Strange Days

遠すぎた山、富士山(2日目)

2004年08月22日(日曜日) 15時52分 山歩き 天気:下界ではよし

 眠れないのだ。空気はねっとりと重く、客の出入りが多くて始終ざわついている。我々に割り当てられた寝床は、一番奥から5人分だった。僕は一番外側を選んだ。しかし布団が二人に一枚ということは、赤の他人と布団を分け合う形になる。その隣人は、ほどなくやってきたのだが、寝床が気に入らないのか、しょっちゅう姿勢を変えて、その度に僕とコンフリクトしてしまう。それが気になる。それ以上に、布団を被ると異常に暑く、また被らないと寒いという状況に、どうにも気持ち悪くなってきた。布団に入ったままうとうとしていたら、物凄く気持ち悪くなって目が一気に覚めた。全身から汗が噴出していて、それこそ体中が濡れた様になっている。我慢して横になっていると、不快感が募ってきて、ほとんど発狂寸前の有様だ。これはダメだ。アウシュビッツという言葉が頭の中を飛び交っている。外の空気を吸いに、トイレを使いに行く。既に0:00頃だったが、登山者が群れているのには驚いた。その時は、意外に寒くは無いなと思った。
 布団に戻っても、また寝苦しさに苦しめられ続ける。それでも寝てしまえばいいのだろうが(代謝レベルが下がるので)、頭の芯にずっと頭痛が残っていて、それが安眠を妨げてしまう。深呼吸を繰り返し、様子を見ていたのだが、発熱があり、夏風邪だろうと思えた。注意深く思い返してみると、昨夜からこの状態は続いており、夏風邪にかかっているように思えた。こんな状態で、高山病に耐えられるはずもない。高山病にも、既にやられていたのかもしれない。
 ともあれ、もう限界だ。朝まで寝床に横になっているつもりで過ごそう。そして富士登山はきっぱり諦めて、下山しよう。こんな状況で登っても、行きでも帰りでもパーティの足を引っ張るばかりだし、最悪降りるに降りれなくなるかもしれない。それが怖い。
 結局、そんな状況で朝を迎えた。4:00を過ぎる頃、隣に寝ていたマモル氏が起き出してきて、いやあ眠れなかったね、などと話す。
 そろそろご来光を、という運びになり、各々が身支度をして、大陽館の前に出た。寒い。長袖Tシャツ、モンベルの長袖ウィンドブレーカー、さらに雨具の上を重ね着したのだが、それでも寒さが染みて来る。寒さにガタガタ震えながら、だんだん明けてゆく空を見上げ、日の出を待った。やがて美しい日の出を迎えたのだが、正直なところ、さっさと昇りやがれという気分だった。
 日の出を待つ間、あまりの寒さゆえか頭痛を感じなかった。また意外に朝食が入ったので、あるいは登山可能かとも思えたが、まだ熱があるし、こんな状態で登山してもアップアップで、とても楽しむ余裕は無いと思えた。ごめん、下山しますと告げる。残念だが、また機会を作ればいい。
 あゆこ女史が宿に尋ねてくれたところ、次の客が来るまでは寝ていていいということだったので、それまであり難く眠らせていただくことにする。宿を出てゆく4人に手を振ると、また布団に横になった。今度こそは眠れそうだ。
 そうして1.5hくらい寝て、8:00過ぎに目覚めた。ええっと、さらに熱が出てますよ?(爆) やっぱり無理しなくて良かった。これ以上無理すると、歩くことさえおぼつかなくなる。さっさと下山してしまおう。
 大陽館に別れを告げ、下山道へと出た。ここからしばらく、5合目の砂払いまでは、砂走りという直滑降ルートになる。この下りがはかどる。いちおう、両手にストックを持って、バランスを取りながら降りたのだが、使わないでバランスを取りながら降りた方が、ずっと速い様だ。しかし僕の体力が、とっさのバランスを取れるほどには残ってなかったので、ストックを使いつつ、着実に降りていった。しかし、一歩当たりに消費される位置エネルギーは大きく、当然膝への負荷は高い。膝が壊れそうなので、ストックは当てになった。下る途中、下の方からガスが登ってくるようになり、頂上の方の状況が気になった。
 意外に早く、砂払いに到着した。茶屋があるのだが、少し休んだだけでさらに歩き出した。ここからは、緑の中を掘割のような道を進んでゆく。大きな段差を降りることもあり、ストックは大活躍だ。
 やがて、5合目の古御岳神社に出た。後は舗装路を歩き、5合目駐車場に出るだけだった。
 食事をする気分ではなかったので、少し待ってバスに乗り込んだ。神奈川支部の掲示板に書いている間に、あゆこ女史から着信があった。頭がボーっとしていたので、なんの気なしにこぐ氏に掛けたところ、無事登頂できたとの事だった。やったね。しかし我輩の負け感は倍増した観がある。
 バスは発車したが、道は昨日以上の渋滞振りで、路駐の続く駐車場近辺を抜けるのに、かなりの時間を要した。
 御殿場駅に着き、食欲は無いが、かといってなにも食べないと倒れそうなので、クロワッサンとコーヒー牛乳*1を補給しておいた。頭痛は軽減されていたが、相変わらず熱がある。
 御殿場線の電車が来るまで40分くらい待ち、やがて来た列車の中で少し寝ると、多少体調が回復してきた。さらに乗り継いだ東海道線でも眠れたのだが、おかげでかなり体は軽くなった。しかし夏風邪らしい発熱と軽い頭痛は続く。その上、喉がいがらっぽくなってきた。
 こうして、なんとかかんとか帰宅出来た。なんか負け犬っぽくて悔しいな。しかしあんまり山歩きが楽しくなかったのが気になった。こういうことはある程度楽に出来ないと、楽しめない性質なのだ。自転車でも、本当に楽しめるようになったのは、遠出するのが苦にならなくなってからだった。
 このままでは負け負け感に当面苦しめられそうなので、9月くらいにまた、今度は7合目のご来光をじっくり写す為に、登ることを考えている。頂上へのアタックは、また来年のシーズンに。

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