今日はきっぱり雨。というか、屋久島で雨を免れるのは至難の業だ。そこで温泉にでも浸かって寝転がっていようと企んでいたのだが。
屋久島の空は晴れを知らない。晴れ間があっても、すぐに雨雲が寄せてきて、空を灰色に、地面を泥色に変えてしまう。
今日も朝から絶好調で雨だ。結構な強さで降り続けている。宿に連泊なら、酒でも食らって散歩して終わりにするところだが、この宿には連泊できず、移動するしか無い。弱ったな。
次の宿のチェックインまではかなり間があるので、一先ずは自転車と荷物をコインロッカー辺りに留置し、身軽になった。
時間つぶしも兼ねて、歴史民俗資料館、ビジターセンター辺りを襲う。なかなか立派な建物だ。
展示を時間を掛けて回った後、宿で聞いた満点の宿という立ち寄り湯に行ってビールクズになろうかと考えていた。しかし、山奥の方に向かうバスが数多く出ていて、手間を掛けずに見に行けるようだ。予定を変更し、縄文杉、とは行かないにしても、屋久杉は見に行こうと考えた。
その前に、腹ごしらえだ。この辺に洋食屋があるので、入ってみた。寺田屋という。これは正しい洋食屋、という店構え。
ハンバーグが売りのようなので、注文する。これも正しい洋食屋のハンバーグという風で、ナイフを入れると熱々の肉汁がじゅわっと溢れ出し、多少大味な感はあったが美味しい。美味しいぞ、うん。
昼食が良かったので、気分良くバスに乗れた。白谷雲水峡へのバスは、こんな日なのに、いやこんな日だから仕方ないのか、乗客で満杯だった。急傾斜をグングン登ってゆくバスに揺られ、どんよりした雲の下に広がる、暗緑色の森を眺めていた。屋久島は雨の島。大小の
滝も数多く過ってゆく。
白谷雲水峡に着くと、管理等で入域料というか環境保全協力金というか、そういうもの\500ほど支払い、足を踏み入れる。
概ね整地した道か、木道で、クリート付きの靴なのでスリップしないか気を使う。普通の軽登山靴があればよかった。実は登山具をレンタルしている店をいくつか見かけたのだが、それほどハードな道行きでもないと思い、借りなかったのだ。
ここから縄文杉まで、登山道をいくつも繋ぎながらのかなりハードな道行きだそうで、丸一日要するという。そこまでする気はないので、公園内の杉を見て回るくらいのつもりで、歩き出した。
結構な傾斜の木道を歩き続け、現れたのがこの大木。
弥生杉という名がついている。縄文杉だのウィルソン株だのに比べると無名だが、それでもけぶる雨をまとってすっくと立つ姿には、強烈な生命力を感じた。額面通りならば、2000年も前に芽吹いた生命が、未だに樹勢激しく立ちはだかっているのだ。これには感じ入り、しばし見上げつつ、物思いにふけった。
弥生杉の他にも大木がいくつか存在する。
公園内を1周しつつ、これらの大木をも大きく凌ぐであろう、山中の有名木たちを、ぜひ見たいものだと思った。
園内から注ぎ下る白谷川は、方々に
滝を生み出している。つくづく、屋久島は水下る島だ。
バスで下界に戻り、今日の宿にチェックインする。昨日の宿から100mも離れていない。部屋が非常に狭かったが、まあ寝るだけだし十分だ。
夕食は外に求め、適当な割烹料理屋でとんかつ定食を入れた。今日は歩き疲れた。