Strange Days

高知~室戸岬~徳島ツーリング3日目

2017年02月12日(日曜日) 23時09分 , 美術館 天気:晴れ時々曇り(寒い)

徳島についた3日目。高知~牟岐は意外に消耗したので、今日はのんびり、バスで大鳴門橋を見にゆくつもりだった。ところが、「その前に」と大塚国際美術館に立ち寄ったのが、悲劇と恍惚の始まり。

今日は自転車乗りたくないなー、と思った。
 行きたいのは大鳴門橋なので、自走圏ではある。だが、あそこまで自走すると、帰路も考えると戦闘時間がごく短い。あの辺をブラブラして過ごしたかったので、バスで行ってしまうことに決定。前日にバス経路を調べ、本数は少ないが、鳴門公園に直通する便があるのを確認。これを利用することにした。
 朝、徳島駅前からバスに乗り込む。バスは北上し、途中大河吉野川を越える。高知県内の四国山地に源を発するこの河は、その後一旦北上した後は、ひたすら東進し、香川県には目もくれずに、徳島県内に豊かな水をもたらしている。四国山地が北上を阻んでいるからだが、年中うどんの茹で汁を心配しなければならない香川県民にしてみれば、やりきれない話ではなかろうか。
 バスは大きな橋を一つ越える。小鳴門橋。徳島へと大鳴門橋がまず足を下ろすのは、実は大毛島という大きめの島で、この島と四国本土を結ぶのが小鳴門橋だ。大毛島中央を走る神戸淡路鳴門自動車道が高くそびえているので見劣りするが、200mほどもある。
 バスは路線バスなので、その自動車道を走らず、島の東面に下って海沿いに走る。風光明媚だ。
 ちょっと立ち寄るつもりで、大塚国際美術館なる施設で降りた。……なんか、想像よりでかくね? 殺風景さが気になったが、まあともかく、橋を見る前に通過しておこうと、足を踏み入れた。
 まず長いエレベータで登ってゆく。どうやらこの美術館、上の方にも出入り口があって、そこが主な方らしい。コピー美術品しか無いという情報に触れていたので、まるで身構えずに最初の部屋に入った。みぎゃ~!
 なんじゃこりゃ。しばらく空いた口が塞がらず、この威容を仰ぎながら呆然と歩き回った。システィーナ礼拝堂、のレプリカだ。実は、これらは陶板にプリントされたもので、耐久性はあって再現性も高いが、かといって質感はかなり違っているようだ。しかしだ、この眺め。本物のシスティーナ礼拝堂を持ってくる訳にはいかない。しかし、レプリカなら、ほぼそのまま持ってこれる。
 もちろんレプリカなので、制限はある。質感を完全に再現できるわけじゃないし、この部分写真に見えるように、陶板作成時の技術的制限から80cm幅で分割せねばならない。だが、普通なら美術館内にもとても再現できない「それがある場の雰囲気」を良く再現できるのだ。そしてこの美術館の狙いは、まさにそのような”環境再現”にあるようだ。見てゆくとわかったが、実は近代の、”場”に依存しないような芸術では、偽物臭さが際立ってつまらなくなる。この美術館は、環境再現ありきだと思った。
 このシスティーナ礼拝堂*1の場合、さらに仕掛けがある。本来のシスティーナ礼拝堂では、礼拝堂という空間にこの壁画群を配したので、人が見上げるには高すぎるきらいがある。そこで、鑑賞しやすいように、本来の高さかすると低く作ってあるのだ。パチもんゆえの優位さというところか。
 通り抜けるどころか、ここに小一時間もブラブラしていた。流石に動かねばと思っていたら、ちょうど館内ツアーが募集されていたので、乗った。1.5時間程度で、全体の数割を見て歩くのだという。
 この美術館、上層ほど近代美術の範疇に近づいてゆく。下層は古代ギリシャから中世キリスト教美術、ルネッサンスを経て、次第に近代に近づいてくる。スペースは、下層ほど割り当てられている。この美術館が重視しているのは下層の環境再現で、環境再現の必要がない近代美術に関しては、ほぼ通り一遍な触れ方だと分かる。
 中でも、中世キリスト教の礼拝堂と、その美術を再現した環境再現は、このパチもん美術館の白眉だと思う。礼拝室そのものをいくつも見て回れるなど、本物を相手にしていては決してこなせないことなのだから。
 一方、ルネッサンス期の単体絵画や、それ以降の美術品は、単に陶板に焼いたよく出来た偽物を陳列してあるだけ、という風になる。一応、著名作品の品揃えのために並べたというところか。
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 ともあれ、この巨大な空間を1時間半で駆け抜けるツアーで疲労困憊した我輩、上層階にあるレストランに入り、チキンのランチなどをいただく。美味しゅうございました。ちなみにこの美術館、ドコモ4Gはいまいち入らないのだが、なぜかWimaxはアンテナ3本立つ。
 元気を取り戻したので、上層階から復習してゆく。最上階は、近代美術こういう有名所が揃っている。ちなみにすべての作品は、所有者の許可を得た上で精密データを取り、再現しているという。
 割と最近ホンモノを見たぞ。流石にパチもん臭さが鼻につく。実際、近代芸術品に関しては、色表現が多様化しすぎて、この陶板では再現性が高くないらしい。
 モネの睡蓮物。モネに関しては、屋外に規模の大きな「モネの庭」という、睡蓮の絵をまるで水庭のような空間があった。
 屋外美術としては、敦煌の莫高窟も再現されている。これなど、日本に持ち込むことが出来ないのだから、複製美術の白眉だ。
 何時間も彷徨いて、しかし全体を舐める程度しか見てなかったが、もうフラフラだったので、橋を見に行った。ちょうど、美術館からは橋上道路を見下ろせるので、絶好の角度を得られる。もう少し登った展望台から。これで本四架橋のうち、まだ見てないのは明石海峡大橋だけだ、と思いきや、実は神戸灘を走った折に見に行ったなあ。
 展望台がある鳴門公園中腹から帰りのバスが出るのだが、寒くてひもじかったので、なにか食べようと思った。バス停間近に、まるで時に忘れられたような土産物屋があったので、入ってみた。食事メニューがあったので注文したのだが、今はやってないと言う。ちくわを温めてやるというので、それで手を打つ。むしろ、侘しさが、この上なく募るような、旅情を感じる逸品だった。
 バスで徳島の宿に帰還。大塚国際美術館の空間にアテられて、精神はフラフラだったが、肉体はリフレッシュできた。明日は自走で徳島空港に行こう。

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