Strange Days

2002年03月30日(土曜日)

さらば、サイエンス・アイ

23時55分 テレビ

 帰宅して、テレビを見ながらゲームする。なんと、サイエンス・アイが今日で終わりなんだとか。月一の特集とか、名物研究室とか、面白い企画が多かったんだけどなあ。クソまじめな番組作りじゃあついていけない程度の、いちいち手取り足取しなきゃならない、なにも思考しない視聴者が増えすぎたんだろう(世の中一般化してる『笑いどころでテロップ』とかな)。もったいない話だ。未来潮流といい、新日本探訪(これは毛色が違うが)とか、俺様がお気に入りの番組ばかり終わらせやがって。許すまじNHK。しゃべり場みたいな番組こそ、民放に任せてしまえばいいのに。
 4月に始まる新番組で、なにか期待できるものはあるだろうか。

2002年03月10日(日曜日)

NHKスペシャル「海のけもの道」

23時00分 テレビ

 今夜のNHKスペシャルは、「海のけもの道」。日本独特の漁法である、定置網の話題。
 定置網は、その名の通り、海中に網を仕掛け、魚を誘い込むという漁法だ。定置網は能登半島に抱かれる富山湾で発達してきた。その発祥は、戦国時代、関が原の合戦の頃にまでさかのぼるという。
 富山湾では、秋冬にかけて、10kg前後の脂の乗ったブリが大量に水揚げされる。その水揚げの多くを担うのが、この定置網なのである。
 定置網は、まず沖合いから岸に向かって伸びる垣網、この垣網で誘導された魚を囲い込む運動場、魚を定置網の奥へと誘導する登り網、そして最終的に魚を水揚げするための箱網で構成されている。最小の空間である箱網の中でさえ、ブリの魚群が十分回遊できるスペースがある。
 垣網は黄色く着色されており、この色を嫌う魚たちは垣網と並走することになる。回遊魚は水深が深いところを好む性質を持っているので、沖合いにある運動場へと誘い込まれる。運動場に入った魚は、次第に定置網の奥へ奥へと誘い込まれ、最後は箱網で水揚げされることになる。ところが、最近の研究では、定置網に入った魚の2割しか捕獲されてないことが判明した。定置網は入った魚を決して逃がさない半密閉型の仕組みではなく、できるだけその滞在時間を長くしようという一種の開放系なのだ。
 定置網は規模が大きいだけに、その設置には多大な時間が掛かる。
 去年、相模湾を漁区とするある漁協が、台風で壊されてしまった定置網の再設置に乗り出した。相模湾の急潮による定置網破壊は、寺田寅吉が研究した事例もあるそうで、結構長く対策が練られてきた。それでも事故が無くならないのは、定置網をあまり頑丈に作ると潮流を妨げ、今度は潮の流れを利用する定置網自身の意味がなくなるからかもしれないと思った。
 この漁協では、まず製網会社に設計を委ね、その設計に沿って実際の設置作業を行っていった。
 まず中心となる2対のロープを張るところから始め、そのロープを位置決めし、しっかり固定し、次の網を張る、という手順で進んでゆく。その所々で、伝統的な手法が生きている。位置決めの際には、陸地の見え方から位置を割り出す山立てという技法が用いられる。400年もの歴史を持つ定置網は、こうした技術の分厚い蓄積に支えられているのだ。

2002年03月05日(火曜日)

NHKスペシャル「森と水が生んだ奇跡 世界遺産 中国・九塞溝

22時00分 テレビ

 夜、昼間寝すぎて眠れないうちに、CLIEがグォーっと鳴った。いや、バルカン砲を仕込んでいるわけではなく、バイブレーターが作動したのだ。バイブレーターは肩こり解消についているわけではなく(そんなに電池がもたないと思うね)、あらかじめ指定していたスケジュールの時刻になったことを知らせてくれたのだ。これで思い出したのだが、今日は前に見損ねたNHKスペシャルの再放送があるのだった。どうせ眠れないので、ビデオに撮るのではなく、直接見ることにした。
 今夜のNHKスペシャル再放送は、中国は四川省にある世界遺産の景勝地、九塞溝の紹介。
 中国、山深い四川省と中原との境に立つ山を削るようにして、Y字型に谷が走っている。そしてその谷に沿って、大小さまざまな池が点在している。ここが九塞溝だ。
 九塞溝の湖沼群は、それぞれに違った表情を見せてくれる。しかしそのいずれも、青く澄み切ったような、不思議な色に統一されている。この青、深みを帯び、しかもどこまでも透明に見通せるという、ちょっと他に無い色だ。映画『ショーシャンクの空に(これは邦題な)』で「太平洋が夢に見たような青ならいいのだが」なんて台詞があったが、これぞまさしく夢に見るべき青だろう。しかも、悪夢にも登場しそうだ。
 九塞溝の水に神秘的な青をもたらしているものは、いったいなんなのだろう。そこには、九塞溝の成り立ちが関係している。
 九塞溝の位置する山脈は、数億年前の古大陸時代には、二つの大陸の間に広がる浅瀬だった。浅瀬には殻を持つ貝類、頭足類、珊瑚が繁殖し、その屍がうずたかく積み上げられていった。それらの死骸が豊富に含む石灰質が堆積していった。やがて浅瀬は大陸移動によって隆起し始め、その圧力で石灰質は石灰岩へと変わった。遂にはうずたかい山へとのし上がり、今の姿になった。つまり、九塞溝をいただく山々には、膨大な石灰岩が含まれているのだ。
 その石灰岩は二つの役割を果たし、水を浄化する。まず、浸透した雨水は地下を移動するうちに石灰岩がフィルタとなってろ過される。そして九塞溝の水底から湧き上がった地下水は石灰を豊富に含んでおり、この石灰が水中のゴミに付着し、沈底することで、さらに水が浄化されてゆくのだ。
 九塞溝の湖底には様々な藻が繁茂しているが、砂漠のような白砂も広がっている。藻の中には石灰質を沈着させて真っ白になったものもあり、まことに見ていて飽きない多彩さだ。
 しかし、いくつもの湖沼が連なるこの眺めは、どのようにして形成されたのだろう。その答えは、山を一つ越えた隣の谷にあった。ここにも、九塞溝を凝縮したような、小さな湖沼群が形成されつつある。まるで棚田のように見える池と池を隔てているのは、積みあがった木の葉や枝を核に成長した、石灰質の壁なのだ。ちょっとした切っ掛けで水がよどみ、木の葉などが溜まり始めると、その上に石灰質が沈着し始める。やがて石灰質は壁状に成長するというわけだ。
 九塞溝では、これよりもっと大規模に壁が形成されている。その新陳代謝の中で、より広い池に水没してしまった古い壁もあり、それはまるで水底に龍が潜んでいるようだ。
 湖の中には、季節によって幻のように消えたり現れたりするものもある。水源が地下水なので、地下水位が上昇する雨季に現れ、低下する乾季には消えてしまうのだろう。こうした季節変化の大きさも、九塞溝の魅力の一つだ。
 この地勢ゆえか、植物の生態も独特なものだ。池から池へと水が流れるそのただ中に、緑を茂らせた潅木類が平然と林立しているのだ。ふつう、特殊なものを覗き、植物は根が水没すれば、呼吸が出来なくなって枯れてしまう。ところが、九塞溝の植物群は、呼吸根という水中で直接空気を取り入れる特殊な根を発達させることで、その問題を解決しているのだ。
 しかし、そもそも流水の中に種は根をおろせないはずだ。すぐに水に流されてしまう。ところが石灰質の壁は多孔質で、種が引っかかりやすく、また根をおろしやすいのだ。その結果、かなりの種類の植物が流水中に根をおろし、生い茂ることが出来るのだ。
 このように九塞溝は、地形がもたらす奇観に、植物が見事に適応した結果生まれた、見事な場所なのだ。しかしここ、日本から見に行くのは大変だろうな。