと同じく、アップダウンがゆるゆると続く。
この辺は、なにかテトラポットの実験場めいて、実に様々なそれが設置されている。この巨神兵いや使徒めいた
テトラポットは、他では見たことがない。
しばらく走ると、目立つ灯台があったので、接近してみた。
石崎灯台。周りは草地なので、実に撮りやすい。
車道で見つけたこの
設置物を見るに、利尻十六景という催事があるらしい。
ここらで飯にしたいねと、鬼脇という大きめの集落で、食事場所を探してウロウロする。ジモティらしき人々が消える店を見て、あそこなら間違いないと、突入する。味彩川一というその店で、拙者は
カツ丼を食らう。いやのう、海鮮に別に執着はないからのう。
カツ丼を入れてエンジンが吹け上がってきた、ということもなく、相変わらずのんべんだらりと走ってゆく。さっきの姫沼よりは観光向けに拓けている、
オタドマリ沼に立ち寄る。空が灰色なのは残念。
メタショウロ沼という別の沼にも立ち寄りつつ、ここは南端に立つ名もない
灯台にも足を伸ばす。
仙法志御崎公園に立つこの
碑は、なんの碑だっけ? でもこの公園の売りは、ゴマフアザラシが岩場に住み着いていることなんだそうな。そういえば、この辺の海を走りながら、なんか沖の岩場に謎の生物が居るなあと思ってたんだ。
ちょっと日が出始めて、暑くなってきた。そんなタイミングで、
湧水に行き当たる。麗峰湧水というこの水は、火山島らしく地下湧水に恵まれたこの島の、数多い湧水の一つらしい。
火山島故に、海岸線の造形は、バラエティに飛んでいる。砂浜こそ少ないが、数多い磯は、地学萌の人にはたまらないだろう。そんな奇岩の一つが信仰の対象になったのが、
北のいつくしま弁天宮。しばしば荒波に苦しめられてきた船乗りたちが、ここに昔から信仰の対象としてあった龍神の岩の上に、弁財天の小社を立てたものだ。小さなお社だが、ロケーションと良い佇まいといい、ここに来れて良かったと思わせるものがある。
横から見るとこうで、新しい橋は近年架け替えられたものだ。
ようやく、島の北東に掛かってきたが、日が大分傾いてきていた。今日は宿に連泊なので、島を完全に一周しなければならない。が、夕食に間に合えば良いのだ。
岩場を横目に走り続ける。
利尻の北の果て、利尻富士町役場に近づいた辺りで、原野の真ん中にあるような、ちょっとした展望台にも登る。ちょうど、
夕日が眩しい時刻だ。そう、晴れたのだ、今になって。
宿で
夕食を取り、ぐったりしながら就眠。今日は疲れたが、素晴らしい旅だった。雨の中を除けばな。