Strange Days

利尻礼文ツーリング3日目

2015年09月13日(日曜日) 22時40分 自転車 ( 自転車旅行記 ) 天気:曇りのち晴れ

 遂に礼文に渡る。周回道路がある利尻と違い、ここは縦走しか出来ないので、美味しくサイクリングするには工夫が必要だ。


 朝食後、宿を後にする頃までは、雨が残っていた。今日も憂鬱な日になるかなあ、と思いきや、雨そのものは上がり、天候も次第に回復してゆく。どうも、山から離れると、雨も離れるみたいだな。
 今日は、フェリーで礼文に渡り、礼文島の縦走をするつもりだ。しかし、宿がある南端の香深から、北端の岬まで、真っ正直に自走で往復するのは辛いし、時間的にも間に合わない。そこで、岬へのバスで輪行してしまうという作戦だった。
 フェリーまで時間があったので、港を見下ろすペシ岬へと登ってみた。驚いたことに、会津藩士の墓がある。幕末、ロシア船舶の出没に、北方の守りが問題になってきた頃に、幕府の命で警護についた会津藩士のことだ。雪深い会津育ちだったとはいえ、更に北の、しかも海の騒がしい島での警備は堪えたのか、この地で病死した人々だった。今も島の人々の手で、きれいに清掃されている。
 岬からの眺めは素晴らしいものなのだろうが、海の彼方には覆いが掛かったような雲が掛かり、遠望を遮っている。しかし、ぽつんと海に対峙する小灯台は、毅然とした佇まいが素晴らしい。
 フェリーで礼文に渡る。礼文は縦に長く、大きな集落は南方、香深村にある。カフカ村……どんな不条理が俺たちを待ち受けているのか。
 まずは、今日の宿に荷物を置きに向かう。これが、結構な、いや凄い坂の上。経路次第では少し楽になりそうだったが、生憎最悪のコースを取ってしまった。大丈夫さ、歩いたから*1
 宿はうーにーというペンションで、あてがわれた部屋は2Fの正面。坂が見えて、ちょっと雰囲気が良いぞ。
 身軽になってから、町へと下り、バスで北に向かう。家並みがあるのは香深の辺りだけで、その北は香深井、船泊に大きな集落があるほかは、小集落がポツポツとあるくらい。ここのナイトランは、色んな意味でクルものがありそう。
 バスは、最北端のスコトン岬まで直行する。トイレが最北端仕様だ!*2
 土産物屋兼食堂があり、食うには困らなさそう。
 岬へと抜ける。視界の中央を占めるのは、沖合の海驢島。今でもトド猟は行われているそうだ。灯台が1基あり、岩礁の多いこの海域の安全を守っている。
 ところで、展望台に抜ける道の脇に看板が出ていて、'民宿スコトン岬'と掲出されている。崖の下に、確かに道が伸びている。なに、とばかりに覗き込むと、本当にあるよ、民宿だ! ここも止まってみたいな。夜は波の音だけなんだろう。
 記念の写真を撮ってから、土産物兼食堂でホッケ定食。ホッケがうまい。高かったけどな。でも質の良いホッケだ。
 宿までは、当然自走で戻るつもりだ。そろそろと岬から、岬の手前にある集落へと折り返す。この集落の建物は、強風に晒され続けるためか、雰囲気がよろしい。自然の猛威の中で朽ちてゆく人工物の儚さを、安全な都市部に住む我々に教えてくれるようだ。バス停も北辺仕様。
 厳しい北の海に対峙する島故に、港には大きな遮風板が立っている。
 さて、礼文も火山島だ。ということは、地学萌向きの地勢であるということで、岩場を覗くと柱状節理が目につく。冷えるのが早かったのか、割と細かい節理だ。
 船泊の鎮守、礼文神社。高台にあり、港の守り神として招請されたようだ。近所には久種湖という湖があって、なにやら催しをやっていた気配はあったが、残念ながら終了直後。
 礼文の北は、船泊を挟んだ二股になっており*3、もう一方の金田岬は地味な眺め。しかし、ここには礼文空港があるのだ。高台にな。よし、行ってみよう。
 高台にある礼文空港まで、ヘコヘコと登ってゆく。途中、金属製の枠を組み合わせたなにかが置かれた作業現場を通りがかる。この形は、そう、あのテトラポット。考えてみると当たり前だが、設置場所に近い現地で生産されているのだな。
 もう少し登った場所に、礼文空港のターミナルがある。小さな空港で、滑走路長は800mしかない。既に定期航路は廃止され、チャーター便がたまに飛ぶくらいのようだ。
 この近くには、陸自の分屯地があるくらいで、海岸沿いに走って南下する途中では、小さな集落、高校くらいにしか行き合わない。
 延々と海を見ながら走る。ずっと彼方には北海道が見え、南には利尻島が見えている。その利尻、中央の高い利尻富士には、ずっと雲が生まれ続け、その雲が風下の南東方向に伸びている。なるほど、海からは晴れて見えるが、山に近いと雨に降られるわけだ。
 香深に近づいた辺りで、金環日食観測記念碑を見かける。1948年、この島の非常に細い領域で金環食が観測されたそうで、その時に多数の科学者が詰めかけてきたのを記念したのだとか。戦争が終わり、ホッと一息ついた時期のお祭り騒ぎだったのだろうか。
 香深のすぐ隣の集落、香深井にある、見内神社。これは海側からの眺めで、背面は車道に面している。最初、あれこの神社、戸が無いよと驚かされた。両脇に参道と鳥居が立ち、背面から両脇の参道を回って正面に出るのが正規の参拝経路だと思われる。なんとも奇天烈な構造だ。なんでも、この神社のご神体は、戦に出かける夫を見送ったその妻が、嘆きの余り岩と化したという大岩だとか。
 香深の町でセイコーマートに寄り、宿に。夕食は地元の食材を使ったフレンチのコースだった。山歩きの人が多いみたいだった。海岸線を走る間も、あちこちの入山コースで、山歩きの人を見かけたものだった。

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