Strange Days

隠岐ツーリング2日目~西半分編

2013年08月12日(月曜日) 22時59分 , 自転車 ( 自転車旅行記 ) 天気:いい天気だ(良すぎ)

 早起きして、ホテルのレストランで朝食。海産物も干物中心の、まあホテルの朝食でバイキングじゃないとすればこう、という感じのものだった。
 さて、今日は隠岐の島の西半分を走りたい。島の真ん中を北へと突っ切ると、著名な神社を2つ拾える。後は景勝地を巡りたい。問題は、昼食を取る場所があるかどうかだ。
 そんなわけで、ある程度の食料は、背負ってゆかねばならない。ホテルの真裏にあるショッピングセンターで、ゼリー食とスポーツドリンク、水、パンくらいを買った。今日はVarioを背負ってゆくので、収納に困ることはない。
 さて、ショッピングセンターから、昨日渡った西郷大橋方面に向かう。港にある水祖神社。これでみやおと読むのだそうな。謂れの分からない、古い古い創建の神社だ。隠岐には、こういうわくわくするような神社がゴロゴロしている。
 昨日渡った西郷大橋を横目に、しばし湾の奥へと向かい、適当なところで内陸に転じる。急坂を上り、平坦になると、すぐに見えるのが、玉若酢命神社だ。古代以来、隠岐の国造だったという億岐家が神職を司ってきた古社で、大本の祭神の正体すらも不明という、まことに素晴らしい神社だ。
 その億岐家の住宅を見学できる。隣接して、有料だが宝物館があり、律令時代に配備された駅鈴*1などを拝むことができる。
 玉若酢命神社の随神門と本殿への登り口の間に、巨大な杉がそびえている。八百杉という、樹齢1000年とか2000年とか言われる巨木だ。背後の森から離れて聳えているせいもあって、その威容には圧倒される。ゴツゴツした根の一部が露出しているのだが、長年の風雪によって磨き上げられ、まるで金属のような光沢を帯びているのもよい。
 で、この神社の前に、こんなものがある。妖怪水木しげる翁のルーツが、この隠岐にありそうとのことで*2、ここまで延長中なのだとか。
 内陸に向かう。しばし、郊外型のショッピングセンターが散見される。その中の電気屋に入り、USBマウスを購入した。VAIO Pro 11に無線LANマウスを組み合わせているのだが、これを使うとVAIOが絶不調になるのだ。このW-LANドライバに問題があり、Windows8の仮想ステーションモードドライバを入れると、端末としての動作にも影響が出てしまうのだ。
 この辺、内陸部の盆地で、瑞々しい田園風景が続く。
 そんな一角に現れるのが、隠岐の地酒、隠岐誉の酒蔵だ。要予約だが、見学が可能らしい。
 更に内陸に進む。暑いので、早くもめげてきた。製材所の近くに自販機を見つけたので、冷たい水を買い求めに立ち寄った。
 そのコイン投入口に硬貨を投入する時、なにか妙な感じがした。コインが通過する金属音がせず、ゆっくり入れたのに何枚か戻ってしまったのだ。あれ、と思ってみると、投入口からなにかが顔を出した。アマガエルだ!
 そろそろ人生も半世紀に近くなっているが、こんな体験は初めてだ。内部の冷気を慕ったのか。しかし、どこから入った? つつこうとすると、ぴょんと跳ねて逃げ出した。
 更に走ると、本格的な登りにかかり、峠を掘り抜いたトンネルに差し掛かる。峠とはいえ、島後は東西に山があって、その間に低地が広がっている塩梅なので、それほどの高さではない。トンネルは結構長いが、交通量が少ないので助かった。
 下ってゆくと、南の玉若酢命神社に比肩する古社、水若酢命神社がある。玉の方もだが、この水の方も、港からは奥行った微妙な場所にあって、峠道を行くにしても、昔は陸路よりもよほど便利だったろう海路を行くにしても、微妙に不便そうな場所にある。東西の山を均等に遠望できる位置と、高地から流れてくる水とが、この位置を決めたのだろうかと思う。
 そろそろ昼だが、もう少し先に進む。ここから西海岸を舐めて戻れるか、いささか気が急いていた。昼食場所も心配だが、一応の心づもりはあった。ここから西に向かう海への途中に、隠岐温泉GOKAという施設があるようなのだ。そこになら食堂の類があるんじゃなかろうか。そこで、海への概ね平坦な道を走っていった。ある程度走ると、どこからか潮の匂いが強まり、ゴツゴツした岩壁が目立つようになってくる。しかし、温泉は見つからない。どこだ。途中で撮った写真を後で見なおした結果、このお役所っぽい建物がそうだったと判明。この面構えで温泉とは思わんじゃん、フツウ。
 ともかく、飯を食い逃し続けていた。後で深く調査すると、先の水若酢命神社近くの郷土館、後出の福浦近くのホテル、そして実はこの温泉でも、一応は食事できることが判明した。リサーチが足りませんでした。
 海に出ると、車道は内陸のトンネルに吸い込まれるが、海沿いに古い隧道が続いているという。そちらに向かうことにした。この隧道、明治初めに手掘りで掘られた後、もう少し土木技術の発展した明治後年になって内陸に掘り直されたもの。かつては、五箇村から海沿いの漁港に向かうには、この道を通るしか無かったし、それ以前は危険な磯道を通る以外になかった。写真の道は、2代目の方。
 隧道を通る間は誰もいなかったが、通り抜けた先にホテルがあった。一見してレストランの類があるように見えなかったので、ここも通過してしまった。しかし、どうやらレストランはあった模様。
 お腹が空いてきたので、重栖漁港の車道沿いにあった自販機近くに停まり、ゼリーとパンをぱくついた。とりあえず空腹は和らいだが、それ以上に消耗している。気温は30℃を大きく超えているだろう。もう1リットル以上の水を消費しているのだが、汗が全く止まらない。
 少し休んでから、覚悟を決めて車道を走り始めた。というのも、あからさまな上りだったからだ。
 道は、プチ峠道の観を呈し、うねるように登ってゆく。山間部なので風が止まってしまい、ますます往生する。これが隠岐の島の必殺技、孤島飢え殺しか。
 長尾田、油井とプチ峠を抜け、油井漁港にせめて店舗でもないかと探しに降りた。しかし、そんな気の利いたものはなさそうな、こぢんまりした漁港だ。それでも、漁港で奇跡のように自販機を発見。冷たい水で、頭を冷やす。
 この油井には油井の池という円形の湿原があるのだが、草木が生い茂り過ぎてよく見えなかった。
 この油井から都万へと抜ける道が、プチじゃないガチ峠道で、正直死ぬかと思った。風の抜けない山上の急坂を、熱くなり過ぎないようにギリギリの遅さで登ってゆく。あまりにも水を消費するので、随分買い込んできた水の残りが、とうとう心細くすらなってきた。
 しかし、やがて報われる。登り切った辺りにトンネルが有り、そこを抜けると、都万への下りが待っていた。ありがたや。自分が巻き起こす涼しい風に、一気に生き返るようだった。
 下りきった辺りに、待望の自販機を発見。一気に蘇った。しかし、隠岐なんて孤島の、車も少ない集落にも、ポツポツと自販機はあるものだ。
 都万の海岸線に、ちょっと入る。闘牛を表したフィギュアがあったりして、この辺は観光に色気ありそうだ。海岸線に入ったのは、この目立つ橋に近寄りたかったからだ。すっかり失念していたのだが、ちょうど登った橋の海岸線に、都万の船小屋*3があったのだ。見忘れたよ……。
 ここと西郷の間にも、ちょっとした山道はあるのだが、たかが知れているので余裕だ。山間の小天地のような稲田の眺めを横目に、ひた走った。
 ホテルに戻る前に、近辺の市街地を少し巡る。やはり、盆休みの店は多い。夜もやっていそうな店もあるが、なぜか市街地の外れにあって、そこで飲んで帰るには遠いのだ。自転車ならば楽勝だが、この暑さでは飲むでしょう。
 というわけで、今日もショッピングセンターで夕食を仕入れる。しかし、この惣菜コーナーは地物を使っていて、隠岐牛のカレーなんぞもある。あれこれ仕入れ、ホテルに戻ってから、ビールを開ける。くぅ、うますぎる。今日は消耗したからなあ。
 明日は東半分を回るつもりだが、どうなることだろう。


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