Strange Days

嵐が去って観望

2000年04月24日(月曜日) 23時03分 星見 天気:雨のち晴れ

 夕方定時間際、突如として重々しい雷鳴が職場に鳴り響いた。外を見ると、この時刻にも関わらず真っ暗だ。ある種の条件反射として作業中の文書をこまめにセーブするモードに入りつつ、外の雨音に耳を傾けた。えらい降ってるなあ。こりゃ今夜も観望は無理だろう。
 ところが、これは単なる通り雨に過ぎなかったらしい。会社を退ける頃に空を見上げると、なぜか空が暗い気がする。空が曇っていると、光害のおかげで空は明るくなるのだが、暗いということは晴れているということだ。
 足早に帰宅して、ベランダに出てみた。空はやはり晴れていて、所々に雲は残っているものの、星はばっちりと見える。早速観望タイム。
 かなり眠かったので、2丁双眼鏡モードで観望開始。ワイドビノで空をざっと掃天する。冬の星座たちは西に去り、すでにこいぬ座が西空低くにかかっているだけだ。一方、しし座とおとめ座が相次いで登りつつある。双眼鏡をスピカ付近にやると、明るいスピカの右下に少し暗い星々が台形を形作っているのが見えた。からす座だ。今まで気にもしたことがなかった星座だが、ワイドビノで明瞭に捉えることが出来るので、少し見てやろうかという気になった。
 MIZAR10*42を向けた。からす座のスピカ寄りにある二重星がくっきりと見え、さらに細かい星々も浮かび上がってくる。ワイドビノの視野にはむしろこじんまりと納まっていたからす座も、10倍程度の双眼鏡でのぞくともう全体像をつかむのが難しくなる。そのかわり、星を一番明るく感じるのは、このMIZARだ。通り雨のおかげで空の浮遊物が吹き払われたのか、夜空は洗い清めたように透明だ。ZepのStairway to Heavenに「五月姫のための清めの雨なのさ」という一節があるけれど、今夜の雨はまさにそういう感じ。
 そのからす座の二重星の近辺からおとめ座方面に移動していくと、なんとなく暗いぼんやりした星がいくつも見えているような気がした。この双眼鏡では限界だ。
 ここでようやく100EDが登場する。SWK22mmで30倍弱。これで問題の空域をうろついてみた。30倍弱とはいえ、10倍の双眼鏡と比べてもはるかに狭い領域しか見えない。その代わりにさらに細かい星々が浮かび上がってくる。なんとなく不思議な気分だ。
 この辺りにはM104があるはずだ。M104はソンブレロ銀河として有名な系外銀河だ。別の銀河をほぼ真横から見ている形になるので、写真で有名な特徴のある眺めになる。もっとも、100ED程度の能力では楕円形の広がりがわかる程度だろうが。
 M104では無かったが、いくつか面白い星の並びを見つけた。見かけ上は同じくらいに暗い小さな星が、ごくごく近接して並んでいるのだ。二つというのが多かったが、なかには四つが同じ空域に密集しているものもあった。これらの多くは単に見かけ上の並びに過ぎないのだろうが、実際の連星だってあるかもしれない。また球状星団の最も明るい部分を見ていることもあるだろう。ふつうの星図には載ってないような、暗くてマイナーな星たちだ。大倍率でもやっと分離できる程度の星たちを、しばし飽きもせず眺めていた。
 結局M104は見つからなかったが、星たちの不思議に思いを馳せる俺様だった。


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